パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が、イスラエルを突如として攻撃。これまでに双方合わせ2400人以上の犠牲者が出ている。各メディアは各国の動きを伝えるとともに、戦闘や戦禍に巻き込まれた住民たちの様子も取材しているが、一方で問題を指摘されているのがSNS。次々と流れてくる投稿には、無惨な遺体や暴力行為の映像・画像がそのまま載せられている。
さらに問題視されているのが、フェイク動画。パレスチナの兵士がイスラエルのヘリコプターを撃墜したとする映像はのちにゲーム画面、ハマスに誘拐されたイスラエルの子どもたちが閉じ込められていると紹介された映像は以前シリアで撮影されたもの、との指摘があった。EUの欧州委員は暴力的なコンテンツやフェイク情報について、旧ツイッター「X」のイーロン・マスク氏に迅速な対応を講じるように求めている。
錯綜する情報の中、SNSの生々しい映像を私たちはどう受け止めればいいのか。また、フェイクを見抜くにはどうすればいいのか。12日の『ABEMA Prime』で専門家に聞いた。
■戦闘が起こった“3つのポイント”
東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は、イスラエルとハマスをめぐる情勢について次のように説明する。
「元々パレスチナ人が住んでいた地区に、第2次大戦後、故郷を持たないユダヤ人の国を作ろうということでイスラエルが建国された。その直後からの、土地を取り返そうとするパレスチナと対抗するイスラエルの動きが、第1次中東戦争と言われるものだ。それから4度にわたる戦争をやってきた。イスラエルとしては、何度ものテロ行為によって治安を脅かしてきたと、ガザ地区に壁を作って人々を封じ込め、種子島ぐらいのサイズの所に200万人もの人がいる。そして、食料や電気、水などもすべてイスラエルがコントロールしている状態の中で、不満を持っている人たちが武装化して組織したのがハマス。要するに、自分たちを解放するための組織なので、イスラエルを攻撃するのが彼らの目的だ」
戦闘が起こったポイントとして、「イスラエルとアラブ諸国の関係強化」「イスラエル国内の混乱」をあげるとともに、今回の攻撃はイスラエルにとって想定外だったと指摘する。
「ハマスは、ガザ地区を統治する政治部門と、アル・カッサム旅団という軍事部門に分かれている。今まではイスラエルの情報機関のモサドなどがハマスの中に入り込んで情報を取っていて、事前に攻撃を把握していた。今回、政治部門を排除して軍事部門だけで動いたので、イスラエルは十分な情報が取れなかった」
閉鎖的な地区であるガザで、武器はどのように手に入れているのか。「基本的に支援してきたのはイランだ。また、資金的にはカタールから入っているという話もあって、外部からの支援を受けていることは間違いない。さらに、ガザはミサイルを作るような技術をイランから受け取っていて、地区の中に兵器工場などもある。ただ、イランが軍事将校を送って、今回のことを計画させたというのはガセではないか。支援以上の関与はしていないと思う」との見方を示す。
事態はどう収束に向かうのか。「武器の質からしても、軍隊の能力からしても、イスラエルのほうが圧倒的だ。しかし、ガザを占領できるかというと、今まで何度もやろうとしたものの、住民の反発を受けてコントロールできないという状態が続いてきた。結局、ガザはそのまま、とにかく壁で覆って出てこないようにするのが一番安心できる方法だった面もある」と述べた。
■「意図的な情報に踊らされないことが重要」
Xの安全担当アカウントは、「現在起きている事態のように、時にコンテンツを見ることが難しいことを理解」とし、センシティブなメディアの表示・非表示設定を行うことを推奨している。鈴木氏は「過激なものであれば、一応フィルターをして、見たい人だけ見られるようにするやり方はある。選択できる状況を作ることが大事だ」と指摘。
また、そうした映像やニュースを目にした時、「意図的に貶めたり、“相手が悪い。自分たちは正しい”というふうに見せたい人たちが使っている場合もある。それぞれの立場を強めるツールとして、見ている我々がどちらかに肩入れするように誘発することを狙っているわけだ。それで国際世論を喚起したり、今回はハマスが悪いということを決めつけたりということに踊らされないことが重要。もう1つ、“真実から目を背けちゃいけない”と言うが、実は世の中には真実がいっぱいある。ただ、それを全部知ることは無理なので、知るための能動的なアクションを大事にしないといけない」と促す。
その上で、「重要なポイントはちゃんと信頼できるソースかどうか。テレビ局もそうだが、いろんなフィルターをかけて、正しいかどうかを検証しているものを見ることが大事だ。匿名で発信できる時代になって、“この人は正しい情報を出している”と判断できるのであれば、ある程度信じてもいいと思う。ただ、何人かの目を経て出されている情報のほうがらやはり信頼できる可能性が高いので、そうしたものを見つけてもらいたい」とした。(『ABEMA Prime』より)
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