こめかみに付近に叩き込む凶暴なバックヒジでのカウンター直後に飛び出した戦慄の右のオーバーハンド。首が“ぐにゃり”と捻じれ、勢いよくコーナーに衝突。最後はロープに頭を載せるようにして失神という衝撃KO。1ラウンド2分59秒、終了と同時に相手を仕留める鮮やかなKO劇に「ブザービーターだ!」と驚きの声が上がった。
10月27日にタイ・バンコクで開催されたONE Championship「ONE Friday Fights 38」。メインイベントでエリアス・ムサエフ(ロシア)とオトップ・オー・クワンムアン(タイ)が対戦。試合は1ラウンド終了のゴングとほぼ同時の"ブザービート葬"でムサエフが勝利を飾った。
2月にKO勝利スタートを飾ったムサエフだが、その後はタイ人の強豪相手に3連敗と泥沼状態。今回の相手もタイからの刺客、17歳のオトップ。前回のONEデビュー戦で柴田真吾に何もさせず59秒TKO勝利を収めてからの2戦目となる有望株だ。
試合開始とともに、蹴りをキャッチしては蹴り返す見応えある攻防。右ローを飛ばしながら距離をはかるムサエフが、クロスぎみに右アッパーを当てる。さらに左ロー、ミドルと蹴りを見せてから右のボディを突き刺すなど、ムサエフの多彩な攻撃が目立つ。
一方のオトップもタイ人特有のスロースタートだと"飲み込まれる"と危機感を感じたか二段蹴り、前に来る相手に右を連打で効かせ反撃。振りかぶりの右などパンチのバリエーションも見せた。
やや強引に来たオトップに対し、若干押され気味だったムサエフ。しかし、この日は連敗中の気負いはなく冷静だった。相手の右ミドル、縦ヒジに合わせるように回転して"バックブロー"ならぬ「バックエルボー」をカウンター気味に相手のこめかみ付近に叩き込む。これにオトップはたまらず腰から落ちてダウン。かなり効いたかオトップの目の焦点は定まらず、右の目尻はバックエルボーで切れ鮮血が滴り落ちている。
試合再開後、ムサエフはじっくり獲物を狙うようにプレッシャーをかけ刺すような右ストレートを連打。その後も左右のパンチ、ボディと打ち込みとどめはフルスイングのオーバーハンドの右フック。ハンマーのような一撃に屈強なタイ人ファイターもその場に崩れ天を仰いだ。
1ラウンド2分59秒、ABEMA解説・後藤丈治は「ブザービートじゃないですか」と快心のコメントを発すると「ブザービーターだ!」「気持ちい~!」と実況も素のリアクションで興奮。ファンも「最後の最後で倒した」「最後まで冷静だった」「仕留めきった」と続いた納得の勝利は「このラウンドで終わらせる」という決意と殺意に満ちたムサエフの会心の勝利。最後のひと振りは、相手の首が45度にひん曲がる程の衝撃の一撃だった。