19日午前、東京地検特捜部は政治資金パーティーをめぐる問題で、自民党の安倍派・二階派の事務所に家宅捜索に入った。押収した資料などから、資金の流れについて調べを進めるものと見られる。
果たして組織的関与はあったのか。議員の逮捕までいく確率は。『ABEMA Prime』で元東京地検特捜部検事で弁護士の高井康行氏に聞いた。
■「証拠隠滅を見つけたら勝ち」
特捜部が家宅捜索に入ったことについて、高井氏は「時期がやや遅い。来年の1月20日以降に通常国会が始まるが、こういった政権絡みの捜査はその前に終結したいと検事も思う。ガサ(捜索)で抑えたブツを捜査に活用するためには2〜3週間かかるため、年明けになってしまう。仮に政治家を逮捕するとなると、1月の頭しかないが、今回のタイミングで間に合うとは思えない。特捜は捜査の終結を、通常国会とは関係なく考えている可能性がある」と推察する。
キックバックに関して、「派閥から指示があった」など組織的関与があったとうかがえる証言が安倍派内部から出ているが、どういった“証拠”がポイントになるのか。「清和会に関しては、金の流れに関するメモのようなものが、すでに任意提出されていると報道されている。しかしそれが本当かどうかの裏付けが必要だ。会計責任者の故意なのか、あるいは派閥の会計責任者が議員の政治団体の会計責任者になんらかの指示を出していた可能性もある。事務総長と会計責任者のやり取りを記録したメモや紙片、データがあるかもしれないので、ガサをかける必要がある」と説明。
そういったメモは通常残すものなのか。「裏金を作る時、会計責任者は自分が横領したと言われてしまう可能性があるので、基本的には自分を守るためにメモを作る」とした。
また、こうした政治資金の問題では「証拠隠滅を見つけたら勝ち」と言われているという。「帳簿のようなものはすでに出ているので、その他の同じようなものが出てこなければ、『証拠隠滅をした』という話になる。あるべき証拠がガサの前に隠された、と立証するのはそんなに難しいことではない。一番簡単なのは、証拠物の場所を移動したというもので、あるはずの場所になければ、どこかの家に隠したとなる。私が弁護人としてつく時は、逆に『絶対に証拠物は移動するな』と言う」と明かした。
■議員の逮捕・起訴はある?「確率は2割」
政治資金収支報告書の不記載について高井氏は、故意に結びつく最も大事な供述は『政策活動費だから記載する必要はないと思っていた』だと語る。「この供述が問題になるのは、資金を受けた側の政治団体の会計責任者だ。流れてきたお金が、本来記載する必要のない政策活動費なのか、記載義務のある政治資金パーティーの収益の一部なのか。入った時期がパーティーと接着しているか、金額がノルマを超過した分と一致しているかなどを詰めていき、2つの状況を満たしていれば“嘘をつくな”という話になる。しかし、これらが一致せず、“本当に政策活動費だと信じていた”と言われた時、そこに相当な理由があれば事実の錯誤として故意を阻却する。つまり、不記載に故意はなかったということだ」
安倍派と二階派への家宅捜索はそれぞれ20人ほどで行われたが、特捜部全体では80人規模ともされている。捜査状況については「議員の逮捕につながるかどうかは証拠次第。会計責任者が『事務総長から指示を受けた』と供述し、それを裏付ける物的証拠があるかだ」との見方を示す。
高井氏の見立てでは、議員の逮捕・起訴までいく確率は2割。「(不記載が)慣行なのであれば、会計責任者同士の間で済む話で、事務総長にお伺いを立てる場面はないと思う。事務総長までいくのはなかなか難しいというのが筋で、“もしかしたら指示しているかもしれない”という慎重な態度で取り調べに臨むべき。そこで、“会計責任者が証言しているから、事務総長が関与しているのは間違いない”と決めつけて突っ込んでいくと、大阪地検証拠改ざん事件の二の舞いになる」と警鐘を鳴らした。
(『ABEMA Prime』より)
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