大人になっても無くならない、いじめ。職場でのいじめ問題について、慶応大学特任准教授などを兼務するプロデューサー、若新雄純氏と考える。
Job総研の「職場のイジメ実態調査」（ライボJob総研調べ「2023年 職場イジメの実態調査」）によると、650人に職場でいじめの目撃、相談の有無を聞いたところ、「相談を受けた」「目撃した」「噂を聞いた」経験があるという回答の合計は59.9%、「全くない」が40.1%と、経験があるという人が過半数を占めた。
また、目撃・相談の経験があると答えた人にその後の行動を聞くと、「何もしなかった・できなかった」が52.2%、「一緒に解決に動いたが解決しなかった」が22.6%だった。
いじめだと思う境界線の認識についての回答は以下だ。
レベル1：1対1の比較的軽度な言葉によるからかい…21.8%
レベル2：数名による比較的軽度なからかい…19.8%
レベル3：レベル2の継続、エスカレート…44.3%
━━職場いじめのデータをどう見る？
「僕自身も生放送で話すのには若干勇気がいる。職場のいじめが全くないと答えた人が40%とあるが、僕の仮説だが、『職場でのいじめが全くないし自分は関わっていない』という場合の多くに、そういう人に限って、無意識にいじめに加担している側なんだけど、それに気づいていなくて、自分の通う職場や学校にはいじめがないと思っているケースが意外とあると思う」（以下、若新氏）
「レベル1、2もいじめだと感じる人は5人に1人ぐらいいる。それがエスカレートしていくと、半数近くの人はいじめだと感じる。いじめを助長するつもりは全くないが、大人になったって、人間が一定の集団になると力関係が対等ではないので、誰かが強い言葉を使ったり上から目線になりかねない。その場合は主導権を握る人、その人に付いていく人、流される人などが現れる。人間の力関係は非常に複雑に動いている。『この前のあれ、何回思い出してもウケるよな』『またこんな服着てるじゃん』などとからかって、相手も冗談だと思って成立しているならいいが、相手が『嫌だ』と言えずにからかいを受け続けている状況は結構あると思う。からかう側は誰かに目撃はされるが、自分は目撃しない」
━━自身の経験がある？
「僕は小中高を通していじめられた自覚はないが、じゃあ誰かが誰かをいじめているのを見て見ぬふりしていたとか、相談を受けたこともなかったし、目撃したけど無視したということもなかったと思う。僕は比較的、強い口調で話したり誰かをいじる側にいた。もしかすると僕に昔、嫌なことを結構言われたという人が何人も出てくるんじゃないかとも思う。怖いのは“無自覚”ではないか」
「いじめの境界線は曖昧だけど、相手がいじめられていると思ったらいじめになる。客観的に見て『そんなもんいじめじゃない』と言っても、それで不登校、会社に行けなくなったら十分被害が出ている。こういう議論に多く関わるようになり、冷静に振り返ってみたら思い当たることがありぞっとした。人間は客観的に自分を見る能力が乏しいと思う。いじめられていると感じている人の感覚などを冷静になって知ることが大事だ。僕も自戒の念を持たなければいけない」
また、実際に職場いじめが起きやすいと思う環境についての調査では、対面の方がいじめが起きやすいと答えた人は84.7%に上る。
━━この結果をどう見る？
「オンラインの環境では発言者だけがマイクオンにすることが多いので、容姿や言動に対するいじりがしづらい環境だと思う。しかし、人間の歪んだ力関係みたいなものが見えにくくなっているだけで根本的になくなっているわけではない」
「『自分はいじめられたことがない』という人は、無意識に力関係の強い側に行っていないか気をつけたい。どこかで自分が先輩になったり、グループ内で発言権や立場を与えられると、よっぽど気を付けていないと誰かに強く当たってしまう。『自分の関わるコミュニティにいじめはない』と安易に言わないことが大事なのかもしれない。対面の場で自分の方が強く物事を言える人こそ気を付けるべきだ」
（『ABEMAヒルズ』より）
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