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【映像】八冠防衛ロードについて語る藤井聡太竜王・名人

 2023年に八冠独占という大偉業を達成した藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が、2024年は誰も体験したことのない「八冠防衛ロード」をスタートさせる。その皮切りとなるのが、1月7日に開幕する囲碁・将棋チャンネル ALSOK杯王将戦七番勝負だ。挑戦者は昨年、叡王戦五番勝負でぶつかった振り飛車党のエース・菅井竜也八段(31)。叡王戦では3勝1敗で退けたが、順位戦A級でも好成績を残しており名人戦出場のチャンスもあるだけに、勢いづいている。八冠保持者だけが歩める茨の道。王将戦開幕を前に心境を聞いた。

【映像】八冠防衛ロードについて語る藤井聡太竜王・名人

 日々、多忙な生活を送っている藤井竜王・名人は、年末年始は家で家族と過ごしたというが、2023年に全てのタイトルを独占したことによって、予選・本戦に出場する必要がなくなり、対局数は過去と比べて最も少ないペースになっている。タイトルに絡む対局は竜王戦七番勝負を終えた11月10日から、王将戦七番勝負の第1局が行われる1月7日まで、約2カ月も間隔があいた。「竜王戦が終わってから対局としてはかなり少なくなるという感じにはなったんですが、対局が少ないという以外は普段と変わらず過ごしています」とマイペース。対局以外の多忙さは変わらず、がっつりと研究時間が増えたり、新しい趣味を楽しんだりする時間については「残念ながら特にそういったことはなく…」と苦笑いした。

 ただし新年早々にスタートする防衛戦、王将戦七番勝負への取り組みはもちろん進めている。相手は切れ味鋭い振り飛車党・菅井八段。叡王戦五番勝負は3勝1敗で防衛に成功したものの、苦戦を感じたところもあった。そのため「年明けの菅井八段との王将戦であったり、振り飛車党の方との対戦が想定されるので、それに向けて考えてというところはひとつあるかなと思います」と、対策を練っている最中だ。

 本来、居飛車党である棋士が、オプションとして振り飛車を指す機会が増えていることも、研究課題に取り上げた理由だ。「自分自身のここ2、3年の対局ですと、相居飛車の将棋が圧倒的に多かったんですけど、最近は振り飛車の将棋も一時期よりは増えてきているので、これまでよりは幅広い対策が求められてくるのかなとは思っています」と、相居飛車で絶対的な自信を持つ角換わりの研究をさらに深めるだけでなく、全くの別世界になる居飛車対振り飛車の対抗形についても、事前研究で出遅れるわけにはいかない。

 研究という意味では、藤井竜王・名人の対局はその全てが放送対局になっており、棋譜だけでなくどんな様子で指しているかを、テレビやネットでの中継を通じて確認することができる。ましてや最新のトレンドを突き進む藤井竜王・名人の将棋は、勝敗に関わらずこの上ない研究材料だ。「いろいろと作戦を練ってこられているのかなというのは、これまでの対局でも多くありました。こちらがそれにしっかり対応できるかが非常に大きな課題。いろいろな形に対してしっかりご認識を深めておく必要があります」と、周囲から丸裸のようにされてもなお、自分自身の力を信じて研究を重ねるだけだ。

 序盤は特に神経を使う。いきなり見たこともないような仕掛けをしてくるものもいる。実力が拮抗するほど、一度離れた形勢を戻すのは難しい。「全体としても、これまでよりいろいろな形が試されている時期になっている」と居飛車であれば角換わりや相掛かりといったエース戦法を突き詰めるだけではなく、将棋界も多様性の時代に突入したということのようだ。「私自身、他の方の対局も結構よく見ていて、やっぱりそこで自分が知らない指し方とかがあったりすると面白い」と、未知の世界との遭遇は八冠という絶対王者になっても、なお楽しい。

 全てのタイトルで防衛をかけて戦うという防衛ロード。過去、七冠を独占した羽生善治九段(53)は、七冠を保持した状態で迎えた3つ目の防衛戦で棋聖のタイトルを失い、独占が崩れた。全8タイトルを全て防衛することは、防衛と奪取を混ぜながら独占に向かうよりも大変かもしれない。「2023年は自分が思っていた以上に活躍ができた一年ではあったんですけど、逆に言うとこれからがさらに厳しく問われることになるかなと思っているので、2024年はより地力を高めていって、そういったところにしっかり応えられるような将棋を指したいです」。束の間の休息でリフレッシュし、八冠防衛ロードへの準備も進めた藤井竜王・名人は、新年初対局となる王座戦第1局でどんな将棋でファンを驚かせるか。
ABEMA/将棋チャンネルより)

【映像】八冠防衛ロードについて語る藤井聡太竜王・名人
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