風評加害なぜ再び?科学的な情報どう伝える? 品種改良された「あきたこまちR」を考える 専門家「放射線育種の仕組みが勘違いされている」 ひろゆき氏「恐怖をばら撒き支持者を増やすインフルエンサーが悪い」
【映像】「あきたこまちR」の育成系譜
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 再来年度から、従来のあきたこまちを新たな品種「あきたこまちR」へ切り替える方針を発表していた秋田県。なぜ品種改良が必要なのか。

【映像】「あきたこまちR」の育成系譜

 実はコメは土壌の中にある「カドミウム」という有害物質を吸収しやすい性質を持っている。特に秋田県では、かつて鉱山地域だった影響もあり、コメ栽培におけるカドミウム対策に苦慮してきた。そこで生み出されたのが、カドミウムを極めて吸収しにくい性質を持つ「あきたこまちR」。カドミウムを吸わない以外は、従来の「あきたこまち」と味や特徴はほとんど同じだという。これまで以上に安全なコメを供給できるようになるが、この品種改良を受け、安全性や健康被害を心配する声、さらには農家への誹謗中傷まで起きている。

 というのも、品種改良をする上で放射線を照射していることが問題視されているからだ。放射線照射を使った品種改良は1950年代から利用され、安全性も確認されているのだが、不安の声の多さに、秋田県の佐竹敬久知事は「理解をいただくためには、材料がもう少し必要だ。サイエンスの面から見ると完全に何も影響ないことはわかる。福島の例もあるように、それだけではすまないものもある」と述べた。

 1日の『ABEMA Prime』で、あきたこまちRをめぐる議論について考えた。

■「放射線育種の仕組みが勘違いされている」

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 「食品安全情報ネットワーク」共同代表ジャーナリストの小島正美氏は「日本人はカドミウムの高いコメをずっと食べてきた。そうした中で、放射線を当てて、突然変異を起こして、カドミウム吸収の少ないものを選んで生まれたのが、『コシヒカリ環1号』。これと従来のあきたこまちを掛け合わせたのが、あきたこまちRだ。コシヒカリの最初の段階で放射線を当てているが、ずっとではない。放射線が残っていると勘違いしている人もいる」と指摘。

 前提として押さえておかなければいけないのが、従来のコメにカドミウムが含まれていても、当然国内基準は設定されていて、そもそも基準に満たないものは流通していない。

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 その上で、「QST高崎量子応用研究所」専門業務員の小林泰彦氏は「そもそも放射線育種の仕組みが勘違いされていると思う。放射線を使って遺伝子情報の一部を読めなくすると、コメは直そうとする。ほとんどは元通りになるが、読めないところが長かったり多かったりすると書き間違えて、文章でいえば一字抜けたり一段落がすっぽり抜けるわけだ。それに期待して、変異体を得る方法だ。どう読めなくするかという話なので、その後は放射線の関係はない」と説明する。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「(世の中の批判の声は)放射線と変異体の危険性の話がごっちゃになっている。変異したものが害を及ぼす可能性があるという、未知に対する危険性(の指摘)はまだ理解できる。ただ、放射線を浴びたから危険だと言うのは、例えばレントゲンを受けた人の子孫が、“お前の7代前は放射線を浴びたことがあるんだぞ”と言われているようなものだ。そこはちゃんと切り離したほうがいいと思う」との考えを述べた。

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 中には国会議員が安全性に懸念を示すような発信をしている例もある。小林氏は「まずは放射線の基礎を知っていただくのが一番。そして、専門家が何度も丁寧にお話しすることに尽きる。変異が起きて、“どんなところが変わっているかわからない”という不安はごもっともだ。ただ、7代前にコシヒカリ環1号がいて、カドミウムを吸わない部分だけを受け継いでいる状態で、ほとんどがあきたこまちそのままだ」とした。

 ひろゆき氏は「カドミウムは、みんなが知っているイタイイタイ病の原因になっている。“1年間食べた時に、これまでのカドミウムの量はこれで、あきたこまちRはかなり減る。どっちがいい?”という話をすればいいが技術の話を一般の人もわかるようにした結果、そっちが話題になってしまった。情報を出す側とメディアの問題であるのと、恐怖をばら撒くことで支持者を増やそうとする政治家的なインフルエンサーたちが悪い」との見方を示した。

■世界はより厳しい基準?

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 秋田県は2025年からの全面切り替えについて、「米産県として海外にも販路を拡大したい」「厳しい基準を設定している国もあり、国内基準が厳しくなっても対応したい」「ヒ素の基準が決まっている国もあり、米産県として将来を見据え、海外の厳しい基準にも対応したコメを提供したい」との見解を示している。

 日本のカドミウム基準値は0.4mg/kgだが、例えば中国は0.2 mg/kg、EUは0.15 mg/kg、アメリカは州で異なるが平均0.006mg/kgとなっている。

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 ともすると、今のコメが危険であるかのように聞こえかねないが、なぜ海外との基準値の差があるのか。小林氏は「基準値は“この辺でいいかな”というみんなの合意が基本で、気にしなければ甘くてもいいと思うが、厳しいほうが健康にいいのは間違いない。どこまでみなさんが耐えられるかということだ。今後、欧米にどんどん輸出しようとすると、基準を厳しくしないとおそらく買ってもらえない。今までのあきたこまちは事実上作れなくなるかもしれないわけだ。世界はそういう趨勢なので、農家も適応していく必要があると思う」との見方を示す。

 小島氏は「アメリカ政府は、“日本のコメはカドミウムが高いので、子どもが食べるのは週に数回以下”といった警告まで出している。そういう状況があることを知ることも重要だと思う」と述べた。

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 ひろゆき氏は「あきたこまちRが海外に出荷されるようになったら、ドルで買われるわけだ。それで秋田の農協が儲かり、県内の農家が儲かって、良かったねという話で終わると思う」とした。(『ABEMA Prime』より)

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