計量オーバーの相手に対して、顔面へのヒザ、左フック、サッカーボールキックの鬼コンボで衝撃KO。ベテランファイターの内に秘めた怒りが爆発した劇的決着は、敗れた選手にドクターが駆け寄り、スタッフが取り囲む物々しい雰囲気に。陣営に支えられフラフラとリングを下りる姿にファンから「大丈夫か?」「結構重症だ」など心配の声が寄せられた。
10月21日に後楽園ホールで開催された「Krush.154」。山本直樹(K-1ジム五反田チームキングス)と松本和樹(T-GYM)の対戦は、2ラウンド山本が強烈なヒザを松本の顔面に叩き込んでKO勝ち。松本の1.75キロ体重超過というハンデ戦で、1ラウンドにダウンを奪われるも、静かな闘志をたぎらせて見事な逆転劇で相手をねじ伏せた。
前日計量で1.75キロと大幅な体重超過で試合に臨んだ松本。減点2とグローブハンデでのペナルティを課されての試合となったが、この状況に対して静かな怒りを試合にぶつけたのがこの試合が28戦目となるベテラン・山本だった。
序盤、松本が強い左ローを軸に左ストレートで一気呵成に攻め、開始わずか1分で山本からダウンを奪う。その後も松本が攻めに攻め、山本が守勢に回るやや苦しい展開のままラウンドを終える。
「さすがに1.75キロの体重差は厳しいのでは?」と山本の劣勢に不安の声も上がる中で迎えた2ラウンド、山本が驚異的な巻き返しを図っていく。
ローキックを貰いながらも距離を縮める山本は、左ジャブや飛びヒザ、さらにボディを追撃し徐々に相手の体力を削って行く。さらに山本は頭をつけジワジワとボディや左フックを重ね、松本の頭が下がり後退したところで、相手の額へ向けて右の飛びヒザをひと刺し。
追撃の左フックも貰った松本は頭を抱えながら悶絶してダウン。額からは出血も見られ、ダメージがジワジワと体を巡り大の字になってマットに沈んだ。
1ラウンドのダウンから見事な逆転KOを飾った山本に対して、敗れた松本は倒れたまま動けず。何人ものドクターやメディカル・スタッフが駆け寄り、取り囲む物々しい雰囲気に視聴者も「どうしたどうした?」「立てないのか」とざわつきはじめた。運営によると、気になる額の傷はおよそ8センチ。危険な状態ではないものの、仮にカットによる出血が見られなくとも、スタミナ切れとダメージであそこからの再逆転はなかったのでは、ということでのストップだった。
スローリプレイでは山本が頭を下げた相手の顔面へヒザ、そして左と振り抜いたあとにさらにサッカーボールキックのような右の蹴りまで叩き込む鬼コンボ。まさに鬼の形相での快勝劇。
立ち上がった松本は、頭を大きなタオルで覆いながら足元がフラフラのままリングを後にした。体重超過でこの試合では完全にヒールとなってしまったものの「大丈夫か?」「結構重症だな」「担架を投入した方がいい」と心配の声が寄せられるほどの様子だった。
一方、勝利者マイクで山本は「(松本選手が)計量オーバーしたということで、そういう選手が絶対に上に行ってはいけないと思って気持ちで潰しました」と内に秘めた怒りと本音を激白。「皆さんの温かい応援があるおかげなので力になっています。自分はチャンピオンになるために日々がんばっていますので、これからも暖かい応援をしてもらえたらと思います」と冷静に続けつつも、この試合まで3連勝と勢いに乗る若手にプロとしての厳しさを身をもって示してみせた。