大学の医学部教授を経て、ベンチャー企業を設立した男性がいる。ビジネスと科学をかけ合わせ新たなイノベーションを起こしたいという胸の内に迫った。
「自分がやってきた研究結果を元に、日本の4~5兆円の『医薬品・医療器具の輸入超過問題』に一石を投じたいと思い、会社を設立した」
近視やドライアイ、老眼の治療などに関する研究・開発を行っている慶應義塾大学発のベンチャー企業「坪田ラボ」の坪田一男代表(68)。近視の進行を抑える可能性があると、近年の研究で明らかになっている“バイオレットライト”を使ったメガネをJINSと共同で研究・開発した。現在、安全面やその効果などを治験の真最中だという。
「近視の原因が外遊びの不足にあることは多くの人が言っていたがその『理由』がわかっていなかった。そこで我々は“外にはあるが、室内にはない一つの光成分”を発見し、それをビジネス化させた」
慶應大学医学部の教授として、角膜移植やドライアイ、屈折矯正手術(レーシック)などの世界的権威として知られている坪田代表。自身が使っていた道具がすべて“海外製”だったことから起業を決意したと話す。
「顕微鏡もドイツ社製、白内障の手術もアメリカ社製。『あれ?日本の製品無いじゃん』と思い調べてみたら、日本は医薬品と医療器具を輸入ばかりしていた。日本はやばい状態と言える。
日本は優れた科学技術を社会まで届ける“商業化”(コマーシャリゼーション)が抜けている。ほかの国が医療を福祉から見始めたが、1980年代からは産業としている。日本だけが(いまだに)福祉としている。考えを変えないと戦えない」
科学とビジネスをかけあわせ、新たなイノベーションを生み出したい。こうして2015年に坪田ラボを創業した坪田代表。そこから、試行錯誤の日々だったという。
「メガネ一つにしてもどうやって作ればいいのかわからなかった。作ってもらうところを探すのも大変で、設計図もこちらが書かなければならない。この数年間は面白い体験をしてきた」
活動の傍らで経営を学ぶため、大学院に通いMBA(経営学修士)も取得。創業から約8年、自身が強みを持つ眼の治療分野でJINSやNEC、ロート製薬といった企業と共同でメガネや、バイオレットライトを登載したPCなどを開発。こうした取り組みが評価され、「日本スタートアップ大賞2023」で審査委員会特別賞を受賞した。
日本の科学をビジネスとして世界へ。次世代に向けたロールモデルになりたいと坪田代表は語る。
「『健康』というものの新しい切り口を作る。それによって大きな産業を産み、日本がリードする。そういうふうにしていきたい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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