「自分は部長で優秀だと思っていた」 51歳でリストラ・労働市場では“ただのおじさん“? 会社員の管理職は潰しがきかない?
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 昨今、人員削減に動く企業は多い。JT(日本たばこ産業)は2021年、46歳以上を中心に希望退職を募集し、2868人が応募。翌年、富士通でも50歳以上の幹部社員を対象に募集をかけ、3031人が応募した。2022年に早期希望退職を募集した大企業は38社となっている。

【映像】リストラ経験者による「備え」と「対処」

 そんな状況の中、次第に風当たりが強くなっているのが“おじさん”たち。ネットでは「人員削減するならおじさんでしょ」「役職があっても働かないおじさんはいらない」などの厳しい声も聞かれる。

 中高年になり仕事を失ったら、再就職はできるのか。いざという時の備えとは。『ABEMA Prime』でリストラを経験した人とともに考えた。

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 51歳で退職、再就職先が見つからず、ライターに転じたしげぞう氏(60)。「リストラされる側からすれば、する側の気持ちはわからないし、コントロールできない。納得いく場合といかない場合、理不尽だと思う場合がある。不安に思う人もいれば、逆にチャンスだと考えて挑戦する人もいるだろう。私の時は部署丸ごとのリストラだったが、“そこまでひどかったのか”“自分の定年ぐらいまでは持つだろう”という甘えた気持ちがあった。相当迂闊な人間だ」と振り返る。

 当時は部長職で、「自分は優秀。すぐに次が決まるだろう」と思っていたそうだが、「他の会社に紹介してもらったり、自分でハローワークや求人誌、ネットで情報を探したりもしたが、部長という職は会社の中でしか通用しない。労働市場に放り出されたら、50代に入った“ただのおじさん”だ。特殊な業界にいる人や手に職のある人、希少な資格などを持っていれば別だが、いわゆるホワイトカラーの一会社員は潰しがきかない。“全く必要とされてない”というのは絶望的だった」。

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 しげぞう氏はリストラへの「備え」として、異なる業界での副業、頼りになりそうな人の連絡先の確保、ファイナンシャルプランナーや医療系の資格取得。リストラ直後の「対処」として、失業保険や健康保険の手続き、人脈をたどってとにかく連絡すること、をあげている。

「学び直しについて最近の人が悩んでいるのは、どんな資格を取ったらいいの?ということだろう。例えば今は流行っている資格だけど、この先時間を費やして取得した資格の価値がなくなっている可能性がある。ましてや50代なると、新しいことを覚えるには腰が重い。そうすると、すぐ覚えられて長く使える資格はなんぞや? と悩むと思う」

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 プロデューサーで慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「なぜこんなに“手に職問題”が出るかというと、ある規模よりも大きな会社では“出世=管理職になること”だったからだと言われている。経済が成長していた時代は、自分がプレイヤーから上の立場になって高い給料をもらっても、その下に若くて給料の安いソルジャーが入ってくるから成立する構造があった。問題は、管理職としての能力がその会社における業務でだけ通用するもので、課長・部長という能力は外に持ち出すのが不可能だったということ。そうなると中間管理職を目指さないほうがいいが、現場のプレイヤーのままでは給料が上がらない会社も多い。30代、40代になった時に現場で汗かいてやり続けるかどうかは、実は資格を取ること以上に大事だ」と指摘する。

 NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「家庭を顧みずに仕事一筋でやってきた、いわゆる企業戦士みたいな方がすごく多い。非常に頑張ってきたが、家族とは絆が作れていなかったりする。また、人間関係も会社に限定されているため、退職した瞬間に全ての社会的な繋がりが遮断される。とはいえ、40代、50代でリストラされた場合、ある程度の失業手当は出るし、会社からの希望退職であればお金も出る。レジリエンス(復元力・回復力・弾力)が強い人は、再チャレンジしやすいわけだ。どちらが幸せかを考えた時に、会社や仕事に重きを置きすぎないほうがいいのではないか」と提案した。

 若新氏は「中間管理職において重要なのは、偉いことではなく“偉そうであること”だと言われている。その人が前に立つとみんなも前を向いて、言うことを聞く雰囲気が組織を成立させてきた構造がある。そこに“文鎮”のような重しを見い出しているわけだ。“あの人がいるからこの部署はみんなちゃんとしている”という状態で定年までいられたらいいが、組織を離れた瞬間に何でもなくなってしまう」と述べた。

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 しげぞう氏は「文鎮のような役は、会社内においても、対外的にも役に立っている。営業が『役職付きの人と一緒に来た』『部長を連れてきた』と言うと、決済が下りやすい。ただ、それも会社を離れてしまえば"ただの人"。ゲームプログラマーなんかだとSEになる道もなくはないが、狭き門だ。私は“完全に社会に必要されてない”ところまで1回落ちたが、たまたま副業でやっていたライティングのクライアントから仕事をいただけた。運が良く、書く道が残っていたという話で、そういうものがない人はどうなるのだろう」と投げかけた。

 大空氏は「民間企業はリストラされるかもしれない恐怖がある一方、リストラされないであろう教職員や教員になる人は減っている。今、大企業が兼業などを進めているのは良い風潮だと思うので、仕事に対してもう少し軽い気持ちで向き合う姿勢が広がってもいいのかもしれない」とした。(『ABEMA Prime』より)
 

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