マニラ発のLCC機が、福岡空港の「門限」に間に合わず、乗客が11時間にわたり缶詰状態に――。
フィリピン・マニラから福岡までの飛行機が、トラブルによりUターンする騒動が起き、乗客の女性Aさん(22)は「こんな経験すると思っていなかった」と振り返る。福岡空港では、以前も門限に間に合わなかった飛行機が、羽田へ折り返して、7時間にわたって乗客が缶詰状態になる事態が起きていた。
フィリピンのLCC「セブ・パシフィック航空」の5J922便は、9月4日16時ごろ(日本時間)、乗客125人とともにマニラを出発した。到着予定地の福岡空港は、近隣住民への騒音対策から、離発着が22時までに定められている。マニラから福岡は約4時間のため、通常通りであれば間に合う。
4日20時ごろ、予定通り福岡空港に着陸……と思った瞬間、「急に機体がガーって上がった」(Aさん)。機長がなんらかの理由で着陸を中止したのだ。福岡空港上空は、着陸待ちの飛行機で混雑し、長い時には1時間ほど上空で待機することもある。福岡空港事務所の担当者は、当時の状況を「2機くらいが待機していたみたいですね」と振り返る。
その後、管制が再び5J922便に着陸を促したところ、パイロットは「燃料が足りなくなる恐れがある」として、代替空港への着陸を要求した。LCCでは燃費効率を上げるため、必要最低限の燃料しか積まずに運航する傾向がある。
同機は20時30分ごろ、給油のため北九州空港へ代替着陸した。しかし、機内には「北九州空港の受け入れ体制が整うまでお待ちください」とのアナウンスが流れ、待ち時間中にはカップラーメンやお菓子が配られたという。
そして門限を過ぎた0時ごろ、マニラへ引き返すとアナウンスされた。乗客125人がマニラに到着し、缶詰状態から解放されたのは、3時30分ごろだった。元航空管制官のタワーマン氏が、北九州空港に乗客を降ろせなかった理由を推測する。
「国際線は、出入国管理官・検疫官・税関の3人がそろわなければ、入国手続きができない。突然『北九州空港で降ります』って言われても人がいない。それが原因で出られなかった」(タワーマン氏)
マニラへUターンした理由としては、自社の飛行機を担当できる整備士が、近くの空港に不在だった場合、再離陸できなくなる可能性があるため、自分の基地に戻ることが考えられるという。
また、格安航空だからこそ事情もあるようだ。大手航空会社では、トラブルがあっても補償を行い、目的地へ連れて行く旨の契約が定められているが、LCCはそうではない場合が多々ある。
「さまざまな周りのバックアップ(補償)を考えておかなくていい。困ったらお金だけ返してリセットボタン。『後は許してね』という技が使える。これができるから、LCCは安い」(タワーマン氏)
ちなみに乗客には、福岡への航空券手配はもちろん、お詫びとしてマニラ空港近くの4つ星ホテルでの休憩が与えられたという。Aさんいわく「ホテルがきれい。朝食もおいしかった。いいベッドを使えてよかった」。Aさんは翌9月5日12時ごろに、再び福岡へ向けて出発した。
タレントのくりえみは、空港のリスクヘッジが足りなかったのではないかと話す。入国手続きの担当者が、一定時刻まで待機するといった対策をとるなど、「もしもの時を考えて、常に動かなきゃいけない。この体制が整っていない現状が問題」と指摘した。
元週刊SPA!副編集長の田辺健二氏は、補償の少ないLCCのなかでは「神対応」だったとコメントしつつ、定時着陸予定が20時と、門限2時間前に設定されていた点に注目する。
「着いて、さらに(門限までに福岡空港から)帰らなきゃいけない。LCCは(旅客便数を)回してナンボ。もしかして、20時をちょっと越えるだけで、帰って来られないという判断もあったのでは」(田辺氏)
なお今回の事案について、空港管制官は「マニラへ戻れという指示はしていない。航空機側の判断で戻った」としている。また、国土交通省が航空会社に聞き取りをしたところ、「マニラに戻った方が、乗客に対し円滑に宿泊施設などを提供できるから」と回答したという。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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