8月6日(日本時間7日)にオリオールパークで行われたボルチモア・オリオールズ対ニューヨーク・メッツの一戦、2-0、オリオールズ2点のリードで迎えた8回に、オリオールズ・藤浪晋太郎が登板。打者3人でピシャリと抑え、今季4ホールド目を挙げるとともに、日本人投手最速となる165.1km/hをマーク。大きな注目を集めることとなったが、その2日後、日本では、藤浪のかつてのチームメイトが、“地獄からの復活”ともいうべきマウンドに立っていた。
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8月9日にZOZOマリンスタジアムで行われた千葉ロッテマリーンズ対オリックス・バファローズの一戦、0-7、ロッテ7点のビハインドで迎えた7回表、オリックスの4番・森友哉がレフトフライに倒れ、1死走者なしとなった場面で、ロッテ2番手・坂本光士郎の後を受けてマウンドに上がったのは、今季からロッテと育成契約を結び、7月27日に支配下選手登録されたばかりの澤田圭佑。
澤田はまず5番・頓宮裕真に対し、カットボールを挟みながらも、150km/hを超える力強いストレートで押し切り、空振り三振を奪うと、続く6番・宗佑磨に対しては、初球に123km/hのチェンジアップを見せた後で、2球目、それよりもやや高いコースへのストレートで三塁ゴロに打ち取り、育成からの昇格後初となるマウンドで、幸先の良いスタートを切った。
澤田は、大阪桐蔭高校時代、同学年の藤浪や、1学年下のオリックス・森らと共に、甲子園で春夏連覇を飾った過去を持つが、夏の大阪大会では大阪府大会でリリーフとして、調子が今ひとつだった先発の藤浪を支え、甲子園での全国大会では、3回戦に先発。自ら本塁打を放ちながら2失点に抑え、見事な完投勝利を飾った。藤浪、森と、甲子園連覇時のチームメイトたちがプロ入りする中、立教大へと進学した澤田は、引き続き、投手として活躍。実に300イニングを投げ、22勝16敗、防御率2.24、225奪三振という驚異的な成績を収めることとなった。
しかしプロ入り後の澤田は、決して順風満帆な野球人生であるとは言い難いものであった。デビュー2年目の2018年には47試合にリリーフとして登板。プロ初勝利を含む5勝・8ホールド、防御率2.54の好成績を挙げて頭角を現すも、その後は度重なる故障に悩まされ、不本意なシーズンが続くことに。そして、2021年の秋には肘のクリーニング手術を、昨年6月にはトミー・ジョン手術を受けるなど、満身創痍の状態となりながらも、捲土重来を期して、懸命にリハビリを続けていたが昨オフ、澤田を待っていたのは、球団からのまさかの戦力外通告。その約1ヶ月後には、入れ替わるようにして、当時、埼玉西武ライオンズ所属であった森がFA移籍でオリックスへ。ギリギリのところで“大阪桐蔭バッテリーの復活”とはならなかった。
その後、今年に入ってからロッテと育成契約を結ぶこととなった澤田は、オリックス時代から続けていたリハビリを継続する形で懸命に取り組み、5月の2軍戦で久々となる実戦登板に復帰。2軍での調整登板を経た後、期限ギリギリとなる7月27日に支配下選手登録を勝ち取ると、前出・8月9日の古巣・オリックス戦で1年11か月ぶりとなる1軍のマウンドへ。そして、続く2戦目となった8月12日の西武戦では、1点ビハインドの場面で登板し、完璧に抑え切った直後に、チームがサヨナラ勝ちを収めたことで、1563日ぶり、移籍後初となる白星となった。「1球1球一生懸命に投げました。長いリハビリだったんで、本当に苦しかったですけど、あの、マウンドに戻れて、良かったなと思いながら投げました。」と、これまでの苦難の道程を振り返るように、また、1軍のマウンドで投げられることの喜びを噛み締めるかのように、試合後のヒーローインタビューで語った澤田。その気迫のこもったボールとマウンドさばきには、既にロッテファンからの熱烈な称賛の声も続々と寄せられているだけに、今後のさらなる飛躍に期待したいところだ。