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【映像】武尊「失った誇りを取り戻す」決意表明

 “世界最高峰の格闘技イベント”ONE Championshipの約4年ぶりとなる日本大会=2024年1月28日(日)東京・有明アリーナ「ONE 165: Rodtang vs. Takeru」が決定。大会タイトルにもなっている通り、今大会では元K-1 三階級王者の武尊がロッタン・ジットムアンノンと対戦する。

【映像】武尊「失った誇りを取り戻す」決意表明

 インタビュー場所に現れた武尊はすっきりとした表情だった。今年5月にONEと契約して約6カ月、正式にONE初参戦とロッタン戦を記者会見で発表できたからだ。過去に「THE MATCH 2022那須川天心戦の正式発表が何度も延期になった経験があり、今回のロッタン戦も正式発表するまで気持ちが落ち着かなかったという。だからこそ「試合を発表できることになってホッとした方が大きい。あとは試合に向けて突き進むだけです」とひと時の安堵感に浸っていた。

 ロッタンとの対戦はONE参戦前から武尊が熱望していた試合で「ONEというイベントが魅力的だから契約したのはもちろん、ロッタン選手と戦いたくて契約したところもある。僕自身、身体がどこまで持つか分からないので、最高の状態で戦えるうちにロッタン選手と戦えることもうれしい」と可能な限り早いタイミングでロッタンとは拳を交えたかった。9月のONE Friday Fights 34でロッタンがスーパーレック・キアトモー9に敗れても、武尊の想いが変わることはなかった。

「試合結果だけ見たらスーパーレック選手と戦いたいと思ったかもしれないですが、スーパーレック選手の計量オーバーもあってフェアな試合ではなかったと思うんですね(※スーパーレックが計量オーバーしたためキャッチウエイトで行われた)。だからあの試合でロッタン選手の評価が落ちたとは思わないし、実際にリングサイドで試合を見ていて、ファイターとしてロッタン選手のファイトスタイルには魅力を感じました。

 あのリスクを顧みない戦い方や『ここでいくの?』と思わせる戦い方。パンチを振り回すとリスクがあるんですけど、それができるメンタルの強さや人間として強さ。映像で見ても伝わるものですが、直接生で見て余計にそれを感じましたね。だからロッタン選手がスーパーレック選手に負けても、ロッタン選手と戦いたいという気持ちは変わらなかったです」

 武尊が初めてロッタンの存在を知ったのは、天心とロッタンがRISEのリングで対戦した2018年頃だ。周りから「タイに武尊みたいな試合をする選手がいるから試合を見てみて」と勧められ「実際にロッタン選手の試合映像を見て、自分と似ているマインドを持っていると感じて、この選手と戦ったらむちゃくちゃ噛み合って面白いだろうなと思っていた」という。

 そして武尊がK-1スーパー・フェザー級王者として世界の強豪たちと戦い、ロッタンがONEを主戦場とし、ONEムエタイ世界フライ級王者として確固たる地位を築くなかで、より具体的にロッタンを戦う相手として意識するようになった。

「ロッタン選手はスポーツ選手やアスリートという枠じゃなくて、野獣としてリングに放たれて、野獣として戦って、純粋に戦いを楽しんでいますよね。そういう意味では僕も同じマインドと考え方です。ロッタン選手は勝ちに徹するよりも魂をぶつけ合って熱い試合をする。あれだけの立場になっても、それが出来る選手はなかなかいないと思うし、僕もどれだけ立場が変わっても、自分のファイトスタイルはぶれずにやってきたので、本当に共通するところが多いですよね。

 僕もタイ修行に行ったり、ラジャダムナンスタジアムで試合をしたり、昔からムエタイのことはリスペクトしているので、立ち技の軽量級でムエタイの選手を超えることは一つの目標でした。そのなかでもロッタン選手は特別な存在なので、いつか倒したい相手だと思っていました。ロッタン選手は日本でも知名度があるし、あのファイトスタイルはムエタイの中でも特殊だと思うんですよ。むしろあの戦い方でよくムエタイのトップになれたなと。そのくらいムエタイらしくない選手で、ムエタイの中でもK-1・キックルールに適応できる戦い方をする選手なので、余計に戦いたいと思ったのかもしれないです」

 このロッタンと戦いたいという気持ちは「THE MATCH 2022」で天心に敗れた武尊を再びリングに向かわせる原動力となっていた。

「あの負けは今でも悔しいし、悔いも残っているんですけど、もし僕が天心選手に勝っていたらロッタン選手とやる気は起きなかったと思います。僕は目標がないと試合ができないし、あの時の僕が目標を作るとしたらロッタン選手しかいなかった。ロッタン選手に勝つという目標があったからこそ怪我を治して、色んなことを乗り越えようと思いました。

 試合に負けると何をしていても楽しくないし、早く次の試合で勝たないと心の中を取り戻せないというか。だからどうすればこの気持ちが晴れるんだろう? と考えた時に『試合で勝つしかない。その相手はロッタン選手しかいない』と思いました。僕は天心戦が終わった瞬間はすべてが“終わり”だと思ったのですが、試合の一週間後にはロッタン戦を実現させるために動き出していました。だから天心戦後は出来る範囲ですぐに練習も再開したし、怪我を治すのもロッタン戦に向けてのためだったので、そういう意味で休養らしいは休養はほとんどとってないですね」

 そして武尊は今年5月にONEと契約をかわし、6月の「MTGP Impact in Paris」で再起戦を飾ると、ONE初参戦でロッタンとの対戦が実現した。しかも舞台は約4年3カ月ぶりの開催となるONE日本大会だ。「ONEという海外の団体と契約した時点で海外で試合をするつもりだった」という武尊だけに、日本のファンの前でロッタンと戦うことにも特別な意味を感じている。

「日本での最後の試合が『THE MATCH 2022』で、最後に日本のファンが見た僕の姿が負けた姿だったんです。だから日本のファンのみんなに勝つ姿を見せたいという気持ちがずっとありました。それがこのタイミングで実現できたことはうれしいし、びっくりしています。(2021年3月のレオナ・ペタス戦以来の勝つ姿を見せたい?)日本で試合をやる意味としては、それが一番大きいですね」

 武尊とロッタンは数々の激闘を繰り広げ、世界中のファンを熱狂させてきた。ロッタンVS武尊は今のキックボクシングにおける世界最高の一戦だ。武尊の年齢やキャリアを考えると、日本でこれだけのビッグマッチに臨むことは、今回のロッタン戦が最後になるかもしれない。

「普通に行けば殴り合いになると思うんですけど、僕の中でも練習していて色んな葛藤というか想いがあって。勝ちに徹する戦い方はしたくないんですけど勝ちたい。でもロッタン選手と殴り合いたい。それを毎日トレーナーの(渡辺)雅和さんと話してますね。

 僕も身体の限界がいつ来るかは分からないし、だからこそONE初戦でロッタン選手とできることがありがたい。僕はこの試合で終わってもいいと思って追い込んでいるし、日本でビッグファイトができるのはロッタン戦がラストかもしれない。ファンのみなさんもそのつもりで見て欲しいです。その分、僕も限界ギリギリまで追い込んで、過去最高の武尊を作ろうと思います」

 この試合で自分が壊れても構わない。武尊はその覚悟を持って、過去最高の状態でロッタンの待つリングに上がる。我々もその覚悟を持って、この一戦を見届けよう。

文/中村拓己

【映像】武尊「失った誇りを取り戻す」決意表明
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