便器に顔を突っ込み、素手で2時間…トイレを磨き、心も磨く?「便教会」とは 「教育効果に疑問」「時代錯誤」と批判の声も
【映像】「便教会」素手でトイレを磨く様子
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 19日、愛知県にある小学校に集まったのは、教員を目指す現役の大学生。開催されたのは、教員や教員を目指す学生がトイレ掃除を教わる研修会「便教会」だ。トイレを磨けば、心も磨ける――。すべての作業は素手で行う。コロナ以降は衛生面を考え、手袋着用も可能となったが、頭を便器に突っ込むくらい近づけ、2時間磨き続けるという。

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 要望があれば子どもたちとも向き合う。しかし、20年前からトイレ掃除に学ぶことを伝統行事としてきた小学校では最近、保護者から「衛生的にどうなのか?」「やることがちょっと古いのでは」と疑問視する声があがるそうだ。

 トイレ掃除をはじめ、掃除活動、学校行事は教育に必要なのか、『ABEMA Prime』で議論した。

■生徒の心を育てる「便教会」とは?

 「便教会」は、腰を落とし目線を低くして、信念を持ってトイレ掃除を行うことで、多くの問題を抱える教育現場を変えるという目的のもと活動を実践しているという。

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 発起人で教員経験もある高野修滋氏は、立ち上げの経緯について「1997年に大病をして自分の余命を考えるようになり、真っ暗な人生の中で日々悩みを抱えながら教壇に立っていた。そんな時、友人から『トイレ掃除をすると感動するよ』と。感動はキラキラ輝いているもの。死ぬまでに1回ぐらいそんなことをしてしてもいいかなと参加したら、長いトンネルの出口が見えたような、一条の光が差し込んできたような思いだった」と説明。

 これまでに指導してきたのは全国で300校以上。「気持ちは、目にしているものと似てくるもの。汚いものを見ていれば荒んでくる。みんなが使うトイレを掃除するのは、誰かのため、思いやりというところなので、それを子どもに教えられたらと思っている。けっして強制的にやらせてはいない」と話す。

 作業を素手で行う意義については、「実は、最初に保護膜を作るようなクリームを手につけて、手袋をして行っている。万が一、手袋が破れてけがをした場合はすぐに処置をするなど、衛生面と安全面は常時気をつけている」「素手でやらないといけないことはない。ただ、どうしても便器の裏側など目に見えないところは、手袋の感触ではわからないので、私は直接ザラザラ感やヌルヌル感を確かめている」と述べた。

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 目線をトイレに合わせるのは、“気づく力“を育てるため。「全然見える世界が変わってくる。細かな汚れがこんなところにあったのかと。この汚れにはスポンジを使ったほうがいいのか、もうちょっと強力なナイロンたわしを使ったほうがいいのか、手洗いの下の配管周りは傷がついちゃうから柔らかいものでやろうとか。汚れを発見して、それにどう対処していけばいいかということも学べると思う」とした。

■トイレ掃除は学校教育に必要なのか?

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 生徒による清掃活動の効果に疑問を持つ、教育研究家でライフ&ワーク代表理事の妹尾昌俊氏は「子どもが掃除するのは日本では当たり前だが、海外では必ずしもそうではなく、児童労働が指摘されるケースや清掃員の仕事を奪っているという意見の人もいる。例えば、県庁や市役所の職員は掃除をしないが、学校だけが教育目的のためと子どもに掃除をさせているわけだ。昭和から掃除用具が変わっていないが、掃除機やロボット掃除機を使えばいい。結局予算をかけていないだけという見解もある」と説明。

 さらに、「“教育的に意義がある“”子どものためになる“と言うと、なんでもそうなる場合がある」とし、「子どもの時間も有限な中で、毎日やる必要があるのか。基本は清掃員にやってもらい、自分の周りだけ片付ける。時には道徳の時間で掃除を行う体験があってもいいのでは」とやり方を変えていく必要があるとの考えを示した。

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 これに高野氏は「いろんな意見があるのは当然だと思う。私も最初にトイレ掃除を素手で行ったときは、正直あり得ないと思っていた。私は子どもたちに『掃除』という言葉を使わず、『きれいを広げる』と伝えている。学校での掃除は、終わった後に先生が見回りをして確認をするが、まだやっていないところに目が行きがちだ。しかし、『きれいを広げる』の実践であれば、生徒たちは『僕はここをきれいにした』『私はここをきれいにした』と言え、それを教師は褒めることができる。生徒も嬉しいという、Win-Winの関係になる」と返す。

 続けて「褒められる=認められるということ。今の社会、教育の中で、認められることはほとんどない。勉強は苦手な子が多く、足が遅い子が速くなるのは難しいが、掃除は誰にでもできる」と主張した。

■「学校の当たり前が変わるか、今年と来年が勝負」

 公立小学校教師の斎藤浩氏の著書『学校のルーティンを変えてみる』が注目を集めている。「上履きに履き替えること以外すべて、それが本当に教育なのか?見直すべきだと思っている」と呼びかけている。

 妹尾氏は「学校の当たり前を立ち止まって考えてみようと、現役の先生が提案しているのがすばらしい。コロナによって、掃除も含めて学校行事はできないといった見直しが起こった。今年と来年が勝負で、コロナ前に戻ってしまうのかという転換期だ」と指摘する。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「形骸化したものをやることで“精神力が磨かれる“という建前を立てることがやたらと多い。学校そのものでなく、例えばPTAでもベルマークを集めて貼るという作業をやっていて、“親としての精神修業になる“といったことを言いたがる。定義のはっきりしない考えを持ち出すのではなく、形骸化したものはとっとと消すべきだと思う」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)

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