「誰がやってるんだか知らんがいい加減にしろー」。実業家・前澤友作氏の逆鱗に触れたのが、「前澤友作の無料投資教室」「前澤友作流を無料で学ぼう」など投資に関する広告。実はこれ、本人とは全くの無関係で、勝手に写真が使われている。
実際に1つを開いてみると、出てきたのはイーロン・マスク氏の肩に乗る前澤氏の写真。画面下には投資グループへの参加を促す怪しげなマークも。それをクリックしてみると、今度はLINEのQRコードが表示され、読み取ると知らない人物のアカウントが表示された。
実は今、著名人やインフルエンサーの画像を勝手に使用する広告が急増している。そもそもは広告主が悪いのだが、それを仲介するネット広告代理店やプラットフォームにも責任があるのでは? 何か対策はできないのか。『ABEMA Prime』で専門家に聞いた。
経済ジャーナリストの荻原博子氏も被害に遭っているという。「出版社から電話が来て、『荻原さんの本が株の投資の誘いに使われている』と。それも1つや2つではなかった。私は“投資なんかおやめなさい”“騙されていませんか?”という本を書いているのに、まるでギャグだ。対策を弁護士にも相談したが、その間にもどんどん拡散していく」。
一般社団法人「ECネットワーク」理事で日本消費者協会元相談員の原田由里氏によると、投資に関するものが多いそうだ。「経済的に困っている方、特に若い方は奨学金の問題があったり、将来に対する不安がある中で、SNSで広告に触れる機会が多い。知識はないけど興味はあって、“ポチっとすればすぐに儲かる”“楽して儲かる”という言葉と著名な方々がセットになっていると、“自分もできそうだ”と誘導されていく」と話す。
悪質広告の問題点として、他人の著作物を使うと著作権侵害、著作物を無断で改変した場合は著作者人格権「同一性の保持」を侵害、他人の写真を無断で使うと肖像権侵害、うその広告を扱うと景品表示法上の不当表示にあたる。もちろん、勝手に顔を使われた著名人に広告費は一切入ってこない。
どういった仕組みで悪質広告が表示されてしまうのか。原田氏は「アフィリエイトという、広告主の広告を代理で出す仕組みがある。アフィリエイターと呼ばれる人たちは自分たちで商品を提供しているわけではない上に、歩合制なので、手段を選ばず過激な広告を打ってしまう。中には広告主から指示されているケースもある」と説明。
では、広告主を訴えれば済むのではないか。「ネット広告は相手のサーバー側にあるので、消したり変更したり、時間や出し場所を変えることができる。日中は真面目な広告にしておいて、夜中に怪しげな広告を出すというのも、やろうと思ったらできてしまう。これだけ溢れているフェイク広告を全て把握して、広告主まで引っ張り上げるというのは、すごく大変な作業だ」とした。
荻原氏も実際に広告を開いてみたそうだが、「いろんなところに飛び、最後に怪しいタレントが出てきたが、広告主にはたどり着けなかった」。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「Googleやヤフーのアドネットワークであればプラットフォーム側が規制すれば済む話だが、Instagramはそこ自体に広告がある仕組みで、単なる投稿か広告かを判断するのは難しい。ただ、これだけAIが進化してきているので、同じ顔の写真を見つけてきて、その中でアフィリサイトに飛んでいるものを検知して報告まではすることは可能なのではないか」と指摘する。
原田氏は「事前に全部を審査するのはおそらく不可能だ」とした上で、悪質広告を見かけた場合、広告主もしくはプラットフォームへの通報を呼びかけた。一方で、「きれいなものしか出さなくすると、広告収入自体が減ってしまう。広告自体は悪いものではないし、私たちもいろんな恩恵を受けている。消費者のリテラシーが上がっていくことが必要で、“ネット広告=悪”になってしまうのは避けたい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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