家に入れず…母と突然の別れ 死後に必要な備えは? サブスクなどの“デジタル遺品”への対策も
【映像】死後に必要な手続き 30以上?
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 亡くなる直前までファンのためにステージに立っていた、BUCK-TICK・ボーカルの櫻井敦司さん。突然の訃報に多くのファンや友人、関係者から驚きと戸惑い、悲しみの声があがった。

【映像】死後に必要な手続き 30以上?

 もし病気や事故で突然家族が亡くなってしまったら――。改めてそんな事態を考えた人もいるのではないか。家族が亡くなった場合、死亡届や葬儀などの他、預貯金の口座や資産、生命保険の把握など、多くの手続きや処理が必要となる。さらに近年では、スマホやPCのロック解除、SNS、サブスクなど、インターネットサービスの処理が問題となっている。

 このデジタル時代で亡くなった後にすべきこと、亡くなる前にしておくこととは。『ABEMA Prime』で当事者とともに考えた。

■家に入れず…母と突然の別れ 困惑の最中求められる手続き

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 去年、脳出血で62歳の母親を亡くしたSeikaさん。当時の状況について、次のように振り返る。

「朝、兄が母に連絡し、折り返しがないことが今までなかったので、夜になって『見に行ってくれないか?』と。車で15分ぐらいの距離だったのですぐ行ったら、母の車はあるし、電気がついている。でも鍵が開かない。家の中で携帯は鳴っている。どうしたらいいんだろう?と鍵の業者に電話をしたら、警察を呼んでくれということだった。到着した警察と消防からは『窓が開いているので侵入できます。してもいいですか?』と言われ、お願いしますと。外で待っていることしかできず、『中で発見』という無線を聞きながら、警察の方に中で倒れていると伝えられた。訳がわからなかった」

 混乱の最中、事件性がないことが確認されると、葬儀業者を探してほしいと警察から言われたという。

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「警察署に安置されていた遺体をどこに持っていくかと警察の方に聞かれたが、『わからない』と返した。私の家から近い場所を何社か教えていただいたので、一番近い所に持っていき、そこでやっと母と対面できた。そこからは、『葬式はどうするか?』『どういう形でやるか?』『希望はあるか?』と。無知で恥ずかしいが、『何もわからないので一から教えてほしい』と相談させてもらった。葬儀にもいろんな形があったのだが、火葬のみの直葬をあげた。私の知り合いではない人に連絡して、『母が亡くなった』というやり取りを繰り返すのはつらかったので、親族だけで行った」

 そこで問題になるのが、スマホやネット上に残された情報の確認・整理。Seikaさんは運良くスマホのロックを解除できたそうだ。

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「母とは頻繁に会うなど距離感が近かったので、これかな?というパスワードが当たった。携帯の中のメモに、サブスクやメールアドレス、ログインのアイパス(IDとパスワード)が一覧で書いてあった。母も忘れやすいからとメモしていたのだろうが、それがなければ全くわからなかった。ただ、年契約のサービスの請求書が半年後ぐらいに来たので、やはり気づいた範囲でしかできていない」

■デジタル遺品相続のポイント

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 契約者死亡時のネットサービスの扱いについて、終活弁護士の伊勢田篤史氏は「契約次第だ」と説明する。

「サブスクリプションサービスには利用規約があるが、死亡時のことは大体書いていない。基本的にサービス提供者側は亡くなったことがわからないので、支払いがされていないことで請求をし、そこで『亡くなっている』と言われて知る。遡って返金することもあるし、『年間契約なので1年分は払ってくれ』となる可能性もある」

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 パスワードがわからず、解約手続きを進められない場合はどうすればいいのか。

「スマホが特に問題になる。ロックを解除するサービスを行っている専門家もいるので、そういうところに持っていく1つの手だ。ただ、20~30万円かかることもあるし、最新の機種だと半年、下手すると1年程度かかってしまうこともあるようだ。サービス会社に聞いたところ、費用も高いし時間もかかるので、過半数が諦めるということだ」

 デジタル遺品相続のポイントとして、伊勢田氏は、契約サービスとパスワードの共有をあげる。財布や通帳などは家族が見つけやすい所に残し、パスワードは家族が覚えやすいものにすることを勧めている。

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「金融機関のものについては、いくら入っているかを教えたくないという方が多い。『今書いても金額は変わる』とも言われるが、どこの銀行にあるとか、どこの証券会社にあるという情報だけで構わない。そういうものをエンディングノート等に残す。もしくは、名刺サイズの紙に書いておいて、財布や通帳に挟んでおく。若い方であれば、スマホのパスワードロックだ。写真や連絡先が全て入っているので、それさえ開けば遺影に使う写真も探してもらえる」

 さらに、そうした準備は実家を離れて独り立ちした時や、結婚、子どもができた時など、節目で考えることを勧めた。

■デジタル遺言制度導入に向けた検討を開始

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 政府の研究会は今月、デジタル遺言制度の導入に向けた検討を開始した。現在の自筆遺言は「全文自筆」「押印」「紙で保管」をするところ、デジタル遺言では「ネット上で顔写真撮影などと組み合わせて作成」「電子署名など」「クラウド上などに保存し、ブロックチェーン技術で改ざん防止」などができるようにする。

 伊勢田氏は「遺言は自分で書くか、公証役場に行って作るのが一般的だが、すごく面倒くさい。デジタルにすることで、取り組みやすくなると思う」との見方を示す。

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 また、家族がいない・頼めない人のための「死後事務委任契約」もある。これは知人や弁護士など第三者に、家族の代わりに死後の手続き等を行ってもらうための契約だ。

 伊勢田氏は「例えば、葬儀や官公庁などとのやり取りを全て任せるものだ。ただ、亡くなった時のことを考えて、そういったものを全部整理できる方はなかなか少ないのではないか。それでも、考えておかなければならないものにはなるのと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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