小学6年生の時に幼馴染の中学生から性被害、いまだ男子トイレを使えず…男性の性被害が抱える葛藤、理解への課題
【映像】「男子トイレで横に立たれるのが怖い」被害男性が語る性暴力
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※性被害のフラッシュバックのおそれがある方は閲覧せずにお戻りください

 先日、東京拘置所の男性収容者が国を相手に、損害賠償を求める訴訟を起こした。理由は、刑務官からの性暴力。男性は刑務官から下着を脱ぐように指示をされ、下半身を触られたという被害を訴えたが、拘置所が適切な対応を取らなかったとして、220万円の賠償を求めた。

【映像】「男子トイレで横に立たれるのが怖い」被害男性が語る性暴力

 性暴力と聞くと、「加害者は男性、被害者は女性」というイメージを抱きがちだが、内閣府の調査によると、身体接触を伴う性暴力を受けた男性は5.1%、性交を伴うケースも2.1%と、被害者になるケースがある。

 男性専門の相談窓口を作ることや、保育・教育現場に性加害者を入れさせない日本版DBSなどの対策が注目される中、『ABEMA Prime』では当事者と専門家を招いて実態と課題を考えた。

■小学6年生の時に性被害、いまだ男子トイレを使えず

「この番組を見てくれた皆さまに感謝を申し上げる。性被害者が声をあげるには大変なパワーがいること。声をあげる人もあげられない人も、声をあげないという選択をした人もいらっしゃる。先日、私に優しく接してくださった経験のある、集団レイプの被害にあった女性が自死した。これからご覧になる皆さまはどうかご自身の心身を大切になさってほしい」(りういちさん)


 りういちさん(49)は、過去の被害経験から、男子トイレがトラウマになり、多目的トイレを使用している。

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 性被害は小学6年生の時、近所に住む幼馴染の男子中学生の家に行った時だった。「部屋に入って少し伸びをしていたら、いきなり後ろからズボンを下げられて、私の男性器をくわえられた。両脇を抱えられているのと、あまりに突然のことだったので動けなかった」。何が起きているのか理解できないまま行為は続き、さらには相手の男性器を口に押し込まれたという。その後、ようやく解放されたが、「何をされたかなんて親に言えない。信じてもらえない」。

 誰にも相談できず、1人で抱え込んでいたりういちさん。高校生になった時、一度だけ同級生に打ち明けたことがあったが、「“こいつホモられた”“やっぱり気持ちよかったんだろ?”と、からかわれた。それ以上言えなくなってしまった。ショックだった」。

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 若年層の性暴力被害の実態アンケート(内閣府、オンライン)で、身体接触を伴う性暴力の被害を受けたことがあると答えた770人のうち、男性は95人(5.1%)だった。また、「相談ができない」「相談しなかった」人の割合は52.4%(女性46.2%)となっている。

 精神保健福祉士の斉藤章佳氏は「性暴力は被害者が声を上げにくいことから、暗数が非常に多い。2019年に私が、子どもへの性加害者117名から“どういうターゲットを選んだのか”というアンケートをとったら、3~4割が『男の子を選んだ』と答えている。内閣府の調査と実態とには乖離があると思う」との見方を示した。

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 また、加害者が満たしたいのは「支配欲」「優越感」「達成感」などであり、「性欲」の問題だけではないという。かわいいから、かっこいいから被害に遭うということでもなく、支配欲を満たしやすそうな人などを狙うということだ。

■拒否したいのに身体が反応…「被害として訴えるのはおかしい?」と葛藤

 性被害を受けたりういちさんは、2002年にうつ病と診断。男性が怖くなり、特にがっちりとした体形の人は避けるようになった。また、身体が快感を感じてしまったことで、「自分は同性愛者かも」という混乱も。

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 斉藤氏は「『心は拒否しているが、体が生理的に反応してしまう』とおっしゃる被害者が非常に多い。これを“被害として訴えているのはおかしいんじゃないか?”という葛藤を抱え、苦しんでいる。このあたりの理解が、特に男性被害者の場合はもっと広がるべきだと思う」と話す。

 一方でりういちさんは、女性を異様なほど意識するようになってしまったという。「例えば女性の姿やシルエットだけではなく、生理用品や下着売り場を見るだけでも興奮が起きてしまう状態。本当に女性の皆さんには申し訳ないと思っているが…」。

■日本の価値観が「カミングアウト」を阻害?

 国は「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」の議論を進めているが、斉藤氏などは、その対象に自治体の条例違反も含めるべきなどと要望を行っている。

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「職業選択が制限されたり、プライバシー権が侵されるという話がされている。また、刑罰という観点だと、加害者と子どもの人権を天秤にかけるような話になる。しかし、専門治療の観点からすると、性加害の”引き金”を徹底的に避けることこそが、予防の第一原則だし、それは加害者自身を守ることにもなる。

DBSも私たちの再犯防止プログラムも、再犯は防げるが、初犯は防げない。治療に来る方は、逮捕されたことで初めて、問題に気付くケースが多い。再犯を防ぐための制度と、自分の加害性や問題性に気づくことが重要だ。そのためには、議論されている包括的性教育を広げたり、加害者側の視点を一般の方にも知ってもらうことで、より周囲から介入しやすい状況を作っていく。このあたりが今できることだと思う」

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「加害者と被害者の数が非対称になるのが、特徴でもあるので、初犯で止められるかがすごく大事だ。“痴漢加害30年、被害者3万人”という人がいるわけだ。彼を取材した時に聞いたのが、大事なことは『トリガーから離れる』と。なぜ痴漢をやめられたか?というと、それは『車に乗っているからだ』と話す。彼の場合は電車自体がトリガーで、それを避けることでかなり抑制できているそうだ。ただこれは社会の仕組みとしては定義できてないので、DBSみたいなものが重要になってくるというのが1点。もう1点は、アウティング。相談された側、打ち明けられた側がどう対応していいかわからないというのが、難しい問題。当事者の周りだけでは解決できないので、相談窓口などのフォローも必要だ」と話す。

 斉藤氏は「特に男性の場合は、男尊女卑の価値観を内面化している状態がある。例えば、“男性が被害に遭うこと自体が恥ずかしい”“男だったら我慢して乗り越えないといけない”という社会的なジェンダー規範がある。男の沽券に関わるとか、”気合いと根性”みたいな価値観で余計に言いづらいと思う。こうした日本の価値観が、男性のカミングアウトを阻害していることも知って欲しい」と訴えた。

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 りういちさんは「男女を問わず誰でも性被害者になる可能性があるし、性加害者になる可能性もある。私が性被害を受けたのは30年以上も前で、過去を変えることはできない。だけど、未来を変えることはできる。私はこれからも男性が性被害を受けるという危険性を訴えていきたい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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