史上初・八冠独占も「もっと実力が必要」藤井聡太竜王・名人が歩みを止めない“圧倒的強者”への道
【映像】藤井聡太竜王・名人、全八冠制覇への大逆転シーン

 8つあるタイトルを総なめにしてもなお「もっと実力が必要だなと感じることが多い」と、藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)は語った。10月11日に行われた王座戦五番勝負第4局で勝利、史上初となる「八冠独占」を成し遂げたが、報道から度々飛ぶ「目標」「ゴール」といった質問に対して、今回の全冠制覇を一つの区切りや節目だと思うというような言葉は、1度も出てこなかった。結果を出せたことはうれしいが、勝ち方・内容については決して満足しない。最強棋士の見ている物は、周囲の想像のはるか上を行っている。

【映像】藤井聡太竜王・名人、全八冠制覇への大逆転シーン

 タイトル戦だけ切り出しても80局で64勝16敗の勝率.800。開催中の竜王戦七番勝負を含めてタイトル戦に19回登場し、うち終了した18回の全てでタイトルを獲得している。デビュー以来の通算勝率も8割超えをキープ。年々、レベルの高い相手と対戦する割合が増え、ついに今後のタイトル戦は全て番勝負、トーナメント戦には一般棋戦でしか出場しないという“異常事態”に突入する。

 将棋界の過去を振り返っても、突出した成績を残し続けているが、どうにも本人は満足しない。たとえば王座戦五番勝負は第3局、第4局と前王座の永瀬拓矢九段(31)に終盤まで敗色濃厚というところまで追い詰められた。驚異的な粘りもあり、どちらも劇的な逆転勝利を収めて八冠独占へとつなげたが、冷や汗ものの勝利は、やはり最強棋士の理想とは離れている。「自分の実力以上の結果が出ているのが正直なところ」と、プロとして求められる「結果」という大事なものは出せていても、それが自分の力が100%反映されたものとは考えていない。

 他の業界を見渡せば、藤井竜王・名人にも勝る「圧倒的な強者」は他にもいる。たとえば大相撲では、数々の記録を作った元横綱・白鵬は、年間86勝4敗、勝率.9556という数字を残した。今の藤井竜王・名人の環境よりも、格下の相手と戦うことも多かったが、肉体がぶつかり合い不確定要素も多い競技において、この勝率はとてつもない。同じくスポーツであれば、レスリング女子フリースタイルの藤波朱理は19歳にして、連勝記録を「130」にまで伸ばした。これは国内だけでなく海外で行われる世界大会なども含めたもの。直近に行われたアジア大会では、たった1ポイントも奪われることもなく優勝した。

 各メディアは、圧倒的な強者が次々と作り上げる記録を取り上げつつ、さらにその先では「負けた」ことがニュースだと扱い始める瞬間がある。今後、藤井竜王・名人がさらに棋力を高め、他の追随を許さないほど強くなるほど、タイトル防衛は“当たり前”のことになり、むしろ敗戦や防衛失敗の方が驚かれるようにもなるだろう。ただ、そんなことにはお構いなく、最強棋士はどこまでも強さを求めて突き進む。
ABEMA/将棋チャンネルより)

【映像】藤井聡太竜王・名人、八冠独占の瞬間
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