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 千葉市の蘇我駅から東京駅まで43キロを結ぶJR京葉線。「通勤快速」とラッシュ時の「快速」を廃止するという、JR東日本が発表したダイヤ改正が物議を醸していた。しかし沿線の住民や企業、そして千葉市など自治体の猛反発があり、先週、JR側は一転して「廃止の見直し」を決定。全廃方針を改め早朝時間帯に上り2本の快速を設定すると発表した。

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 そもそも今回の「快速廃止」は混雑の平準化や各駅停車しか停まらない駅の利便性向上などを狙ったものだというが、この2点を両立するにはどうすればいいのか。『ABEMA Prime』で鉄道のあり方を議論した。

■千葉・一宮町長「“東京への直結性”があるからこそ生き残っている」

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 「快速廃止」への抗議と要望書をJRに提出した千葉県一宮町の馬淵昌也町長は、「県知事や千葉市長、内房の皆さん、経済界も声をあげ、JRにはそれを聞いて歩み寄りを見せていただいた。私は“速達性”という言葉を強調したが、“そこは必要だったかもしれない”と言っていただけたことはありがたい」とコメント。

 一方で、「外房と内房からの1本ずつの快速が残るだけで、他はなくなってしまうので、これで満足というわけにはいかない。日本全国が人口総崩れの中で、一宮町は維持している。移住者へのアンケートで、自然が豊か、サーフィンができる、土地が安いと。これらは他の自治体にもあるものだが、“東京への直結性”があるからこそ生き残っている」と快速の重要性を指摘する。

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 JRがあげた混雑の平準化については「京葉線の乗車率は、通勤快速が70%、各駅停車が130%で、これを平準化したいというのは理解できる。ただ、いろいろやり方があるはずで、上総一ノ宮から直結する快速をなくすという論理しかないのが納得できないし、相談もなかった。JR東日本あるいは千葉支社の経理が、我々のエリアの路線存廃で大きく経営が変わるなら受け入れる余地もあるが、単年で黒字。コロナで受けた乗客数の戻りも、上総一ノ宮駅と茂原駅は“目標の8割を実現した”と言っていた」と述べた。

 前明石市長の泉房穂氏は「私も市長になった最初の数年間はもどかしい思いがあった。そこで、JR西日本と協定を結んで日常的に会話するパイプを作ったのと、プラスの要素を提案すること。JRが持っている社宅の建て替えの容積率を緩和した。その結果、1本だけだが各駅停車の駅に特急が停まるようになった。今回、後から変更したのは事前の調整が足らなかったということ。駅のバリアフリー化やホームドア設置などについても、国・自治体・鉄道会社で3分の1ずつ負担している公共性の高いものなので、時間が戻らない以上はこれからの協議が必要だ」との見解を示す。

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 これに馬淵町長は「変える権限は先方が持っているので、そこを否定するものではない。ただ、地域への影響が甚大なので、十分な協議の時間と場を持ちながら進めてほしい。社宅の話は出ていないけど、いろいろな良い案が出るかもしれない」と訴えた。

■「各停にする必要はない」“ダイヤ改正案”を提案

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 JR東日本で17年間勤務し、交通計画コンサルティング「ライトレール」社長の阿部等氏は今回の件について、「利用者の利便性と運行会社の効率性のせめぎ合い、という話ではない」と指摘する。

「各駅停車は快速よりもコストが高い。単純な話で、車両と運転手と車掌の回転効率が下がる=コストが増えるからだ。東京・大阪間の新幹線も、のぞみ号よりこだま号のほうが2.5分の4倍(1.6倍)のコストがかかる。電気代はストップ&ゴーを繰り返すほど余計に食うし、ブレーキディスクも削られる。(運賃は)快速と各停で同じだ。今回の話は利便性vs運行効率性ではなく、利便性悪化&運行効率悪化。毎日の長距離の利用者はものすごくいい売上になるのに、それを自らカットする話だ」

 また、対策があるといい、「6時台の快速は『新浦安駅』を通過させる」「7時台の通勤快速は『海浜幕張駅』に停車させる」という改正案を提案する。

「混雑の平準化に関しては、朝の6時台の快速2本が前後の普通より混む。それを解消するのに各停にする必要はなく、新浦安を通過させることによって利用者が減り、前後と平準化できる。7時台の通勤快速は今、蘇我から新木場までは誰も乗れない。そこで海浜幕張に停めてあげると、そこそこ乗るようになって前後とバランスが取れる。それ以外の時間帯は混雑格差が大きくて困っている列車はない」

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 17年間の専業主婦を経て外資系企業で働く薄井シンシア氏は「民間企業は自社の利益を考えなければならないが、これだけ反対意見が出ることを予想できなかったのは、大企業としてはお粗末」と指摘した上で、「JRの最近の目線は、鉄道ではなく不動産業。それなら千葉県を大事にし、まちづくりも考えての決断にしなければならない」との見方を示す。

 阿部氏は「JR東日本の社長交代の発表時にも、“関連事業をいかに伸ばすか”というのが見出しに出るぐらい、鉄道事業をあまり重視していない。小林一三が伊丹を開発できたのも、その時代の最先端の鉄道を実現して、便利な移動をやったからこそ。鉄道の利便性を下げて沿線宅地開発で儲けるというのはあり得ないことで、沿線価値を上げてこそ成り立つ話だ」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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