19日、政治資金パーティーを巡る問題で東京地検特捜部が安倍派と二階派の事務所を家宅捜索。これを受け、検察を指揮できる立場にあり、捜査の公平性の観点から懸念の声が上がっていた小泉法務大臣が二階派を離脱した。
ANNが16日、17日に行った世論調査では、自民党の派閥を解体すべきかとの問いに「そう思う」が61％、「思わない」が23％という結果となった。
派閥のネガティブな部分がクローズアップされているが、そもそも派閥とはどんな集まりで、何のために所属するのか？ 東京都立大学 准教授 で政治学者の佐藤信氏に聞いた。
━━そもそも、派閥とは何か？
「政治の世界における派閥はただの“仲良し集団”ではなく、明確な定義の上に成り立っている。まず、派閥は他の派閥と兼ねることができず、『自分がこのリーダーを推していく』ということになれば、他の派閥のリーダーを推すことはできない。これが『派閥』と『グループ』の大きな違い。『自分はこの立場をとる』ということを周囲に表明していることになる。派閥は『政策集団」とも言われ、『こういう政策をやりたいからこの集団に行く』と思われがちだが、それは建前で、実際は『議員になる時に声をかけてくれた人』や『自分が信頼してる人』が所属する派閥、世襲議員であれば親が属している派閥を選ぶなど『人間関係』で決まっている場合が多い。実際に勉強会も開かれているが、その中のイデオロギーは様々だ」
━━派閥のメリット・役割は？
「派閥のメリット・役割は4つある。一つ目は議員の票が結果を左右する『総裁選挙』だ。自民党の総裁は戦後、ほとんどの期間で総理大臣になっている。派閥として推すリーダーを総理大臣にすべく票を集めるのだが、派閥の仲間は必ずそのリーダーを応援する。1つの派閥では過半数を取れないため複数の派閥による“数合わせ”を行っているのが大きなポイント。
二つ目はそれぞれの議員が戦う国政選挙だ。派閥に所属していると先輩議員などが応援演説に駆けつけてくれるなどの恩恵がある。三つ目は政治資金だ。例えば選挙の時は政党からだけでなく派閥からもお金が出る。さらに、派閥からは季節ごとに活動資金がもらえる。
四つ目はポスト配分だ。例えば岸田内閣ではそれぞれの派閥にポストを渡し、『どなたか推薦してください』というやり取りが行われていた。つまり、派閥に所属していることでもらえるポストが存在する。その役割にも変化がみられ、政治資金規正法ができてからは、厳しい制約がある。昔は派閥のトップが資金をたくさん集めてきて議員に配っていたが、制約されてどんどん減り、さらに国政選挙も党が中心になって行われるようになった。今では総裁選挙とポストの配分が、派閥に所属する意味合いとして大切になっている」
━━なぜ安倍派（清和政策研究会）はここまで数が多いのか？
「歴史的に見ると茂木派『平成研究会』と、岸田総理がトップを務めていた『宏池会』という2つの派閥は歴代総理を輩出している主流派。安倍派（清和政策研究会）はどちらかというと傍流にいたが森元総理、小泉元総理、福田元総理、さらには長期政権となった安倍元総理と、『21世紀の自民党政権時代はほとんど安倍派の政権であった』と言っても過言ではない。この間に、新しく当選した議員たちが力のあるところに所属しようとすることから急成長した」
━━一方で、無派閥も77人と多くなっていることをどう見るか？
「派閥に所属することの価値がだんだん減ってきて、無派閥は今や第2派閥くらいの人数になった。かつては派閥同士の足し算で誰が総理になるか決められたが、現在はかなり流動的で、有力候補と言われる人たちも無派閥になっている」
━━「派閥解消」という声も上がっているが。
「派閥は必ずしもお金が絡むわけではなく、総裁選や国政選挙といった機能はお金が絡まなくても存在し得る。元々は人間関係で成り立っていて、『自分たちのリーダーを将来トップに』という集団であるため、廃止するといっても実態としては残る可能性がある。『派閥解消』といってもその中身を見ることはとても大切。今、派閥の金の流れはかなり分かりにくい形になっていて、政務活動費などは極めてチェックが甘い。『派閥を無くせば全て解決』と簡単に考えるのではなく、資金を透明性の高い状態で扱えるようにし、我々が金の流れをしっかりチェックできるようにすることが必要だ」
（『ABEMAヒルズ』より）
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