信頼する間柄だからこそ、率直な発言が“ブラック”化に聞こえて、またおもしろい。将棋の藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が、ABEMAの特別番組に出演し、師匠である杉本昌隆八段(55)の著書に関するエピソードを紹介した。少年時代に振り飛車に関する本をプレゼントされたものの「全然指さないので、この本はいらないと思った」と、まさかの“塩対応”。周囲の笑いを引き出した。
【映像】藤井聡太竜王・名人、少年時代のブラック?なエピソード
2023年も史上初の八冠独占をはじめ、将棋界の話題の中心にいた藤井竜王・名人。本人はタイトル戦、イベントなどで大忙しだが、同じように忙しくなっているのが師匠・杉本八段だ。テレビ出演、講演会などの依頼も多く、また藤井竜王・名人に関する著書も出している。「藤井八冠絡みの本を2冊出しまして、そのうちの1つ『師匠はつらいよ』は4万3000部くらい、第5版までいきました。『藤井聡太は、こう考える』は、八冠達成するまではランキング外みたいな感じだったのが、八冠達成した翌日から急に売れ行きが上がって、びっくりするぐらい急上昇した」と、まさに“藤井特需”を受けている。「軒並み私が出した藤井八冠関連の本はランキングが上がっていて、本当に藤井八冠のおかげの経済効果。ちなみに自分がそれまで出した将棋の定跡書は全然変わっていない」と、将棋に関する本の売れ筋に変化がないのは苦笑いポイントだ。
そんな師匠・杉本八段が明かしたエピソードが少年時代の“ブラック藤井”だ。藤井竜王・名人が奨励会三段の頃、地元愛知で行われた王位戦七番勝負、羽生善治王位と木村一基八段(いずれも当時)の一局を、杉本八段は藤井少年と中学生の奨励会員とともに、観戦に訪れた。対局は、木村八段がはっきり優勢となり、あとはどう勝ちを収めるかという局面だった。ここで中学生の先輩が1回守っておけば楽に勝てると話したところ、藤井少年は「そんなことを言っているから君はダメなんだよ」と全否定したという。さらに杉本八段は「実はその時、私もその少年と全く同じことを考えていて、1回守っておいたら簡単に勝てると思っていた。あそこで斬り合いを考える性格だからこそ、今の藤井八冠があるのかなと思います」と、安全か勝ちを取らず、最短距離で攻めかかる姿勢こそが天才の片鱗だったと考えた。
師匠の話をニコニコしながら聞いていた藤井竜王・名人だが、著書については「そんなに売れていないと嘆いておられましたけど、昔からよく定跡の本を書かれていて、特に『相振りレボリューション』というシリーズにもなっている」と説明。さらに「私も子どもの頃に何か大会の賞品としてその本をもらったことがある」と思い出した。ところが藤井竜王・名人は少年時代から生粋の居飛車党で「当時から全然振り飛車を指したことがない」と苦笑い。「まして相振り(飛車)というのはまず(指すことが)ない戦型なので『この本はいらないな』と当時思っていました」と素直に語ったことで、スタッフからも笑いが起きた。とはいえ、アマチュアには振り飛車党が多く「定跡書も本のクオリティとしては間違いないものですので、ぜひ皆様お買い求めいただければと思います」と笑いながらフォローしていた。
なお、現在でも鋭い物言いから“ブラック藤井”と表現されることもあるが、少年時代のエピソードについては「全然ブラックではありません(笑)。決して別に黒いわけではなくて、率直に言っているというだけ。師匠が話していたエピソードは私は全く覚えていないので、若気の至りということでお許しください」と微笑んでいた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)