厚労省が発表した新卒就職者の3年以内“離職率”。この中で注目したいのが、大卒に次いで離職率が低かった高卒就職者だ。実は今年の高卒の求人倍率は3.52倍と過去最高を記録。少子高齢化の中で、早めに人材を確保しておきたい企業の思惑もあり、求人倍率は年々上昇している。
しかし、高校生の就活には多くの壁が存在する。生徒が最初に応募できる企業を1社に限定する1人1社制など、行政・学校・経済団体の三者協定により、高校生が自主的に会社を選ぶことが難しい状況だ。こうしたルールは、高度成長期の頃から根付いており“悪しき慣習”と言われることもある。
かつて引く手あまただった高卒就職者は、再び“金の卵”になれるのか。『ABEMA Prime』で議論した。
高校生の求人倍率について、高卒での就活をサポートする株式会社ジンジブ代表取締役の佐々木満秀氏は「若手の人材獲得こそが企業の命運を握っていると言っても過言ではない時代に入ってきているので、高校生にもスポットが当たっている」と説明。
高卒入社1年目、医療系総合商社で働くいっちゃんさんは「早めに就職することで、知識や経験を社会で知れるのが一番だ」とそのメリットを語る。
一方で、高卒入社8年目、自動車ライン工として働くruekaさんは、高卒入社を後悔しているという。現在、転職活動中だそうで、「高卒というだけで選択肢が狭まってしまう。その他にも仕事内容として、ライン工だとスキルがない。書類選考で落ちてしまうこともある」と話す。
タレントのパックンが「求人倍率が高騰している中で、ruekaさんと同じように、スキル面で転職先がなかなか見つからない割合はどれくらいだと思うか」と聞くと、佐々木満秀氏は「現状は多いと思う。ただ、それは大卒、高卒ということだけではない。中途採用では経験値が求められるので、その会社が募集する職種に対する経験値の部分で通らないということがあると見ている」と答えた。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「高卒か大卒かというのは、能力の違いではなくて、ある意味社会の構造だ。例えば、起業家は高卒が多かったり、大学を中退していたりする。地頭が良ければ高卒でも構わないよね、というのが基本的にスタートアップの世界だ。“大卒が優遇される”という社会の偏見がなくなれば、早く就職して知識を積んでいったほうが有利だという流れは起こるだろう」と自身の考えを述べた。
また、「例えばYouTubeで、大学の授業を見られるわけで、やろうと思えばいくらでも学ぶことができる。そういうところで知識を増やして、“大卒と同レベル”だと勝負していくことは可能になっている」と付け加えた。
これにパックンは「ruekaさんは実際に転職に困っているし、大卒でないとやらせてもらえない仕事もいっぱいあるのではないか。やりたい仕事が見つからない、もしくは転職できない、発展できない、昇進できないといったデメリットは、偏見や差別によるものかもしれない。でも、それも実害として起こっていることだ」と疑問を呈する。
テレビ朝日の田中萌アナウンサーは自身の経験から、「アナウンサーになりたいと思った時、『大卒』という条件があった。もちろん高校のみんなが大学に行っていた環境もあるけれど、“大卒じゃないと受けられない企業もあるんだ”“選択肢を広げたほうがいいのではないか”と当時考えた」とコメント。
佐々木満秀氏は、「経験値が得られないというデメリットはある。僕も高卒なので、大学生活を味わっていないという寂しい思いは今でもしている。ただ、高卒は出世しにくい、給料・生涯賃金が安いといった部分は、時代が大きく変わっていっていると感じている。成果によって給料を決めていく流れができてきているし、学歴=出世という評価制度や報酬体系はかなり変わりつつある。これからはそういったデメリットは薄くなると思う」との見方を示す。
さらに、今後の取り組みとして、「有名なIT企業や今をときめくベンチャー企業に、インターンやアルバイトみたいな形でも1年勤めていれば、転職は結構しやすくなる。ITがやりたいかどうかは別だが、自分自身のやりたいことを経験しながら転職につなげていく。まだ実現できていないが、我々の求人サイトに掲載していただいている企業様にも受け入れをお願いしながら、そういう道を作りたいと思っている」とした。(『ABEMA Prime』より)
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