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【映像】歩くことも困難…フェンタニル中毒患者たち
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 「薬物が僕に何をもたらしているか、僕にはわかる。つまり一夜にして僕の健康や身体を著しく悪化させているんだ」(フェンタニル中毒者)

 【映像】歩くことも困難…フェンタニル中毒患者たち

 問題となっている薬物「フェンタニル」。元々は医療用の合成麻薬だが、過剰摂取や乱用により健康被害が出たり死に至る人がアメリカで急増しているのだ。

 「(フェンタニルによって)年間7万人以上のアメリカ国民の命が奪われている。製造や密売を阻止するための対策を大幅に強化する」(バイデン大統領)

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  先月開かれた、バイデン大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談。バイデン大統領は、中国から様々な形でフェンタニルが流入しているなどと話し、両国で取締を強化するとの合意に至ったと発表した。

 「米国では18歳から49歳までの人々が銃や自動車事故、その他の原因よりもフェンタニルで死亡する人の方が多い。フェンタニルの原料や錠剤が中国からアメリカ大陸へ流入するのを大幅に削減するための措置を講じている。それは命を救うことになる。そして、この問題に対する習主席の取り組みに感謝する」(バイデン大統領)

 「中国はフェンタニルによる米国民、特に青少年に対する被害に深く同情する」(習近平国家主席)

  フェンタニルは、本来がんの痛み止めなどに使われる医薬品で、合成オピオイドの一種だ。その効果はヘロインの50倍、モルヒネの100倍といわれている。

  しかし、アメリカでは、違法に製造されたフェンタニルの乱用による若者の中毒死が後を絶たない。

  2018年の米中首脳会談では当時のトランプ大統領と習主席との間で、フェンタニルを取り締まるとの合意がなされ、中国はフェンタニル製品を規制した。しかし、アメリカ麻薬取締局によると、その後もフェンタニル製造に必要な原料が中国からメキシコに出荷され、メキシコで製品化されてアメリカに流入する事例などが報告されている。

  アメリカ司法省は今年6月、メキシコを通じて、アメリカ国内でフェンタニルを製造・販売したなどとして、中国系企業を起訴。25万人分の致死量にあたるおよそ200kgのフェンタニル関連物質を押収した。

  未だ解決されないフェンタニル問題。CNNによると、今回の米中首脳会談によって、中国はフェンタニル合成に必要な原料を生産する企業を取り締まることでも合意したという。会談後、中国は国内企業向けに、フェンタニル等に関連する物質の輸出には法令を遵守するよう警告を出している。

  アメリカのフェンタニルの問題について現代アメリカの政治・外交が専門の上智大学教授 前嶋和弘氏は「フェンタニルは、オピオイドという痛み止めの一種。アメリカは『痛み止め社会』で、ドラッグストアに行くと300錠入りのボトルもある。かつてからアスピリンが多用されてきたが、副作用もあるため、それよりも“体にやさしい”とされたオピオイドが登場した。しかし、オピオイドには中毒性があったため中毒患者がすごく増え、その後麻薬としても使われてしまった。フェンタニルが蔓延した街では、ゾンビのようになっている人がいて、私自身も見たことがある」

  さらに前嶋氏は、この問題は米政府の政策の優先順位として非常に高いと指摘する。「米中首脳会談後の記者会見でバイデン大統領が最初に言及したのがこの話で、台湾情勢や中東問題はその後だった。国内の状況で言うと、例えばかつてポートランドはアメリカ人にとって最も住みたい街の一つであったが、フェンタニルが蔓延し、犯罪が増加した。フェンタニル問題が遠因になって街がつぶれているような状況なので、喫緊の課題と認識されている」と解説。

  一方、中国がアメリカに協力するメリットや、合意の実効性については「中国からすると『お前たちは麻薬を売りつけているのか?』とアメリカから言われているようなもので、米中関係を考えると対応せざるを得ない。ただ、フェンタニル関連の取引は違法に、かつメキシコなど第三国を経由して行われているので、中国政府がどこまで腰を入れて対策するかにかかっている」と述べた。

(『ABEMAヒルズ』より)

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