さまざまな業界で人手不足が叫ばれる中、大工の減少が深刻な事態になっている。国勢調査によると、2000年の時点で約64万人が就業していたが、2020年には半分以下の30万人弱に減少。年齢構成も30歳未満が1割を切り、60歳以上が4割を超えるなど、高齢化も進んでいる。2024年4月から、建設業界でも時間外労働の上限規制が開始され、今後住宅の建築や修理・リフォームに支障をきたす懸念がある。
どうすれば減少を食い止められ、若い人が再び目指すようになるのか。大工歴50年以上のYouTuber・大工の正やんさんを交え、『ABEMA Prime』で考えた。
そもそも「大工」とは、主に木造建築(一戸建てなど)で木材の加工・組み立てを行う仕事(とび職は高所作業や足場設置などを行う)。正やんさんは、福井県で地元工務店などから仕事を受注したり、新築・リフォームなどを年間2軒ほど受けている。
大工が減少している状況について、「これはもうしょうがない。自分らが入った時が一番多かったが、今は67歳。高齢化が目の前にきて、放っておいても少なくなっていく。自分が関わっている現場では職人不足は感じないが、例えば建築組合で飲んだ時に、“この間はいたのにもう辞めた”という人はバンバン増えている」と話す。
土木建設会社の経営コンサル「クラフトバンク総研」所長で認定事業再生士の高木健次氏は「そもそも新築住宅着工は20年前から3割減っているのと、建設業就業者が約480万人いる中で、住宅に関わっている正やんさんみたいな方は5%ぐらいしかいない。また、電気屋などはけっこう株式会社が多いが、大工は一人親方が多く、特に高齢化が進んで人が減っている。さらに、いわゆるサラリーマン大工と一人親方でも全然違う」と説明。
大工減少の理由として、徒弟制度が時代に合わなかったり、工法の進化で“匠の技”が不要になっていたりすることが関係するのか。「例えば若い経営者の会社とかだと“見て覚えろ”みたいなことがあるが、言語化はめちゃくちゃ大事だ。職人には技術だけではなく、いわゆる見立てや目利きというものがあり、それをきちんとテキスト化していくと、5年の修行期間が1年になったりする。ただ、昔ながらのパワハラがある会社もまだある」と答える。
また、人手不足について高木氏は、「建設業は有料人材紹介が禁止されていたり、職人は人材エージェントを使って転職することができない。縁故かハローワークだ。なので、人手不足が起きているのもあまり知られていない。そして、需要がある都会のほうにどうしても人材が集まっていくので、高齢化は地方で極端に進んでいる」とした。
時間外労働の上限規制が開始される“2024年問題”は有効に働くのか。「なぜ規制が強化されるかというと、人を定着させるためには労働環境を改善する必要があるから。若干ネガティブな報道もあるが、これは業界を良くしていくために不可欠だ。面白いデータがあって、建設業の方は既婚者が多く、子どもも多い。また、建設業の正社員のうち、実は2割は事務職だ。事務時間がとても長いので、僕らはそれをデジタルによって改善して、少しでも早く帰れるようにしていく。こうやって稼げる職人を増やしていくことは、実は少子化にも貢献をすることにつながる」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)
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