世界初「鳥の言葉を証明」 注目の研究者に聞く、動物たちは何をしゃべってる? 「人間中心の先入観から脱却して世界を見直すべし」
【映像】鳥の鳴き声が「わかる」 鳥博士に密着
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「(Q.鳥の言葉がわかる?)わかる、わかる」

 シジュウカラを中心に日夜、鳥の言葉を研究し続ける動物言語学者で“小鳥博士”こと鈴木俊貴氏。これまでは喜びや怒りなど、主に感情表現として認識されてきた鳴き声だが、鈴木氏は独自の研究で、鳥が「意味のある言葉」を操り会話をしていることを発見。世界初の研究成果に注目が集まり、8月に出版された『動物たちは何をしゃべっているのか?』も大きな反響を呼んでいる。

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 これまでわかっている「シジュウカラ語」の単語は約20個に及び、取材中も「天敵のタカが出たことを『ヒヒヒ』って知らせ合って、みんな木の陰に隠れた」と話すなど、高度な専門性を持つ鈴木氏に、『ABEMA Prime』で話を聞いた。

■「鳥が言葉を話している」証明の方法

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 なぜこれまで科学的な証明が世界で行われてこなかったのか。鈴木氏は「意味を持った言葉を使うことができるのは人間だけ、と紀元前から考えられてきた。哲学者のアリストテレスは本の中で、“人間だけが言葉を使って善悪を表現できる”と書いている。ダーウィンや動物行動学者のコンラート・ローレンツも、動物の鳴き声は単なる感情で本能的なものだと決めつけていた。そういった流れの中でずっと見過ごされてきた分野だ。鳥は世界に1万1000種類ぐらいいる。僕は最初、シジュウカラはいろいろな声を出して面白いなというところから、調べていくうちにかなり人間の言葉との共通点があるんじゃないかなと。どういう実験をしたら証明できるだろう?と考えた」と説明。

 鳥が言葉を話すことを証明するため、(1)見せる、(2)聞かせる、(3)見間違えさせる、の3つの検証を行ったという。

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【(1)見せる:ヘビのレプリカを見せる】
「シジュウカラはいろいろな鳴き声を持っていて、一つひとつにどういう意味があるのか、どんな状況でどういう声を出すのかを調べないといけない。最初に見つけたのが『ジャージャー』という声。これはヘビを見つけた時にしか鳴かない声だが、警戒したらどんな時でも鳴くかもしれないわけだ。そこで『見せる』という実験を行った。ヘビのレプリカやいろんな動物の剥製を野生のシジュウカラに見せていき、ヘビを見た時にしか出さないかを確かめる。それをやるだけでも1、2年はかかるが、まずそれができた」

【(2)聞かせる:スピーカーで「ジャージャー」を流す】
「次に、『ジャージャー』という声がヘビという意味なのか、それともただの警戒しろという意味になっているのかを調べたい。そこで、録音した鳴き声をスピーカーから流して、他の鳥がどう反応するかを調べる。そうすると、ジャージャーと聞いた時にヘビを探すような行動をとることがわかった。例えば、地面を探したり、藪の中や茂みを探しに行ったり、木の穴をのぞいたりする。これはやはりヘビという意味だろうというところまではいけた」

【(3)見間違え「認知実験」:「ジャージャー」を聞かせながらヘビサイズの木の棒を動かす】

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「この2つまでだと、科学実験としては不十分。ヘビという単語なのか、それとも地面を見ろ、探せという単語になっているのかがまだわからない。そこで、「見間違い」を使った実験を行う。一昔前に流行った心霊写真、“顔に見える”と言われると目鼻口を想像してしまい、物影が顔に見えてしまったりするが、それは顔という音に意味がのっているから。リンゴと聞いた時に頭の中でイメージして絵を描けるのと同じだ。シジュウカラにもこれをやろうと思い、ジャージャーという音を聞かせながら木の枝をちょっと動かす。そうすると、木の枝をヘビと見間違えて確認してしまうことを見つけた。他の声を聞かせた時は見間違いは見られなかった。つまり、人が心霊写真を顔だと思ってびっくりしてしまうのと同じ状況だ」

■シジュウカラは組み合わせて文章も作る

 シジュウカラは単語を使い分けてコミュニケーションを取るだけではなく、組み合わせて文章も作るという。鈴木氏は「例えば、『ピーツピ(警戒して)+ヂヂヂヂ(集まれ)』だと、仲間は天敵のモズに警戒しながら鳴いている鳥に近づいてきて、近くにモズがいたらみんなで追い払う。これが逆だと伝わらなくて、スピーカーで『ヂヂヂヂ(集まれ)+ピーツピ(警戒して)』と聞かせても行動しない」と説明。

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 鳴き声でコミュニケーションをとるのは、見通しの悪い森の中では声による連携が必要なためだという。また、鳥は話す能力がかなり高いということも分かってきた。

「雛だけでなく、親鳥同士でも鳴き声を学習できる。シジュウカラがすごいのは、周りに住んでいるコガラやヤマガラ、メジロなど全然違う声の鳥の言葉も“こう鳴いたらタカが来ている”とわかること。秋と冬の間は他の種類と一緒に大きな群れを作って暮らす(混群)が、VTRでタカが出たシーンも、最初に気づいたエナガが鳴いたことでシジュウカラも逃げた」

 シジュウカラは日本のほぼ全域、世界にも生息しているが、地域によって異なる言語を話すのか。「まさにそうだ。僕は東京や京都にいたこともあるが、シジュウカラの方言は両方で違う。フランスにもたくさんいて“フランス語”もある」と述べた。

■動物と話せる未来は来る?

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 政府は科学技術白書で、「発話ができない人や動物等が言語表現を理解したり、自分の意志を言語にして表現することができるポータブル装置」の2031年の技術実現、2034年の社会的実現を目指している。

 それらが実現する未来について、鈴木氏は「街中を歩いていて、鳥が鳴いていると“蛇だ”“こっちに来て”と全部わかる。そういう世界があることに気づくのはとても大事だ。SDGsが言われる中で、実際に体験してこんなに豊かな世界があるんだと気づくことは全然違う。もう一度自然に目を向けて、人間が中心だという支配的な先入観から脱却して、自然保護などを新しい観点で見直す機会ができたらいいと思っている」と述べる。

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 では、動物と話せるようにもなるのか。「例えば、僕たちは必要だから『ペットボトル』という言葉で示すが、鳥がこれを同じように呼ぶ必要はない。全ての言葉を人間の言葉に翻訳することはできないし、逆に人間の言葉も鳥語に翻訳できない。動物が人間のように喋っていると思い込んで、間違った解釈をしてしまっている。コツコツと研究を進めていき、鳥たちがどう世界を見ているのか、どういうふうに言葉を使っているのかを、基礎研究や自然科学の点から研究していくことが大切だ」とした。(『ABEMA Prime』より)

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