今、国民生活センターに相談が急増しているのが、子どもの後払い決済。ネットで買い物をする際、商品が届いてから後日、コンビニや振り込みで代金を支払う決済方法の1つだが、中高生が安易に利用している実態があるという。
「『延滞している』と請求書のはがきが来て発覚した。最初は8000円くらい」
高校生の息子が後払い決済を利用していたというゆきなさん(仮名)。買っていたのは洋服や靴。「買った時には払えると思っていたが、忘れた頃に支払いが来たのだろう。計画性がない」と話す。
本来、未成年は親の許諾が必要だが、同意欄にチェックを入れるだけで簡単に購入できてしまう。ゆきなさんは仕方なく立て替えることにしたそうだが、最終的には親が払ってくれると味を占めた息子は、また同じことを繰り返すように。高校3年間での合計は10万円ほど。さらに、19歳の時もクレジットカードで10万円を滞納したことがあるという。
キッズ・マネー・ステーションを主催する八木陽子氏は「こういったケースはすごく増えている。子どもたちが気軽にネット決済、キャッシュレス決済をできるようになっていて、金融教育が必要だ」と指摘。一方で、「“保護者の同意を得ている”というチェックが、親に聞かなくても気軽にできてしまっている。そういう仕組み、会社の在り方も問題ではないか」と、企業側への努力を求める。
発覚後、ゆきなさんは毎回叱り、息子も反省した様子を見せるが、ほとぼりが冷めるとまた購入しているという。「携帯の中だけで完結し、お金をその場で払わなくても家に届いてしまう。後から請求だけかさんでいく」「後払い癖がついてしまい、この金銭感覚で大丈夫なのか。消費者金融などにお金を借りてしまわないか」と不安を明かした。
アディーレ法律事務所の我妻慧弁護士によれば、後払い決済業者が信用情報機関に加盟している場合、未成年であってもブラックリストに載る可能性があるという。それは親の同意欄を勝手にチェックした場合でも同様だということだ。支払いを放置するようなことがあれば、回収のために民事訴訟を提起され、最終的には預金や給与などを差押えられてしまうようなケースもあるとしている。
■キャッシュレス時代の金融教育は
モデル・商品プロデューサーの益若つばさは「中学3年生の息子がいるが、『いくら家族でもお金の貸し借りのトラブルは警察に行くからね』と小さい時から言っている。小学校の時に(通信の)ギガを使い過ぎてしまった時は、お年玉と普段のお家のバイトみたいなお手伝いで、1年以上かけて返済してもらった。結構シビアだが、それぐらいしておかないと“目に見えない魔法のお金”という感覚になってしまう。今はスマホ決済アプリや交通系のカードになって感覚が変わってきているので、一緒に学んでいかないと差ができてしまう」と、家庭の教育を説明。
17年間の専業主婦を経て外資系企業で働く薄井シンシア氏は「娘が小学校2年生の時にいたニューヨークは、その時からほとんどクレジットカードだった。『今日お金ないから買えないよ』と言うと、娘は『アメックスさんが払ってくれる』と返してきて、危機感を覚えた。日本に帰ってインタースクールに入れた時、学費がすごく高いということを彼女に認識してもらいたいから、当時公務員だった夫の年収全額を銀行から引き出して、目の前に置いて『これは学費、これはご飯、これは…』と。そうすると『これでご飯を食べなくちゃならないの!?』と娘はすごく危機感を覚えて、しばらくお金を使えなかった」と明かす。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「うちは現金をほとんど使わない代わりに、買ったものの請求は僕宛にして全部わかるようにしている。例えば、ゲームに300円を課金したら、『何でこれを買ったの?』と聞く。『実はこういう事情があって、どうしても欲しかった』という場合もあるので、『じゃあ何で先に言わなかったの?』というのを繰り返している。娘は今15歳だが、もう最近はやらなくなった。理由を聞く機会にもできるから、これは悪いことばかりじゃないと思う」との見方を示した。
子どもたちがお金を扱うリスクを体験して学ぶことも必要なのか。八木氏は「後払いは、歴史的にはクレジットカードが代表的なもので、信用があるから後で払えるというところがある。では、子どもたちの信用はどこから来ているのか。まだ働いておらず、親からお小遣いをもらっていたりすることを考えると、まず現実にあるお金で管理、そのあとに後払いのステップを踏むのが、お金を練習するにはいいと思う」と指摘。
お小遣いだけでは足りず、友達に借りてしまうようなこともあるのではないか。「それを“まあいいか”と親が払ってしまうと、いつでも親が尻拭いをするというメッセージになってしまう。どう解決するか親子で決めたことがあれば、心を鬼にしてきちんと守らせるべきだ」とした。(『ABEMA Prime』より)
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