「生徒のスマホが怖い」指導中に盗撮&ライブ配信も...現職教員に聞く〝イマドキの学校事情〟
【映像】「家族との外食中」生徒に盗撮された教員の声
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 ブラックすぎる仕事環境に、なり手不足など、多くの問題を抱える教員。そんな教員が今怯えているのが生徒による盗撮。
 
【映像】「家族との外食中」生徒に盗撮された教員の声
 
 『ABEMA Prime』では、中学校教師の中村氏(仮名)を招き、当事者の意見から校内でのスマホトラブルの実態やその対策に迫った。
 
■保護者から「そういう時代なんだから全部考慮して指導しろ」

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 中村氏(仮名)の同僚が経験したのは、生徒による隠し撮りでのライブ配信。トラブルを起こした生徒4名を指導中、生徒の一人が隠し持っていたスマホを使い、指導の様子をインスタグラムでライブ配信していたのだ。
 「放課後、商業施設から『お宅の生徒数名がトラブルを起こしたので迎えに来てくれないか』と学校に電話が来た。職員が迎えに行って連れて帰り、ある一室で指導しているところを、生徒の一人がライブ配信していた。その後、別の生徒の保護者から『盗撮されているのになぜ気づかないのか。そういう時代なんだから全部考慮して指導しろ』というクレームが来て、初めて気づいた」と中村氏は盗撮被害の詳細を説明。
 先生たちは、配信を見ていたであろう生徒のスマホを一つずつ確認。映像を保存していた生徒にはその場で消させたという。

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 そもそも学校での盗撮は犯罪にあたるのか。服部啓法律事務所の深澤諭史弁護士は、「盗撮のうち特に性的なものだけは盗撮罪に当てはまるが、それ以外の場合は明確な基準はない」との見解を示す。例えば、更衣室で裸や下着を盗撮した場合は盗撮罪にあたるが、教員や生徒の顔、服を着ている姿を盗撮しても犯罪にはあたらない可能性が高い。ただ、非常にしつこかったり悪質な撮影であれば違法行為となり、業務妨害罪や名誉毀損罪などに問われる可能性もあるとしている。
 教育社会学が専門の名古屋大学大学院教授・内田良氏は、教員が置かれる立場について「商業施設で子どもが何かトラブルを起こしたというのは、学校の管理下ではなく保護者の管轄だ。学校の帰り道だけではなく、土日、夏休みもトラブルが起こったらとりあえず学校に電話すればいいんだろうと、何でも屋さんになってしまっている。そして、子どもの人数に対して、教員が一人ひとりを丁寧に見ることを親から期待される。またクレームも受けなきゃいけないということで、質的にも精神的にも、教員の負担は非常に大きいと思う」と指摘する。
 子どもの盗撮を保護者に注意できないものなのか。中村氏は「学校の先生の立場が弱くなっている状態だ。親の言うことや地域の声に逆らえないので、言い返すのは難しい」と話した。
 
■必要なのはルール作り?教育? 教員の役割は

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 経済学者で慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏は「私は授業で『動画を撮るな』と注意し、それでも続けた生徒は全員追い出した。それで親が文句を言ってくることを期待したが、誰も言ってこなかった。アメリカなんかではいくつか問題を起こしたら義務教育でも退学させる制度もある。日本はそれができず、完全に先生の立場が弱くなっている。やはり厳しいルールを作って、3回反したら辞めてもらうとか別の学校に行かせられるようにすべきだ」と持論を述べた。
 内田氏は、ルール作りに関して「指導としては、教員が厳格に取り締まるということが必要。しかし、一概にスマホを禁止するのではなく、どう使うか生徒たちがルールを決めるというのは一つ方法としてありだと思う」と主張する。

 生徒によるスマホトラブルは他にも、教員の顔を切り抜きアイコラして拡散、生徒による教員なりすましDM、教員のSNSアカウントを探し出して拡散。生徒同士でも、LINEグループでの悪口、悪質な画像・動画を送りつける行為などがあるという。
 南和行弁護士は「デジタルツールや新しい通信技術が出てくるのは仕方なく、使いこなすことが社会で生きていく力だったり、より良いものを作っていく力になる。それを正規の教育で受け持てたらいいと思う」と提案。その上で、「生徒指導に専門の先生を配置したり、学級担任は科目を教えず担任に専念させられないのか」と投げかける。

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 これに内田氏は「まったく同じ意見だ。基本は授業が本務。それ以外のことはできるだけ専門家に委ねて正しいケアをしてもらうことが、加害者の子どもにとってもより適切なケアを受けられると思う。これまで教員が丸抱えして、素人ながらに無理やり指導をする、時には暴力で抑え込むことがあった。先生は極力、一線を超えるような厳しい指導には手を出さない、というほうがクリアだと思う」との見方を示した。
 教員の余裕を生み出すため、それこそ授業もネットの配信を活用し、現場の教員はクラスの管理に注力するといったことは考えられるのか。中村氏は「昨今、個別最適化学習が行われており、授業は動画で、現場にいる先生は生徒の質問に答えながら指導するといった学校も増えて来ている。すごくいい考えだと思う」と賛同する。
 内田氏は「学校では授業で、会社でいえば会議など、フォーマルなものはオンラインで代用できることがたくさんある。一方で、ちょっとした休み時間の会話などインフォーマルなコミュニケーションは対面でしか取れず、そこで悩みを相談できたりする。教員の役割は授業そのものよりも、授業の外側、あるいは授業をサポートするところにシフトしていかざるを得ないと思う」と見解を述べた。
(『ABEMA Prime』より)

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