偶発的な脇固めで肩を脱臼するアクシデントが発生。しかし、本人の強い希望を受け「肩が入ってしまったので…」と試合再開を告げる苦渋かつ異例のアナウンスに館内笑いと拍手。試合を続行するも、致命的なローブロー。次々と起きる負の連鎖による強制終了を受け、今度はダメージを負った選手が「なぜだ!やらせろ!」と激高する事態に発展。場内騒然とする中、偶発的とはいえ「やってしまった…」と申し訳なさそうにうつむく選手の姿が故意でないこと、不完全燃焼な結末に終わったことを物語っていた。
【映像】肩脱臼、ローブロー、激高…「異例づくめ」の2分30秒
8月26日に東京・大田区総合体育館で開催された「RISE WORLD SERIES 2023 2nd Round」で中村寛(BK GYM)とアリシェル・カルメノフ(カザフスタン)が対戦。RISE現ライト級王者でDEEP☆KICK-60kg級の新王者でもある中村。その注目の試合は、序盤で中村が肩を脱臼、試合再開後にローブローで続行不可能となりノーコンテスト。不本意な結末に中村がリング上でやり場のない怒りをぶちまけた。
1ラウンド、ゴングとともに左のミドルやローなどシャープな動きを見せる中村。対するカルメノフも重量感のあるミドル、飛び込みざまの突進力のあるスーパーマンパンチで応戦。しかし、この変則的な動きが悲劇を生むことになる。
両者拳で距離をとりながら一発をうかがう攻防で、中村がスッと左のストレート放つと、カルメノフが体を入れ替えるような不規則な動きで反応すると両者がもつれ、転倒した。
倒れたままの中村は、何らかの異変に気づいたか、その表情は険しい。ABEMAゲスト解説の山田洸誓は「肩外れたんちゃいますか?」とひと言。
問題の場面、カルメノフが脇固めのように中村の左腕をロックしたまま転倒。会場のビジョンにその様子がリプレイで映し出されると館内に「あーっ」とため息が漏れた。視聴者もこれに反応。「肩極めようとしてるじゃん」「完全に狙ってる」「これはダメだろ」と大ブーイングが相次いだ。
ドクターチェックを受ける中村は「これなら行ける」と試合続行を志願。会場に「ドクターの診断によりますと脱臼だそうですが、肩が入ってしまったので(本人が)続行するということになります」と前代未聞のアナウンスが流れると、会場からは笑いと拍手が起こった。
中村が自らに気合を入れ、会場を煽って試合は再開。中村は距離を詰めてパンチを連打。カルメノフはミドルや飛び込みのヒザ、さらに空を切ったがダイナミックなバックスピンキックで応戦。両者一発を狙う緊張感ある攻防が続くかに見えたが、ここで二度目のアクシデントが起きる。
中村が飛び込みの右フック、カルメノフは抱きつくような姿勢でヒザを出すが、これが中村の下腹部を直撃。二度目のアクシデントに「故意だ」「反則負けに」とファンも荒れ気味。ゲスト解説の山田や原口健飛は「(カルメノフは)悪い人ではないですよ」とファイターの視点から偶発的なアクシデントであることを強調した。
グッと歯を食いしばり耐える中村はコーナーで大きく息をするも顔は真っ青。対するカルメノフも「やってしまった…」といたたまれない表情でうつむいている。さすがにレフェリーが続行不可能と判断し、試合が止められた。
大会側の判断は肩の脱臼に続くローブローで選手のダメージを考慮してのノーコンテスト。試合を強制終了された中村は「ちょっと待って」とやり場のない怒りを爆発させ、セコンドに制止されるなど、両者にとって後味の悪い結末となった。その後、中村がカルメノフ陣営に挨拶に行くと、カルメノフはただただ、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
異例の事態を受け原口は「俺も寛くんと同じ『行ける』と言っていたと思う。全然カッコ悪くない。仕方ないし選手生命にも影響すると思う。チャンピオンなんで、クセになってようなくなっても困る。再戦でいいと思う」と中村の心中を慮った。
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