これまで最長35年が相場だった住宅ローンに、いま長期型の「50年ローン」が増えつつある。
全国の地方銀行や信用金庫をはじめ、大手ネット銀行、住信SBIネット銀行も取り扱いを始めた。
住信SBIネット銀行の中村朋子氏は「想定している以上の申し込みがある」と語る。借入希望期間は、40年程度が約60%で、46〜50年が約30%にのぼるという。同行では、完済時の年齢を「満80歳未満」に設定しているため、対象は30歳以下となる。
「50年ローンのメリットは、毎月の返済金額を抑えることができる。月々の支払額が抑えられている分、ご自分のライフプランに応じて、利息の分を繰り上げ返済でリスクカバーするということもできる商品になります」(住信SBIネット銀行・中村氏)
国土交通省の調査によると、戸建て住宅購入資金の全国平均は4214万円、自己資金は平均1160万円。差額の約3000万円をローンとして借り入れるのが一般的になっている。一方で30歳の平均年収は413万円(金融庁2022年)で、月々にすると約34万円となる。
住信SBIネット銀行の「フラット50」で3000万円を借りた場合、月額返済額は約8.9万円、返済総額は約5364万円(金利2.65%、ボーナス払い・繰越返済などは除外)。50年にわたって、毎月約9万円を支払い続けることになる。
50年ローンはアリか、ナシか。街の声を聞いてみると、慎重な意見が多かった。
「35年がギリギリ。20歳で50年組んだら70歳」(50代男性)
「80歳はキツい。子どもとかにローン残すのは嫌だ」(20代男性)
「戸建てとかだと『50年本当に住めるのか』と言われたら、そういうわけでもない」(30代女性)
「年金で返すのかと思うと、ちょっと長いんじゃないか。退職金を残しておかないと」(30代男性)
長年ローン特集を組んできた、元週刊SPA!副編集長の田辺健二氏によると、「ローンを組んでいるサラリーマンは、爪に火をともすくらい大変」だという。いかに出費を少なくするかを考えている読者が多く、「この生活を今後50年も続けるのかと思うと、ちょっと悲しい気持ちになりますよね」と語った。
悲観的な反応も多い50年ローンだが、経済評論家の佐藤治彦氏は「助け船ローン」だと表現する。佐藤氏の説明によると、3000万円を変動金利で借りた場合、35年ローン(金利0.32%)の返済額は月約7.5万円で、総額約3171万円となるが、50年ローン(金利0.47%)では月約5.6万円で、総額3366万円。月々10万円程度のローンを返済している人であれば、6000万円前後まで借りられるようになる。
このところ、不動産価格が高騰している。首都圏の新築分譲マンション価格は、バブル期だった1990年の6123万円を超え、2022年には6288万円へ達した(不動産経済研究所調べ)。こうした事情を背景に「普通の人でも借りやすくする。銀行は住宅ローンを貸したいが、今までのスキームだと貸せない客が増えた。貸せる範囲を増やそうというのが銀行の思惑だ」と佐藤氏は予測している。
「助け船」と言う理由には、金利のトレンドの変化もある。昭和から平成前半にかけては「長期固定」がメインだったが、平成後半から令和は「変動金利」がほとんどだった。現在、35年固定金利の「フラット35」は1.88%だが、変動金利では0.3%程度と、6倍近くの開きがある。
アベノミクスによるマイナス金利政策で、変動金利が変わらない時代が長く、「上がった経験がある人が住宅を買っていない」。一方で、長期の金利に連動する固定金利は、ジワジワと上がっている。今後、金利上昇する可能性も考えると、「長期固定も非常に低いところにある」と佐藤氏は解説した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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