ハマスを「パレスチナ人」はどう見ているか?一枚岩じゃない政治観も パレスチナ系日本人研究者に聞く「どっちもどっち」で片づけないために
デモで暴言の応酬…受け止め方で憎しみの増幅に
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 パレスチナ自治区のイスラム組織「ハマス」による攻撃から始まった軍事衝突。罪のない人々が犠牲となる事態に、非難の声が上がっている。

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 ハマスの大規模な奇襲、そしてその残虐性が注目されるいま、そこで暮らす人々はどのような思いを抱いているのか。パレスチナ問題を研究していて自身もパレスチナ系の日本人である、明治大学商学部のハディ・ハーニ特任講師に話を聞いた。

「タイミングに関しては突然だったが、構造的な変化がない限りこういうことがガザ地区を中心に起こることは予想できた」

 今回の攻撃は、あくまでもガザ地区を実効支配するハマスによるもの。パレスチナの人々は、今回の軍事衝突をどう捉えているのか。

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「パレスチナ人は、ガザ地区の人、ヨルダン川西岸の人、イスラエル領内の人、外国に逃れていった人に大きく分けられる。政治観などは各地域の中でも一枚岩ではない。ガザ地区に関しては、ハマスのやり方に賛同していないパレスチナ人もいることは確実だ。ただ、イスラエルの占領政策、イスラエルという国家に対して批判的であるということは、ほとんどのパレスチナ人が気持ちを一つにしているということは言えると思う」

 長年の迫害の歴史を経てユダヤ人が建国したイスラエル。そのイスラエルによって、故郷を追われた多くのパレスチナ人。お互いの大義がぶつかり、周辺国を巻き込んだ“攻撃と報復”が繰り返されてきた。

 こうした問題を伝えてきたハディさんに、日本での受け止められ方について思うところを聞いた。

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「よく感じるのは『イスラエル人もパレスチナ人も何て野蛮な奴らなんだ、どっちもどっちだ』というような認識で終わってしまうことが多いこと。本質的にはイスラエルが長く続けている占領政策や、その前の、不公平な状況で“国家分割”が強行されたところから端を発している問題であり、さらにその前のイギリスの三枚舌外交などの歴史の背景もある。そうした状況をすっ飛ばして今の状況を見ると、『ハマスというヤバイ連中が民主国家・イスラエルを残虐にも攻撃している』といった部分しか見えてこないだろう。そうなると、占領が続く現在の構造は変わらず、維持されることに繋がってしまうのではないかと思う」

 イスラエルがハマスを抑え込んだとしても、根底にあるパレスチナ人の不満や憎しみは消えず、ハディさんは「イスラエルに対抗する新たな組織が再び出てきてもおかしくない状況にある」という。

 また、各地で声を上げる人々の主張については、取り上げるメディア側も、それを見る側も、冷静に受け止めなければいけないと訴えた。

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「一部には『イスラエル人を殺せ』『残虐な方法でやっつけてやる』『追い出せ』というような、“ハマスの言説”に乗っかってしまうパレスチナ人などもいるかもしれない。ただ、基本的には、ハマスのやり方まで完全に同調しているわけではないはずだ。長い占領政策からの解放を意図して、デモ活動などを行っている人が大部分ではないかと思う。それを一般の方には知ってもらいたい。今のままでは、例えば日本でデモが起きてしまった場合、『日本にもハマスに同調する野蛮人がいるんだ』という言説に絡め取られる可能性がある。これは非常に危険な兆候だ。日本のイスラム教徒、あるいはアラブ人のコミュニティと間で亀裂がうまれるきっかけになってしまうだろう」

 このニュースについて、『ABEMAヒルズ』に出演したハフポスト日本版の前編集長で、米スタンフォード大の客員研究員も務めた竹下隆一郎氏は「共感と理解」という言葉とともに自身の考えを述べた。

「ハマスがやったことは残虐行為だし、『イスラエル人を殺せ』という声にも共感してはいけない。ただ、理解はする必要があるのではないか。なぜそうなってしまったのか、デモに出るなど強い言葉を言っている人の裏側にある“怒り”は何なのか。歴史を遡ってみるという視点も必要ではないか。

 デモに参加する人にも多様な意見があるはずだ。もしかしたら、その点についてはメディアも変わらないといけないところなのかもしれない。特に“暴力が伴わないデモ”は、民主主義社会で許されたある種の表現だ。『単純化できない複雑な問題があるのだ』と常に肝に命じて、ニュースを伝える側もあるいはニュースを見る側も“複雑性”を複雑なままに見ていくことも大事だと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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