色の見え方を調べる色覚検査を「全員必須にすべき」と訴える市議会議員の投稿が話題だ。
「『差別を助長する』などという理由で健康診断の必須項目から削除された色覚検査の復活を切に望む。検査がなくなり、自己の特性を知る機会も奪われ、有形無形の不利益を被っていることが日本眼科医会の調べで判明しています。色覚特性は個性そのもの。色覚特性を持つ者からすれば、『差別を助長する』とはナンセンスです。“多様性”が聞いてあきれます」
300件以上のコメント(10月13日現在)が寄せられた色覚検査の必須化を訴えるSNSへの投稿。広島市議会の椋木太一議員は「児童・生徒はもとより、子育て世代も自身が検査を受けていない時代になり、お子さんが抱える違和感などに気づきにくい状況を多々目にした。子どもたちを守るために早い段階で色覚特性を把握して自身もそして周りも守れるような環境にすべき」と投稿の思いを語った。
2002年まで小学校4年生全員を対象に行われていた色覚検査。しかし、「人とは違う見え方をすることが明らかになるといじめや差別につながる恐れがある」という声が上がり必須項目ではなくなったという経緯がある。
椋木議員自身、小学生のときの検査によって暖色系の色の識別が困難であることが発覚。普段の生活で不便な状況に直面する一方で感じたのが色覚検査の重要性だった。
「当時、医学部などは強度の色覚異常があると受験できなかった。つまり、色覚を考慮しながら進路を考えることができたので、夢を目指して努力を続ける途中でいきなり扉を閉じられるようなことはなかった。職業制限の是非はもちろんあり、また当時と今では制限の状況も異なるが、子どもたちにそういう思いはさせたくない」
色覚検査が必須項目から削除されて以降、様々な問題が報告され、文部科学省は2014年、児童生徒や保護者の同意を得て個別に検査するなど、適切な検査体制を整備すること、また教職員が色覚異常に関する正確な知識を持ち配慮をもった指導を行うことなどを全国の教育委員会に通知した。
しかし、全員が検査を受けないままでは、自分の特性を見落としたまま過ごす子どもがいる現状は変わらないと、椋木議員は危惧している。また、教育現場においては、色覚検査が「人の特性について学ぶ機会」になるのではないかと話す。
「色覚は特性なので身長や体型に準じたものだ。『赤が少し淡く見える』といった特性を隠すという発想そのものが差別だ」
色覚異常は男子の20人に1人、女子の500人に1人と言われており、日本眼科医会の調査では、色覚に異常を持つ生徒のおよそ半数は検査を受けるまで自覚がないという。
『ABEMAヒルズ』に出演したノンフィクションライターの石戸諭氏は「今回の投稿で多くの人が関心をもったこと自体は良かった。また、『昔はこうだったが今は違う』というように、過去の常識がアップデートされるのはいいことであり、これを機に最新の状況を人々が知ってくれたらいい」と述べた。
「もし学校で全員検査を実施するならばどういった点に留意すべきか」という問いに石戸氏は「検査・知見は常にアップデートされていく。さしあたり、検査をするのならば現在の知見にアップデートした上で検査を進めていくべき。一人ひとり見え方が違うため、どのような困り事が生じるかは予測できない。そのため、学校でも問題が発生したら一つひとつ対処していく。これに尽きる」と述べた。
さらに、「学校の検査を復活させるべきか」という問いには、「色の見え方は人によって異なり、正常と異常の境界線はないグラデーションであると理解することが重要」「『困っている人を見つける』など検査の目的を明確にするべき」とした上で、「この検査をどうしてもやらなければならない理由がどこまであるのかはもう少し考えなければならない」との見解を示した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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