台湾を訪問した自民党の麻生副総理が8日、講演で「最も大事なことは台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないこと」「こんな時代はないのではないか。戦う覚悟だ」などと述べたことについて、12日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演した“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参議院議員がコメントした。
佐藤氏は、日本に戦う覚悟は「足りていない」との認識を示す。
「“天は自ら助くる者を助く”という言葉があるように、自分の国・ふるさとは自分で守るという姿勢がなければ、他の国も助けてくれない。アメリカに行って尖閣の問題を説明してもほとんどの上院・下院議員は知らず、地図で説明すると重要な場所だと理解はしてくれる。しかし、島に住民や自衛隊がいないことを伝えると、“無人島を守るためにアメリカの若者が中国と戦って命を落とすのか？”“そんなに大切な島なのになぜ自分で守ろうとしないんだ“と」
佐藤氏は防衛大学校を卒業後およそ25年間、陸上自衛隊に所属し、国際的な業務にも多く従事してきた。イラク戦争を受け2004年には、自衛隊がイラク南部のサマワに派遣された際の先遣隊長を務めた。
「イラクに行った時に非常に辛かったのは、政府の命令で行くにも関わらず、“市ヶ谷の自衛隊の正門に反対派がいるので裏門から出ろ”と言われたこと。なんとか出られたが、成田空港は“自衛隊が制服や迷彩で来るのはダメだ”ということで、車の中でスーツに着替えた。さらに、日本の航空会社、JALもANAも搭乗拒否だった。世論が賛成を上回っていないということと、テロに遭うかもしれないなどいろいろあったかもしれない。アメリカのノースウエスト航空でバンコクまで行ったのだが、CAのトップの方に何人乗っているのかと聞かれ、先遣隊の25人だと伝えたら、その分のキャンディとメッセージまで出してくれた。キャプテンもアナウンスをしてくれて、我々のめげていた気持ちも少しはぐっと上向いた」
また、まもなく1年半が経つロシアによるウクライナ侵攻を引き合いに、「ウクライナとロシアは接触線だけで1300kmあり、これは東京から鹿児島くらいだ。ウクライナ軍の65万人で守りきれるわけがなく、地元の首長、知事や地方議員が前面に立って頑張っている。そういう意味で、日本の国土は東西南北に3000km、島が6800あり、自衛隊25万人じゃとても守りきれない。戦争を起こしたくないと思っていても、国民の後押し、覚悟がなければ、抑止力がなまくら刀に見えてしまうことがある。戦争を起こさないために一定程度の抑止力は大切だと思う」と説明した。
橋下徹氏は「“戦う覚悟”というのは誤解を生む場合もあると思うんです。佐藤さんは戦闘訓練を受けていない一般市民に“前線に出てくれ”と、そういうことを言っているわけではない。佐藤さんをはじめ現場で経験した人や防衛大臣を務めた方は、戦うことはそんな生易しいものではないという前提で、“祖国のために戦え”などの威勢のいいことは言わない。現実的に戦闘員がどう戦うかを考えるわけだが、その時に“国民が戦う覚悟を持つ”というのはどういう覚悟なのか？」と尋ねる。
佐藤氏は「イラクの経験で言うと、声援・支持。我々が実際に活動した映像が出ると、“派遣してよかった”と世論が変わり、賛成派が増えた。精神的な支えが1番だ。2番目は、自衛隊だけでは戦えないということ。船や戦車を直すのは防衛産業の方々で、いろんなモノの調達も民間じゃないとできない。そこの支援はある程度必要で、その方たちの家族など関係者も含めて応援してもらいたい」と呼びかけた。
橋下氏は「自衛隊員は戦闘に全集中しなくてはいけないわけだから、その時に自国民が危ない場所にいたら自衛隊員としても放っておくわけにはいかない。であれば、非戦闘員はできる限り自分たちや行政の力で避難する。自衛隊員に国民避難の手を煩わせない。逃げると言うと“祖国を捨てるのか”という声があがるかもしれないが、これも覚悟・大きな支援だと思う」との考えを述べた。（ABEMA『NewsBAR橋下』より）
