タイ・バンコクのごく普通の一軒家に集まる警察官たち。違法に銃が製造されていたいわゆる密造工場だ。
この密造工場で改造された銃器は音が出ないように布が詰められた箱の中で試し撃ちがされていたと見られている。
警察が捜査を拡大している背景には10月3日、タイの首都バンコクのショッピングモールで7人が死傷した14歳の少年による銃乱射事件がある。国内に1000万丁の銃が流通しているという銃大国タイにおいて現地当局は違法に出回る銃の取り締まりを強めている。
事件の取材にあたったANNバンコク支局の藤富空記者にタイの実情を聞いた。
━━タイにおける、銃を所持するうえでのルールは?
銃所持には政府の許可証が必要。申請には20歳以上を示すIDカードの写しや警察署で受けられる銃の訓練合格証明書などの提出が求められる。
━━未成年も銃に触れられる環境なのか?
逮捕された少年は事件前に射撃場で銃を撃つ練習を行なっていたとみられる。射撃場はバンコクにおよそ20箇所あり、銃の持ち方など5分ほどレクチャーを受ければ初心者も撃てる所も。取材した射撃場では、これまで15歳以上の未成年も保護者同伴で利用可であったが、事件後は政府の決定に従い未成年は利用不可となった。
販売店については厳重に銃を管理する店がある一方、違法な銃の取引も横行している。現地警察によると、逮捕された14歳の少年はSNSを通じて改造されたモデルガンを購入。少年に銃器や銃弾を違法に販売した疑いで男3人が逮捕されている。
SNSで「違法な銃」と調べると銃を販売するアカウントが数多く出てきて、日本円で2〜4万円と正規価格より安価で販売されている。
━━バンコクでの銃乱射事件を受け、政府はどのような対策を行なったか?
事件後、セター首相は違法な銃の一掃作戦を警察に指示。3日間で銃2000丁以上や銃弾7万5000発以上を押収、約1600人を逮捕。さらに、違法に銃を取り扱っていたとみられる約300のSNSアカウントを閉鎖した。
また、政府は銃の輸入のためのライセンス登録の停止や、新たに銃の販売店を開くことを認めないなど、いち早く“短期的な措置”を発表。特に問題視しているのは出回っている内の4割を占める“違法な銃”。犯罪に使用される銃はほとんどが正式な手続きを経ない“違法な銃”のため、政府はこうした銃を取り締まることで犯罪を減らそうと考えている。
━タイ人にとって射撃場は身近なのか?
取材した射撃場はゴルフの練習場に併設しており、施設内にはカフェメニューもある。タイの方に話を聞くと、ストレス発散のアクティビティとされており、高校の修学旅行先のアクティビティの一つに射撃場もあったという人も。取材した施設では、銃弾50発と銃のレンタルを合わせて料金は約8400円だった。
一方で、銃の販売店や射撃場、そして街の人、誰に聞いても「銃規制は強化すべきだ」という意見が多かった。
━━バンコクの事件は海外でどのように捉えられているか?
今回、なぜ事件後1カ月で目に見える形で規制が進んでいるかというと、少なからず海外からの目があるとみられる。事件の犠牲者の1人は中国人観光客の女性だった。政府がコロナで落ち込んだ中国からの観光客を増やそうとしていた矢先の事件。「危険な国」というイメージからの脱却を目指しているのだ。
(ABEMA/倍速ニュース)