日本は盗難車天国? 車体を“切断”し海外へ持っていく例も 「対策をしていない車は窃盗団に合鍵を渡しているような状態」
【映像】“真っ二つ”に解体された車
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 「新しく購入したばかりのアルファードが駐車場にないんですが、、どういうこと?」。ダレノガレ明美がXで報告し話題となった犯罪被害。警察庁の集計によると、2022年度に起きた自動車の盗難は5734件。1日15台の割合で盗まれている計算になり、警察も防犯と取り締まりに力を入れている。

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 埼玉県警などは27日、さいたま市にあるヤードと呼ばれる自動車の保管・解体の施設5カ所を立ち入り調査した。実は一部のヤードが盗難自動車の保管や海外移送の拠点となるなど、犯罪の温床として問題になっているからだ。

 その手口はどのようなものなのか。海外へはどのようなルートで運ばれるのか。必要な対策も含め、『ABEMA Prime』で専門家に聞いた。

■日本は「盗難車天国」? 巧妙化する手口とは

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 日本は「盗難車天国」とも言われる。理由は、防犯対策が甘いこと、日本車は海外で人気があること、半数以上は検挙されないこと(2022年全国平均の検挙率は45.6%)、検挙されても量刑が軽いことがある。

 盗まれる車の年式は、2012年以前が45.6%で最も多く、2018年以降の最新式も34.3%と多い。盗難車種で多いのは「ランドクルーザー」(16.9%)で、次いで「プリウス」(10.6%)、「アルファード」(6.9%)、「レクサスLX」(5.9%)など幅広いが、どのような手口があるのか。吉田氏は「CANインベーダー」「リレーアタック」について、次のように説明する。

・CANインベーダー

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 「配線が多いと重くなってしまうので、今の車は電源と通信線だけを使って軽量化している。例えばヘッドライトはハイビーム、ロービーム、ウインカーを出したりするが、その制御を『CAN』という2本の線と電源だけで行っている。受信側のコンピューターがヘッドライトの下にあり、そのCANの線に繋いでドアロックを開けたり、エンジンをかけたりする。パソコンのLANケーブルと一緒で、どこでつないでも同じことをやれる線がある。その機械がロシアなどで作られ、日本の犯罪組織が輸入して、それをまた窃盗団に倍以上で売る、ということをやっている。やり方さえわかれば15分ほどで誰でも出来てしまう」

・リレーアタック

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 「純正の鍵(スマートキー)の電波を拾って飛ばすことで、車の近くに鍵があると思わせる。この拾った電波を飛ばせる範囲が広く、10分ぐらい走ったところでもいける。ただ、最初に家から受信するアンテナは1~2メートル程度しか届かないので、玄関に置いてある鍵は危ない。電波が出ない缶に入れて対策する方法などがある」

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 吉田氏によると、「窃盗団はどちらかというと力技は得意だが、電気系統は少し苦手な印象がある。なのでカーセキュリティを後付けして配線をカットしたり、コンピューターでエンジンがかからないようにロックするイモビライザーをつけることも多い」という。

 ただ、この「イモビライザー」は純正品だけだと注意が必要だそうで、「ヨーロッパのほうで解読され、すぐ対策品が出てしまう。純正はどの車も同じものがついているので、1台突破されると全て盗れてしまうわけだ。つまり、対策をしていない車は窃盗団に合鍵を渡しているような状態。ほとんどの方が盗まれる可能性があり、盗まれていない車はたまたま被害にあっていないだけだ」と述べた。

■車体を“切断”し海外へ…愛車を守る方法は

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 盗難車は、ナンバープレートを変更し国内で犯罪に使用されるほか、そのまま海外に運ばれる。さらに、解体されパーツとして海外に渡る事例もあるが、車体を「切断」して持っていくこともあるという。

 吉田氏は「海外に行くものは、プラドやハイエースぐらいまでであれば、2、3分割に切ってしまう。前は前、エンジンはエンジン、後ろは後ろで別のコンテナに入っていたりして、それを海外のヤードに置く。もうどれがどれかわからないので、おそらく同じ車はくっつかない。切る場所はあらかじめ、くっつけやすいところが決められている。こうした切られる車は業務用、例えば乗り合いバスに使われるハイエースなどがそうで、レクサスといった高級車は切らない。横に別の車をスライスしたようなボディを重ねてバレないように、なるべくきれいな状態で持っていく」と話す。

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 切ることで“パーツ扱い”になるなどの理由があるそうで、「業務用の車なんかは安く買いたい。新車で持って行くと200%の関税が取られるような国もあり、500万円のハイエースが1500万円に、ということを避けるために切って持っていく。あとは中古で、4年目に持っていくと関税が100%になるなど、いろいろルールがある」とした。

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 では、窃盗を防ぐためにハンドルロックやタイヤロックといったアナログな対策は有効なのか。「ハンドル自体、頭をぶつけたりした時にけがをしないよう少し柔らかくなっている。なので、鉄のこでハンドルを切って曲げると、ロックが抜けたりする。最近の外しにくいものも、電動のサンダーなどで切ってしまう。タイヤロックも、重い車、ランクルとかになると、1周回ると外れてしまったりする。見える対策や、僕らでも“こうやって外せるんじゃないか”と思い浮かぶような対策は、彼らは突破してくる」と警鐘を鳴らした。

 とはいえ、物理的に見えるものは時間や手間がかかるのは間違いなく、GPSや後付けのセキュリティを付けるなど、複数の対策を合わせるのが重要だということだ。(『ABEMA Prime』より)

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