8月31日、西武池袋本店でストライキが行われ、全館臨時休業となった。同日、「そごう・西武」の売却が決議されたが、百貨店は今後どうなっていくのか。『ABEMA Prime』で、ストを指揮したそごう・西武労働組合委員長の寺岡泰博氏に聞いた。
■親会社変更で「また一から積み上げて交渉していく必要がある」
売却の背景にあるのは、百貨店の経営不振だ。アパレル不況やネット通販の広がりで苦境が続き、セブン&アイ・ホールディングスはコンビニ事業に注力する決断を下した。ただ、その後問題となったのは雇用の維持。米フォートレス・インベストメント・グループへの売却後に、西武池袋本店などに家電量販店のヨドバシカメラを入れる案があがったが、「百貨店の事業は継続されるのか」「従業員の雇用はどうするのか」という不安の声が多く聞かれ、協議は難航した。
寺岡氏は「去年の1月末にメディアの報道で“そごう・西武の株式が売られる”という話が先行して出た。どういう条件なのかはついこの間まで明かされず、『情報を開示してくれ』と常々言ってきた。しかし、最終局面まできても出てこないという中で、最後の武器と言われるストライキを行った」と説明。
組合員からは、テナントの取り引き先やお客への影響を鑑み「本当に良い手段なのか?」という声と、経営側の対応への不満から「やむを得ない」という声があったという。寺岡氏自身も相当悩んだそうだが、「デモをする中で、多くのお客さまや地域の方から『頑張ってね』『これからもお店を開けてね』『ブランドショップをなくさないで』という声を多数いただいた。結果は変わらなかったが、私的にはやってよかったと思っている」と明かした。
ストライキのタイミングについては、「我々は小売業なので、やらないで解決する方法がないかをずっと探ってきた。今回、スト権を確立する際に組合員の全員投票をやったところ、賛成が93.9%。セブン&アイ・ホールディングスの説明が足りないというのは組合員みんなの意見だ。そのステップを踏んだ上で、情報の開示が進めばここまでくる必要はなかったのだが、流れは変わらなかった。結果的に取締役会決議とストライキが同じ日にぶつかった」とした。
9月1日以降、交渉先が変わることに対しては、「労使協議の中でそごう・西武の社長とも会話したが、“どういう経営体制になるかわからない、その中で新しく労使関係を作っていこう”と。そういう意味では、また一から積み上げて交渉していく必要がある」との認識を示す。
今回のストライキが持つ意味について、弁護士で日本労働弁護団幹事長の佐々木亮氏は「新たな使用者になる側から見ると、“ストをする労働組合のある企業なんだ”ということがわかる。“労働者の声を聞かなければ、2度目、3度目があるのではないか?”と思うという意味では、非常に大きなことをやったと思う」との見方を示した。
■「“池袋西武はこういう特徴があるよね”というものが必要」
池袋駅と渋谷駅というターミナル駅を拠点に開発を行ってきたそごう・西武。百貨店業界全体の売上が年々下がる中、数十億~百数十億円の赤字がここ4期続いている。
寺岡氏は「我々は、リストラは絶対嫌だとか駄目だという立ち位置ではない。厳しい今の業績を考えれば、一定数の店舗や人員的なリストラもやっていかざるを得ない。会社を立て直していく上で、どういう百貨店像ならこれから成長できるのかということを一緒に考えていけるような道筋をつけたい、労使交渉をしたいと思っている」と話す。
地下鉄の増加などによりターミナル駅における人の動きも変わってきた中で、百貨店の立ち位置をどう受け止めているのか。
「“池袋といえば西武と東武”というようなイメージが大事だと思っている。そこからもう少し深く掘って、“池袋西武はこういう特徴があるよね”というものがないと、人の流れが変わった時に通過されてしまう危惧もある。それをどう作っていくのかは今後も考えていかなければならない。豊島区と文化ということでいうと、『“セゾン文化”が池袋の街にはあるんだ』ということを地域住民の方に言われてきた。独自の施策なり取り組みを街のみなさんと一緒に作り、わざわざ来たくなるような、駅としての活用ではなくお店で楽しんでいただけるような空間もしくは価値提供をいかにやっていけるかが1つのキーポイントだと思っている」
その上で最後、「今回ひと区切りつくが、我々が求めているものは変わらない。今までの百貨店ではなく、新しい形の百貨店。これを作った上で、どこまで雇用を維持できるか。新しい経営の方々と改めて話していきたい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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