カメラに煽り行為も…生配信中のスマホ2度目の窃盗 被害にあったホームレス配信者はどうやって暮らしている?
【映像】「助けて、泥棒」生配信中のスマホが盗まれた瞬間
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 10月、深夜の新宿駅近くで起きたスマートフォンの窃盗。インターネットの生配信中で、その一部始終が記録として残されていた。果たして盗まれたスマホは返ってきたのか。被害にあった藪さんのその後を取材したところ、衝撃の事実が判明した。

【映像】「助けて、泥棒」生配信中のスマホが盗まれた瞬間

「(スマートフォンは)まだ見つかっていないまま。リスナーさんが同じものを貸してくれた。それで日中配信してて、起きたときにお腹が痛く、スマホを置いて1~2分トイレに行った。(その間に)4人グループが来て配信のカメラに手を振ったり煽った後、カメラを隠して盗っていかれた」

 なんと、再びスマホを盗られたことを明かした藪さん…しかも、犯行の瞬間とみられる様子がまたもや配信されていたのだ。

 目が覚め、トイレへと向かった藪さん。するとその数分後、歩道に置かれた荷物を物色するように見る若者グループが現れる。配信しているスマホに手を振るなど、堂々とした様子だ。1人がスマホを覗き込み画面の外に出た次の瞬間、横から手が出てきたところで配信画面は止まった。

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「被害届けも出せて、『リスナーさんありがとう、被害届出せました』という配信をしていたら、当日の夜に警察から電話がかかってきて、『4人組が交番まで自首しに来ました。藪さんも今から署に来てください』という感じで今回(犯人が)見つかった」

 しかし、スマホは既に別の人物に売られてしまったため、戻ってこないと警察から告げられた。前回の取材では、ワイヤーをつなぐなど盗られないための対策をしていると話していた。

「(対策)していたが金具ごと持っていかれた。昼間に配信していたし完全に映っている。盗っているときも人が歩いている様子があったので、『そんなときでも関係ないんだな』とびっくりした」

 スマホを置いて離れるという無防備さが原因ではあるものの、藪さんの周囲ではスマホが窃盗される事件は他にも複数起きているという。

 自分の事例を伝えることで少しでも被害が減って欲しい。そう語る藪さんの生活を少しのぞいてみた。

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 毎週土曜日に都庁の下で「新宿ご飯プラス」という炊き出しがあり、支援団体が配布する食料を取りに行くという。

「私が来るときでも100人以上並んでいると思う。2時くらいになって500~600人と、ここは人が多い」

 食糧支援の情報はSNSなどで知ることができ、「スマホ1台あれば食べるものには困らない」と藪さんは話す。また、そのスマホでつながる、配信を見てくれている人々も心強い支援者となる。

「私の場合は配信していることもあって、夜になると『仕事帰りで一緒にご飯食べに行きませんか』という方もいる。昨日も『牛丼食べに行きませんか』という感じで食べに行った。配信を見ている人におごってもらえることが多い」

 藪さんは生活の様子や雑談を毎日配信し、それを楽しみに見て応援してくれる人たちから食料や衣服、寒い時期のための毛布など、様々な物資が届けられる。時には遠く離れた場所から、フードデリバリーを通して食事を奢ってくれることもあるという。

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「ここ(ビデオBOX)でシャワーが浴びられるので、誰かと会うときなどは基本的にここに入りに来ている。ちゃんと綺麗にしたいときには銭湯に行く」

 すぐ近くに公衆トイレがあるため、衣食住、特に困ることはないと藪さんは話す。路上生活を始めて約1年、どのような経緯でこの生活に至ったのだろうか。

「高校生時代に父親からDVを受けたことがあった。馬乗りになられて首を絞められた。そのときのトラウマというか、自分が家にいるときにずっといた部屋だったので、フラッシュバックが毎年のようにあった。それがきつくなってきたというのもあるし、双極性障害で3カ月くらいお風呂に入れず寝込んだ。もうどうしようかと諦め半分というか、実家を出たいなというのはあった」

 アルバイトの経験はあるものの、20代はずっと引きこもり状態だったと振り返る。そして30歳を過ぎて東京へ。生活保護は受けておらず、配信で得られる月3~5万円程度の収入で生活しているという。藪さんは、家を借りない理由をこう話す。

「金銭面が一番大きいが、高架下でいるのも家、部屋とあまり変わらないという感覚になった。部屋の中で引きこもっているのか、高架下で引きこもっているのかという感じで、いつも寝ながらスマホを見て配信しているので、自分の世界・空間になって周りの音など気にしなくなる。『全然これでいいや』と満足してしまう」

 東京都によると、23区内のホームレスの数は1999年度をピークに減少し、2023年1月時点では384人になった。

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 自治体や団体などの支援によって街からその姿が見えなくなりつつある今、路上生活を配信しつづける藪さんは何を思うのだろうか。

「『自由でいいんじゃないかな』という感じ。その人がやりたいようにやらせておけば。集団とか部屋できっちりとした生活が無理という人たちはホームレスという形で生きていくというのも。病気もあるので家にずっと引きこもっているより、外にいたほうが刺激的でいいのかなというのもある。私的にはよかったのかなと。路上生活という環境ではあるが、全然今の方が幸せだ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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