10月31日、日本大学アメリカンフットボール部員の薬物事件をめぐり、大学の対応を検証した第三者委員会が報告書をまとめ、会見した。一連の大学側の対応について報告書では、情報伝達の遅れや危機管理における知見の欠如を厳しく指摘している。悪質タックル問題、田中英寿元理事長らの背任事件など問題が相次ぐ中、去年、学内改革の旗振り役として就任した林真理子理事長。『ABEMAヒルズ』ではノンフィクションライターの石戸諭氏と共に、巨大組織改革の険しい道のりについて考えた。
第三者委員会の報告書について石戸氏は「指摘は概ね妥当だ。会見については第三者委員会の厳しい姿勢がピックアップされていたが、報告書では『ここが問題』と的確に指摘しており、改善点が明確になったという面において意味がある。ただし、日大が本当に改善できれば、という条件がつく」と評した。
90ページ以上にわたる報告書では「常識から乖離」「事実の矮小化」と対応の問題点を厳しく指摘。特に、澤田副学長が7月6日〜18日の12日間、部員から植物片を預かり、誰にも相談することなく保管していたことについて「日大の信用を著しく失墜させた最大の原因」との見解を示した。
この大学側の対応について石戸氏は「自首させるべきだったし、速かに公表するべきだった。巨大な組織にありがちなことだが、ワンマン経営者の周囲がイエスマンで固まってしまって自分たちにとって都合のいい論理で不祥事を隠す方向に向かってしまう。しかし一度疑われてしまったら最後だ。改革の道半ばであることに日大は無自覚だったのではないか」と指摘した。
さらに8月2日、林理事長が報道陣に対し、「“違法な薬物が見つかった”ということは一切ございません」と発言したことについて、報告書では、「明白な虚偽にならない範囲で事実をできる限り矮小化した回答。正しく事実を伝えようという姿勢に欠けていた」と批判。石戸氏は、「8月3日に警察による家宅捜索が入った時点で誰もが『昨日は無いと言っていたのに…』と疑いの眼差しを持ったはず。これでは『言葉のチョイスによって問題を小さく見せようとしていた』と指摘されても仕方がない」との見解を示した。
■「今トップを変えろ」とは思わない
林真理子氏は、日本大学の相次ぐ不祥事を受け、学内の改革を進めるために2022年7月理事長に就任した。これについて石戸氏は「不祥事を起こした組織の対応として考えてみたい。たとえば企業ならば改革にあたって、経営トップを外部招聘すること自体は悪手ではないが成功した事例を見ると相応の権限が与えられている。林理事長が改革を推進するためどの程度権限が与えられているのか、協力的な人材がどの程度周りにいたのか、理事長自身がどのくらいの本気度で組織改革に向き合っていたのかなど論点は多い。今のままだと『トップが変わっただけ』と言われかねない」としたうえで、今後の対応については「今の時点でトップだけを変えて問題が解決するとは思えない。ガバナンスを強化し、巨大組織を改革するために人事にも手をつける必要があるだろう。林理事長には相応のビジョンとリーダーシップが求められている」との見方を示した。
また、第三者委員会のが「学校の内部から本質的に変わっていく必要がある」という指摘ついては「内部から変えていくための人材を登用し、規律を強化する必要がある。そのためには林理事長という目玉人事がお飾りではなく、機能していることを示すべき。組織は大きくなればなるほど、一人が変わればいいという話ではない。組織再生の事例を見てみると、リーダーだけでなく、支えるスタッフも固め、改革チームに権限を持たせて、リーダーが打ち出したビジョンを具体化したとき初めて組織が変わる。『今まで通りのやり方を続けても仕方がない』と意識を改めない限り、最終的に学生が損をしてしまう」と今後の課題を示した。
(『ABEMAヒルズ』より)
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