日本の人口は去年7月時点で約1億2450万人。出生率が下がり、高齢化が加速する中、国の研究機関では、2056年には1億人を切り、2100年には6278万人に半減すると推計されている。
【映像】“子どもは今すぐにでも…” 涙ながらに語る田中萌アナ
そんな中、9日に岸田総理に手渡されたのは、提言「人口ビジョン2100」。日本商工会議所の三村明夫前会頭らによる「人口戦略会議」がまとめたもので、2100年の段階で人口8000万人規模で安定させ、成長力ある社会を構築することを目指すべきだとしている。また、三村氏は「民間も危機意識を十分持っていなかった。人口減少のスピードをとどめるのが我々の責任だ」と危機感をあらわにした。
今後、日本はどうやって人口減少を止めるのか。将来のシナリオと必要なアプローチは何なのか、『ABEMA Prime』で考えた。
■人口減少 2100年の“4つのシナリオ”
山梨県は2023年6月、人口減少で全国初の非常事態宣言を発出し、青森県では2004年から2022年の間に20代の人口が半減するなど、各地で人口減少が深刻化している。
人口戦略会議実務幹事で北海道総合研究調査会理事長の五十嵐智嘉子氏は「日本全国で人口が減少し始めたのがだいたい2008年で、地方は先立って進んでいる。人口の変動は社会増減と自然増減の総和。地方は、東京あるいは政令指定都市に人口が転出してしまうという社会減から始まった。さらに、出生率が低下する自然減も進んでいるので、ダブルパンチの状況だ」と説明した。
「人口ビジョン2100」では、次の4つのシナリオが示されている。出生率急回復のAケース(人口9100万人、高齢化率28%)、出生率回復のBケース(人口8000万人、高齢化率30%)、政府の中位推移のCケース(人口6300万人、高齢化率40%)、政府の低い水位のDケース(人口5100万人、高齢化率46%)。
このうちBケースを目標とすべきだとしているが、そもそもどれも人口増加は見込めない。五十嵐氏は「出生率2.07が人口置換水準で、AとBは定常化するケース。CとDはさらに低下していくという推計になるので、いかに定常化させるかが1つの目標になる」と述べた。
さらに、人口減少がこのまま進んだ場合の2つのリスクを指摘する。
「1つは人口減少のスピード。これが非常に速いと、縮小・撤退戦略を強いられ、人々の縮小マインドに拍車がかかってしまう。つまり、選択肢の幅が狭い社会になっていく危険性がある。もう1つは人口構造の問題で、子育てを応援する社会を作るためには、世代の分断を生まないのが基本的なこと。高齢化そのものも止めなくてはいけない」
そうした中で取り組むべき戦略が、定常化戦略と強靭化戦略。「この両方をいっぺんにやらないといけない。出生率は個人の選択によるものではあるが、“結婚して子どもを持ちたい”と希望する方が、さまざまな制約の下で諦めてしまっている現状がある。そこを諦めなくていい社会の仕組みを作っていかなくてはいけない。一方では、インフラの問題もあり、縮小する社会にいかに対応するかも考えていかないといけない」と主張した。
■井口綾子&田中萌アナ「子どもを産みたい気持ちになれない」
タレントの井口綾子は「私はもうすぐ27歳だが、今は子どもを産みたいという気持ちにはなれない。仕事をしたいとなると、キャリアに関わることが目に見えているから。そこに影響がないとか、減税されるとったメリットがあるならもう少し早い段階で考えるが、今は自分を優先してしまう」と述べた。
テレビ朝日の田中萌アナウンサーも同様に語る。「私は今32歳で、結婚してないし子どももいない。ただ、誰かが自分の卵子で産んでくれて、仕事をしている時間も誰かが見てくれる環境があるなら、今すぐにでも欲しいと思う。いくら夫婦で支え合うと言っても自分の負担が大きい気がするし、今できていることができなくなるのは苦しい」。
こうした声に五十嵐氏は「この提言の中で、“結婚して子どもを産んでくれ”というメッセージを伝えているつもりは全くない。若い世代が“結婚したい、子どもを持ちたい”と思った時に、それを阻害する要因を取り除くような社会を作るために何ができるかを考えてほしいと思っている。我々世代も逃げ切れると思ったらいけない」と語った。
脳科学者の茂木健一郎氏は「政治の言葉が届いていない気がしている。科学者の立場から言うと、出生率が左辺にあって、右辺の方程式が何なのかを明らかにしていない議論はナンセンスだ」とした上で、「米カリフォルニア工科大学にフクロウの飼育をしていた研究室があった。子どもを産む条件がずっとわからなかったが、餌を食べ切れないぐらいあげると、それがトリガーになることがわかった。生物が子どもを作るにはいろんな条件があって、日本はそのスイッチがどう入るのか」と疑問を呈する。
「EXx」取締役CTOのtehu氏は「この話を20年間やってきているわけで、“どうすればいいか誰もわかっていない国”から脱することだと思う」と主張。
「今の日本人の社会観にあったトリガーを見つけることはたぶん無理だ。若者の声を聞くといっても、お二人の話はそうだよねと思う。こうした方がいいというのは想像できても、ルートが見えない。産休の半年なり1年なりの期間はどうしようもないと思うし、取れないなら子どもを産むことすらできない。ただ、それ以外の部分に関しては、サポートができる。もうお金をジャブジャブ入れるしかないと思う」と持論を語った。
これらに対し、五十嵐氏は「お金だけでは育てられず、やはり“人の手“が必要。成功している地域もあるが、“小さい地域だから“と言われてしまうのは困る。諦めたらそこで試合終了なので、縮小社会に突入する前にやらないといけない」とした上で、「今回は中間報告だ。これを見てみなさんがどう考えるか。私も子育てを経験したが、父と母や地域の方など、ありとあらゆる手を借りた。我々が育てた時とは環境が違う中で、どう行動するのがいいのかという情報発信をして欲しい」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
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