将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント2回戦・第2試合、チーム永瀬とチーム糸谷の対戦が8月19日に放送された。大会常連チームが激突した本戦は、追いつ追われつの大接戦を展開。リーダーの永瀬拓矢王座（30）の3戦全勝のほか、最後は“常勝軍団”のエース・増田康宏七段（25）が2局連続の白星で勝負アリ。チーム永瀬がチーム糸谷に5勝3敗で勝利した。準決勝では、チーム天彦と決勝進出を掛けて戦う。
チーム永瀬が“常勝軍団”たる勝ちっぷりを披露し、優勝奪還に向けて前進した。本戦トーナメント2回戦では、糸谷哲郎八段（34）率いるチーム糸谷と初対戦。棋界屈指の早見え早指しの糸谷八段に加え、レジェンド・森内俊之九段（52）と新鋭・徳田拳士四段（25）という多彩なメンバー構成のチームとの激突となった。
第1局はリーダーの永瀬王座自ら先陣を切り、森内九段との横歩取りの一戦に勝利。序盤から積極的な姿勢を見せてペースを握り、快勝でチームに白星を持ち帰った。続く第2、4局では増田七段と本田奎六段（26）が出陣したものの、糸谷八段と森内九段の豊富な経験に力を封じられて黒星を喫した。しかし、黒星の後にはリーダー自ら星を取り返すフォローの勝利を飾り第5局終了時点で3勝2敗に。試合中盤までにリーダーが3戦全勝を飾り“仕事”を終えた。永瀬王座は「（この試合では）もう指せない寂しさはありますが、応援する楽しさもある。そちらに回りたいと思います」と語り、仲間の戦いを見守った。
第6局は本田六段と相手リーダーの糸谷八段との対戦に。「現状はリーダーが奮闘している形になっているので、自分も頑張らないと」と対局場に向かったが、後手の雁木模様の出だしから激しい変化に展開。本田六段が速攻を仕掛けて抜け出したと思われたが、相手玉が見えにくくなったところから糸谷八段の攻めが加速し、一気に寄せ切られて82手で逆転負けを喫した。3勝3敗と追いつかれる結果に、本田六段は「連敗は情けないので結構落ち込んでいます」と肩を落とした。
チームのピンチを救うべく、第7局では永瀬王座から絶大なる信頼を寄せられているエース・増田七段を投入。新進気鋭の新人棋士・徳田四段を相手に矢倉の将棋で勝利。序盤の駒組みから安定感抜群の差し回しで相手を圧倒しチーム勝利に“王手”を掛けた。ここで勝負を決めたい第8局には、オーダー会議で「（次局の）予想は森内さん。指してみたいので」と増田七段が自ら連投を決断した。増田七段の先手で始まった第8局は互いにバランスを取り合う難解な将棋に。終盤までギリギリの激戦が繰り広げられたが、最後は増田七段が鮮やかに詰ましきって勝利。チームのエースが第7・8局で連勝を飾り、5勝3敗で準決勝進出を決めた。
解説を務めた青嶋未来六段（28）も「途中までは一進一退の攻防でどちらが勝つかわからない展開だと思っていたが、チーム永瀬が先に王手をかけた勢いを活かした。永瀬王座と増田七段の“二枚看板”が今回も手厚かった」とコメントし、力の拮抗した大激戦を総括した。
3戦全勝でチーム勝利をけん引したリーダーの永瀬王座は、「まずは次に進むことができてよかった」とホッとした表情。本局でもエースとして2勝1敗で力を発揮した増田七段は「最終局は二転三転したドキドキする展開だったが、何とか勝ててチームの勝利を決定付けることができて良かったです」とさらに自信を深めた様子だった。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
