日本維新の会は、10日鈴木宗男氏の除名処分を決定。夕方になり、党の幹部と会談を終えた鈴木氏が会見で“離党”となったことを発表した。(18:40更新)
党に無断でロシアを訪問したことが理由だが、そもそもなぜ今、ロシアを訪れたのか。
鈴木氏は10月1日から5日の日程で、ロシアを訪問した。現地では、ロシア国営通信『スプートニク』に対して、「ロシアの勝利を100%確信している」などと話し、この発言が問題視されたことが、“除名処分”を引き起こした要因となっている。
鈴木氏は第二次橋本内閣で、北海道開発庁長官・沖縄開発庁長官として、49歳で初入閣した。現職閣僚として初めて、国後島・択捉島を訪問。鈴木氏の本人談によると、プーチン氏が大統領当選後、初めて会った外国の政治家だという。
しかし、国後島の「日本人とロシア人の友好の家」、いわゆる「ムネオハウス」の建設をめぐる疑惑が起きる。その後、議員辞職勧告が出ても国会へ出席し、3度の胃がん手術から復活、5年間の公民権停止を経て、再び議員になった“不死鳥”とも言える存在だ。
ガーシー被告に対する参議院懲罰委員会では、委員長として帰国を信じていたという。政治ジャーナリストの青山和弘氏は「がっかりしていた。それは鈴木宗男さんが一票の重みを一番知っているから」と推測する。
そんなベテラン政治家だが、現在所属する維新党内からは、ロシア訪問に手厳しい声が上がる。吉村洋文氏は「党の考え方とは明らかに違う。厳しい処分にすべき」と語り、藤田文武幹事長も「非常に厳しい結論になる可能性」を示した。なお鈴木氏は5月にも訪問を計画していたが、党内外からの反発を受けて断念。鈴木氏は当時、藤田幹事長を「あなたの100倍国益を考えている」と批判していた。
今回、鈴木氏が訪露した目的のひとつが、ウクライナとの「停戦」だ。モスクワ訪問中には「双方が銃を置く。1にも2にも停戦が一番だ。このことをロシアが主導的な立場で行うべきではないかと話した」と取材陣に明かしている。
ロシア訪問には、北方領土の墓参りを再開してほしいという要望を伝える意図もあった。10月6日に行われた単独取材で、鈴木氏が思いを語る。
「黙っていても動いません。今や、その元島民は平均年齢88歳です。もう人生が限られているんです。その人たちが泣いて、鈴木宗男に『生きているうちに、もう一回行きたいんです。元気なうちに先祖の墓をお参りしたいんです』と言われた時に、私はその場しのぎで『わかりました』とは言いません」「動かします、と約束するんです」(鈴木氏)
訪問の目的には、停戦と北方領土問題以外にも、四島周辺水域での日本漁船による「安全操業協定」などの漁業交渉の再開を要請することも含まれている。なお、このタイミングになった理由について、鈴木氏は日本の国会日程と、ロシアの外交日程を挙げている。
インタビューを行った青山氏は、今回の問題は3つあると指摘する。1つめは「渡航中止勧告が出ているロシアに今行くべきか」、2つめは「日本維新の会への渡航手続きの遅れ」、そして最も問題なのが「現地での“ロシアの勝利を100%信じている”発言」だ。
この発言で一気に雰囲気が変わった。日本は、ロシアが国際法違反をしているとして、ウクライナを支援する立場だ。維新も政府方針に準じているが、発言はそこへ真っ向から反対する印象を受ける。
青山氏は「『ロシアの勝利を願っている』と言ったのではない」「ロシアは大国だから、完全に打ち負かしてしまうことはできないだろうという文脈の中で、“負けることはない”という意味で発言している」と分析。
しかし「プロパガンダに使われてしまったことも間違いないわけで、それはある意味脇の甘い発言をしたな。ということは言えると思います」そして「こんなことを言っている人が、維新の一員であるということは許せないという意見が強まって除名の方向に行っている」と説明した。
元衆議院議員の宮崎謙介氏は、「外務省だけに任せていると物事って発展しないんですよね」と口を開く。外務省では国同士の関係維持が主で、あまり踏み込んだことはやらないとして、「それをやっていくのが、政治家の役割だったり使命」と述べた。そして「あの失言がなくて、うまく転んだら、宗男さんは一歩間違ったらヒーローになる可能性があるんですよ」「それくらい大きな力を持っているのが議員外交だなと思います」と語った。
千原ジュニアは、鈴木氏の一連の行動を「なにを持って国際法違反だと言っているんだ、みたいなところが根底にあっての動き」ではないかと指摘。これに対して青山氏も同意、鈴木氏は今回ロシアに利用された部分がある一方で、「ロシアとのパイプを持っている人を、言い方は悪いが『飼っておく』必要もあるんじゃないか」そして「それらを考える良い機会になった」と締めくくった。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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