去年9月、福岡市の交差点でバイクに乗っていたところを車にはねられ、全身を打撲し、右足を骨折。その後、けがの影響から肺血栓となり生死の境をさまよった、蓑津尚文さん。Xで情報提供を求め、ひき逃げ事件から1カ月半後の去年11月に『ABEMA Prime』に出演した際は、進まない警察の捜査への不信感やかさむ治療費など将来への不安を語った。
それからさらに1カ月半後の1月4日、蓑津さんからこんな投稿がされた。「ようやく犯人が特定されました」。前回放送後に警察の態度が変わり、事態が一気に進んだという。しかし、逮捕はされておらず、補償能力がなければ被害損になってしまう可能性もあるそうだ。
なぜ逮捕にならないのか、補償はどうなるのか。8日の『ABEMA Prime』で改めて話を聞いた。
■番組出演が捜査に影響? なぜ逮捕されない?
容疑者が特定されたのは12月末。蓑津氏は前回の番組出演後、警察から連絡がきたそうで、「急に現場検証の日をいつにしようかと。私の聴取もすぐ進み、やっと状況を聞くことができた。番組を見ていただいた方からも問い合わせをしていただいたようで、かなり進んだと感じる」と説明。
さらに、「担当がかなりベテランの方に変わったり、連絡をしてくれたり。こちらから状況を聞くと、一応答えてくれるようにはなった」と変化を感じたという。
警察からは「裁判所に送り、判断を委ねている」との連絡。「逮捕にはならないと思うと言われ、当然疑問に思ったが、裁判所の話はうやむやだった。私もようやく弁護士をつけて、こういう経緯なんじゃないか?と見解を聞いたが、正直納得はしていない」「私は足が悪く出歩くこともできなかったのに、年末年始を犯人が在宅でぬくぬくと過ごしていたのかと思うと、怒りしかない」と心境を明かした。
YouTuber「弁護士ビーノ」として法律解説をしている弁護士の日比野大氏は「車が証拠で残っている可能性はある一方で、場合によっては逃亡してしまう恐れもある。軽い罪ではなく、蓑津さんが重いけがもされているのに逮捕しない理由がわからない。もしかすると、本人が何かしら証言をするといった話が警察との間であったのかもしれない」と推察。
一方、元埼玉県警捜査第一課で犯罪評論家の佐々木成三氏は、逃走のおそれには懸念を示しつつも、逮捕なら勾留20日以内に起訴を判断する必要があるのに対し、在宅捜査なら日数に関係なく捜査が可能な点をあげた。
日比野氏は「目撃者がいたり証拠が固いからこそ、警察もちゃんと連絡して事故証明を作っている。起訴しないということはなく、(裁判を)期待していいのではないか」との見方を示した。
■相手から補償を受け取れない可能性?
蓑津さんは相手から賠償を受け取れない可能性があるという。自身は任意保険や貯金等の自己負担で、生活や病院に対応している状況。容疑者は自賠責保険未加入が判明し、任意保険の加入も不明。支払い能力がなければ泣き寝入りになる可能性もあるという。
日比野氏は「自賠責保険に入っていないのは、車検切れのパターンが一番多いと思う。任意保険に加入しているかどうかが大きい」と指摘。
自賠責・任意保険が未加入でも、民事裁判で給料差し押さえはできるという。また、支払い能力がない場合は、国交省の政府保障事業が損害を補填する。加害者が「ひき逃げで不明」か、「自賠責未加入」の時のみ利用可能で、自賠責と原則同じ最低限の補償をしてくれる(上限:傷害120万円、死亡3000万円)。一方で審査期間が長く、給付まで半年~1年かかることもあるという。
日比野氏は「蓑津さんは足の指が動かないという後遺症もあるので、かなり大きな金額の慰謝料が取れる可能性が出てくる。そうなると、自賠責の補填額だけでは無理があると思う」と説明。
さらに、民事訴訟が選択肢になってくるとし、「こういった場合の刑事事件だと、勾留されている間に示談をとって終わらせるパターンが非常に多い。それが逮捕されていないとできないので、相手にもプレッシャーがかかってない状況だ。ただ今回の件は、福岡市内の方で車を持っているので、支払い能力が全くゼロということはないと思う。相手が破産しても損害賠償から免れることはないので、ずっと追うことができる」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)
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