超ハイレベルの対戦が、時にして見たこともない景色を盤面で描くものだ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント準決勝・第2試合、チーム藤井とチーム稲葉の対戦が9月16日に放送された。藤井聡太竜王・名人（王位、叡王、棋王、王将、棋聖、21）と稲葉陽八段（35）が、第2局で対戦。「相掛かり」の最新形でぶつかった両者だが、終盤に入ったところで全部で4枚しかない桂馬が密集。解説棋士も思わず「桂馬、すごすぎない？」と驚きの声を挙げた。
藤井竜王・名人は将棋ファンなら説明いらずの絶対王者で、現在は史上初の「八冠独占」に向けて王座戦五番勝負の真っ最中。このABEMAトーナメントでも個人戦だった第1回・第2回、団体戦となった第3回・第4回と計4度の優勝を果たし、超早指しでも無類の強さを見せている。対する稲葉八段も名人位の挑戦経験者で、竜王戦1組・順位戦A級の実力者。いつまたタイトル戦に登場してもおかしくない存在で、同大会では昨年、出口若武六段（28）・服部慎一郎六段（24）と3人で初優勝を果たしている。
決勝進出に向けた注目リーダー対決は試合序盤の第2局に実現した。稲葉八段の先手番から始まると「角換わり」と並んで現在のプロ将棋界の中でもかなり多く指される「相掛かり」からスタート。両者ともに研究が深いこともあってか、どんどんと手が進み、解説を務めた鈴木大介九段（49）からも「速すぎて何やっているかわからない」と苦笑いが出るほどだった。駒組みもそこそこに激しく駒がぶつかり合い、局面はどんどん進行。「なんだ、この速さは。なんでそんな簡単に桂交換できるの？」と驚きの声が続いた。
その鈴木九段が、全く違う形で驚くことになったのが終盤に出てきた桂馬の超密集現象だ。稲葉八段の桂馬が3五、藤井竜王・名人の桂馬が5三の地点に配置されたところから、稲葉八段は4六の地点に持ち駒だった桂馬を投入。これに反応した藤井竜王・名人が5三の桂馬を4五の地点に跳ねたことで、3枚の桂馬が密着することになった。さらに局面が進み、桂馬の取り合いが起きた後、再び桂馬3枚がくっつき、さらに1マス置いて4枚目の桂馬も盤面に現れた。これには鈴木九段も「すごい！こんなに桂馬が密集することあるんだ。桂馬すごすぎない？」とびっくり。横に1マス、縦に2マス、ジャンプするように利く桂馬が、いったいどこに利いているのかわからない超密集状態が生まれた。
この珍しい局面にファンからも「桂馬が渋滞」「桂馬いっぱい」「本当わけわからん」といった声が多数集まった。なお対局は、難解な将棋をまとめあげた藤井竜王・名人が勝利している。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
