自民党・麻生副総裁、台湾で“戦う覚悟”発言
【映像】台湾での発言
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 自民党・麻生太郎副総裁の発言が物議を醸している。

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 麻生氏は2023年8月8日、訪問先の台湾での講演で「日本、台湾、米国をはじめとした有志の国に、非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている」として「戦う覚悟」について触れた。

 中国の軍備増強で、台湾情勢の緊張が高まるなかでの発言とあって、国内野党からの批判的な反応に加え、中国外務省も「身の程知らずで、でたらめを言っている。もし日本の一部の人間が、中国内政と日本の安全保障を絡めるなら、日本は誤った道に入ることになるだろう」と猛反発した。

 しかし、この麻生氏の「戦う覚悟」発言、ただの失言ではなく、狙いをもっている可能性もある。考えられるのは、以下の4つだ。

●中国への牽制:防衛面で中国にすり寄るつもりはない
●アメリカへの牽制:台湾有事にアメリカを「巻き込む」
●自民党支持率回復:保守層の支持を取り戻す
●麻生派の存在感を示す:内閣改造・自民党役員人事を有利に運ぶ

 ジャーナリストの青山和弘氏は、中国による台湾侵攻の危惧があるなか、麻生氏の発言は「戦いたくて言っているのではなくて、戦わないために抑止力を効かせるためには、覚悟を示さなければならない」との意味合いで行われたものだと指摘する。

 戦争放棄や専守防衛を掲げる日本政府としては「矛盾した発言」となるものの、東アジアの現状と、日本が守ってきた憲法との乖離(かいり)が埋められない状況になっている、と青山氏は解説しつつ、「それを突きつけた発言。麻生さんは完全に計算して言っている」と断言した。青山氏によると、文面は首相官邸にも「間違いなく相談した」という。

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 青山氏の取材によると、ある外務省の幹部は、「ひとつの心理戦だ」と表現した。麻生氏のような過激な人物も日本にいるからと、「中国、注意しないと。そんな簡単じゃないよ」と言いつつ、一方で岸田文雄総理が「仲良く」する役割を担う見方もあるそうだ。

 野党の反発はどうか。青山氏の取材では、立憲民主党幹部から「無駄に緊張を高める発言。台湾の人にとっても迷惑」との発言が出た。たとえ準備をしていても、なぜあえて「戦う覚悟」を明言する必要があるのか、といった反応はあるようだ。

 発言の背景に、自民党内のパワーバランスを指摘する声もある。LGBT理解増進法案などにより、安倍晋三元総理を支持していた「岩盤保守層」が離れたことで、再び引き戻したいとの思いは一部に存在する。

 麻生派は現在、自民党の第2派閥だ。麻生氏は、いずれは同派の河野太郎氏を総理大臣にしたいと考えているが、マイナンバーの問題が一段落しないうちはなかなか難しい。そのため、当面は岸田総理に続けてほしいと考えているとして、要所要所で存在感を示したいのではと、青山氏はみている。

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 岸田政権は、岸田総理と麻生氏、茂木敏充幹事長の「三頭政治」で運営されている。総理への野心がある茂木氏を交代させると、麻生氏も交代せざるを得ない可能性があるため、現状の三頭政治を崩さないことが、麻生氏の狙いだと青山氏は説明する。なお、二階俊博元幹事長は「非主流派」になっているという。

 こうした事情もあり、岸田政権は「支持率が下がりながらも、低空飛行で安定に入っている」として、その要因は「次を狙う人が居ない」ことと「野党が弱い」ことにあると、青山氏は分析。千原ジュニアは、岸田総理が「良い星のもと」にいるとうなずく。

 では、麻生氏の発言について、岸田総理はどう考えているのか。青山氏は「岸田さんはしたたかにも見えるが、あまり考えないでやっているんじゃないかとの見方もある」として、真意が見えないところが「怖さ」でもあると指摘した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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