東京都の教員採用選考の倍率が小学校で1.1倍となるなど、教員のなり手不足が深刻化しており、子どもたちの「学びの質の確保」も懸念されている。『ABEMAヒルズ』ではその「要因」と「影響」を専門家と考えた。
■教師が選ばれない理由
東京都の教育委員会が発表した2024年度の教員採用選考で、小学校の受験倍率が1.1倍と過去最低に。中学、高校や特別支援学校を合わせた全体の倍率も1.6倍と、教員のなり手不足が浮き彫りとなった。
倍率低下の1つの要因は「労働環境」だ。都内公立小学校の現役教員も「私の場合、今朝7時には学校に着き、帰りは19時か20時だ。定時は16時45分だが、2学期は運動会や宿泊行事など行事が多いため早く帰れない」と話す。
放課後の事務作業や部活で残業が続くにもかかわらず、その対価はあまり期待できない現状。 学生の間でもいわゆる“ブラック職場”というイメージが浸透している。
東京学芸大学の岩田康之教授は「時代の変化によって教員に求められるハードルが上がっていることも、学生の教職離れにつながっている」と指摘する。
「医学部では医師免許を取ってから研修医の期間が設けられており、民間企業でも入社してから研修などを通して少しずつ実務を覚えていくが、教師は免許を取る段階である程度完成されたものを求められる。だから、新人が保護者対応でいわゆるモンスターペアレントに対応することを考えると萎縮してしまうのもうなずける」
1年目は授業に専念するなど、ゆとりをもって新人教員が成長できる環境が必要だと岩田教授は話す。加えて、「学生の私立志向」も要因だという。
「私立の学校は教育環境を充実させたり、教育課題を先取りし、『新しい教育の担い手になりたい人は来てください』とメッセージを送っており、魅力を感じている学生は多い」
スピード感を持って柔軟に教育環境を改善している私立では教員を目指す学生が増加。対して東京都は採用の間口を広げるため、大学3年生から試験の一部を受けられる制度を開始したが、準備期間も短くなり、教育実習も始まっていないタイミングでは自分の適正も見極められないと岩田教授は疑問を呈す。
東京都は採用倍率低下の要因について「35人学級対応のため採用数が増加していること」を挙げ、受験者数低下の要因は「新卒はほぼ変わらないが『既卒』が減少しており、採用数が増えたことにより前年度の不合格者が減ると翌年の再受験者が減るため」と説明している。
■教師の「質」は低下するか?
東京都は「受験者数の減少と教員の質と直接相関はあるとは考えていないが、受験生が多い方が望ましい」としているが、岩田教授は「端的に言って教員の質が下がると言っていい。かつて教員採用倍率が低い地域に他地域で試験に落ちた教員が集まったことがあった」と指摘している。
教員の「質」についてThe HEADLINE 編集長の石田健は「『質の定義』は意見が分かれるだろうが、教えるのがうまい人もいれば、その分野に精通している人もいるなど多様な教員がいた方が良いだろう。しかし受験者数が減ると、『とにかく子どもが好きで学校教育に対して情熱がある人』などに限定されてしまって、『質の幅』が狭くなってしまう問題が生じる」と分析した。
■教師の「魅力」
では、長時間労働や重い責任などネガティブなイメージが強くなってしまった教師に魅力はないのだろうか? 先ほどの都内公立小学校の現役教員は「教員の仕事は本当に毎日にドラマがあってとても楽しい。子どもたちが無条件で先生を大好きでいてくれるので自己肯定感は高まり、おいしい給食も食べられる。さらに、毎日成長する子どもたちの姿を見てこちらも頑張ろうと思える。本当に素敵な仕事なので、ぜひ私はいろんな方たちにこの仕事を味わってもらいたい」と思いを語った。
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・キー局全落ち!“下剋上”西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
・現役女子高生の「リアルすぎる日常」をのぞき見