3人組の人気バンド「ヤバイTシャツ屋さん」のメンバーのある発信が議論を呼んでいる。
「『痴漢をするな」こんな当たり前のことを今更言わないといけないのが悔しい。先日のライブ中に痴漢被害に遭った方がいた」(ヤバイTシャツ屋さん・こやまたくやのXより)
こう説明した上で、「ライブを中断させたくなくて、その場で声をあげられなかったようで申し訳ない」と謝罪したのだ。その後、SNS上では、ライブ中に痴漢に遭った場合どうすればいいのか、ファンやアーティストがアイデアを出し合うなど議論になった。
受験シーズンの今、遅刻を避けるために被害に遭っても訴えないことを見越したとみられる「痴漢日和」といった投稿も問題に。大学入試センターは対策として追試の対象としている。
後を絶たない痴漢被害。気兼ねなく声をあげられるようになるためには何が必要なのか。そもそもどうすれば被害をなくせるのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■グラドル「泣きそうになるくらいトラウマ」
グラビアアイドル・現役女子大生の麻倉瑞季は「私もライブフェス中、痴漢に遭ったことがある」といい、「ライブは盛り上がるとダイブがある。人が転がって来るが、それを受け止めるために両手を上げ、自由がきかない状態で、後ろから胸を揉まれた。話していて今も泣きそうになるくらいトラウマだ」と明かす。
声をあげられなかったのは「盛り上がっている中で演奏を止めてしまったらしらけるというか、“黙っとけ”“じゃあ来るな”と言われてしまうんじゃないか、という怖さがあった」と話した。
ヤバイTシャツ屋さんのこやまは、Xに「遠慮せずに声を上げてください。演奏を止めてもらってもMC中でも、僕らは全く問題ありません」「『何かあったらスマホを掲げる』というアイデア、賢い…。簡易的だけど画像を作ったので、お守り代わりに保存しておいて!」と“SOS”画像を添付して投稿している。麻倉は「演者に申し訳ないと思う一方、声をあげにくい状況でそういう解決策をとってくれるのはありがたい」とコメント。
性暴力救援センター・東京理事で弁護士の川本瑞紀氏は「人が密集し、ターゲットに近づきやすく、群衆の中に紛れることができる場所で痴漢は起こる。被害者が声をあげられないことも知っている。それがいつでも声をあげられる環境になっていると、ライブ会場は“加害者にやさしい環境”から、“被害者にやさしい環境”に変わる」と述べた。
■痴漢被害が特に多い電車内 第三者が声かけを
痴漢被害の実態は、性別は女性が87%、男性が12.2%。時期は軽装になる6~7月が多く、場所は電車内が81.2%と圧倒的に多い。
電車内には、事件やトラブル発生時のための“SOSボタン”があり、痴漢を目撃した場合も押すことを関東の主要鉄道各社は推奨している。しかし、他人に迷惑をかけてしまうなどの理由で躊躇してしまうのではないか、という議論もある。川本氏は「押せないと思う。朝っぱらから電車で痴漢されたら、体は固まる。被害者が何かすることを期待してはいけない」と指摘。
東京都の痴漢被害実態把握調查によると、第三者が加害者を注意、被害者に声かけ、加害者を引き離すなどの対応をした場合、痴漢の9割は止まったという。「周囲の人が痴漢を防ぐ」考えを広め、周囲の介入行動を増やしていくことが重要だとしている。
川本氏は「被害に遭っていると思われる女の子がいたら“今何時ですか?”と声を掛ける。“痴漢に遭ってるよね?”と聞いたら、その人に判断させないといけなくなるからだ。被害者は頭が真っ白なのでそんなことできない。私も腕が見えない位置で判断できないこともあるし、偶然だと言われら…というのがあるので、考える前に時間を聞く」と説明した。
■「男女の対立にして得をするのは痴漢」
痴漢の罰則には刑法の「強制わいせつ」や東京都の「迷惑防止条例」があるが、被害者が届けを出さないことも多い。「面倒だった」「時間がなかった(遅刻等)」「痴漢が勘違いだったら恥ずかしい」「犯人が捕まらないと思った」「ショックで何も考えられず」などが理由にある。
また、加害者の認知のゆがみとして、精神保健福祉士の斉藤章佳氏は著書『男が痴漢になる理由』で、「露出の多い服を着ている女性は痴漢されたい」「被害者が嫌がるのは最初だけ。あとはよくなる」「今週仕事を頑張ったから許される」「この路線は多いと聞くから自分もやっていいだろう」などをあげている。
EXITの兼近大樹は「こういうことが起こると女性と男性の対立になりがちだが、“やらない男性”も被害者だと思う。女性側が“男はこういうことをしてくる”、男性側も“なんでそんなこと言われないといけないんだ”とお互い批判するのは毎回意味がわからないし、話がややこしくなる。批判されるべきは個人で、それ以外の人は分けるべきだ」と疑問を呈する。
川本氏は「善良な男性の中に一部の人が紛れていくので、痴漢した人を非難しなくてはいけない。信じたくないと思うが、1人の痴漢が毎日2、3人の被害者を生み、1年でそれが積み重なっていく状況がある。その実態を踏まえた上で、痴漢した個人を非難する。女性だけでなく、男性も結構被害に遭っているので、本当に男女の対立にしたくない。それで得するのは痴漢だからだ」と訴えた。(『ABEMA Prime』より)
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