東京地裁に破産を申請した「空飛ぶバイク」を開発した日本のベンチャー企業「A.L.I.Technologies」が、破産手続き開始決定を受けた。
【映像】給料が払われず…空飛ぶバイク開発会社の元社員が証言
最高時速100キロで最大40分間飛行することができ、価格は7770万円。走れるのはサーキットなどの私有地のみで公道は走行不可。200台限定で予約販売を開始2022年12月にはSBCメディカルグループ相川佳之代表が購入し納車したことが話題となった。しかしA.L.I.Technologiesは1月10日に破産手続き開始が決定し、事実上倒産。報道によれば研究開発投資がかさんだことで赤字決算が続き、その負債総額は11億6750万円にのぼるという。
元社員に話を聞くと、「私が知る限りではスポーティーな感じ。かなり見た目を重視しているがために加工費がかかるとか、そういった面で高コストになってしまった。ダサくてもいいから実用的で途上国の人でも買えるようなものという思想で作っているのであれば、全然違う形でもっと安く作れた」と説明。
2022年12月にはすでに社内では事業を不安視する声があり、元社員は「それを解決するために上場することでお金を集めようと企てていたものの、思っていた通りにはできずほとんど資金調達ができなかった。とうとう資金繰りに窮したというところ」と内情を語った。当時の経営陣は資金調達のために東証への上場を目指していたが「資金的に厳しい」という判断がなされたことからアメリカNASDAQでの上場に切り替え「SPAC」という特殊な方法で上場することにしたという。
SPAC上場とは事業の実態がないペーパーカンパニーが先に上場し、株式市場から資金調達をおこない、未公開会社を買収し合併すること。未公開会社は煩雑なプロセスを経ることなく上場することができる。
経済ジャーナリストの内田裕子氏はSPAC上場について「投資家はどんな成長性の高いベンチャー企業を買収してくれるのであろうと、それを期待して買収目的会社(SPAC)の株を買う。買収したベンチャー企業がその上場会社になれるという『裏口上場』という言われ方もあるような、そんな手法」と説明した。アメリカでは有名なよくある方法と言われるが、日本ではA.L.I.Technologiesが初。SPAC上場では投資家のリスクを軽減するために上場時に出資金を引き上げるかそのまま継続するかの判断ができるが「危険」と判断されたのか、当初からの出資者たちの99パーセントが資金を引き揚げたという。内田氏は「本当に素晴らしいベンチャーだったら自力で上場できる。でもやっぱりそれができないということは何かしらの困難がそのベンチャー企業にはある」と指摘した。
実際に出資した会社を直撃すると、出資会社担当者は「今回の破産はニュースで突然知った。というのもアメリカNASDAQに上場してから会社の実態がまったく把握できず、日本人スタッフも一掃されたという噂も聞いたので、私たちは早めの段階で株を損切りしていた」と明かした。
資金調達に失敗したことによって給与の未払いが始まり、元社員は「5月分の給与が6月20日に払われるはずが払われなかった。それ以降、給料が払われなくなった。3ヵ月から4ヵ月ぐらいの未払いの方が多い」と説明。さらに「まだ夢物語で比較的期待値だけでお金が集まっていた時期にドカンと何十億円か調達した。そのお金をどんどんどんどん溶かして研究開発をやっていて先細っていって、自転車操業と言うか、頂いていたお金をどんどんどんどん使っていって、あとがなくなりつつあった」と切実だった内情を暴露した。
元社員たちは国の未払賃金立替払制度に頼るべく、労働基準監督署に届け出を出しており「最悪のケースで(会社が)自己破産をしなかったらゾンビ状態で、お金を支払う能力がなくて従業員はただ指をくわえて泣き寝入り。最悪そうなっていた。今回(会社が)自己破産をしてくれたからよかった。」と胸をなでおろしていた。
その一方で、「世の中のベンチャーは地道にやっているところがたくさんある。社会的にベンチャー企業ってヤバいやつらだと、そんなことを思われるととても違う。今回は特殊な事例。」と訴えた。
この件に関して、エア・モビリティに詳しい水野二千翔氏は「2025年の万博を基準にして2020年代後半に商業飛行が始まって、2030年代からバンバン飛び始めるロードマップが描かれている」として「2020年代の半ばからある程度飛び始めるっていうところは実現するのではないかなと考えている」と解説。「開発をするための資金を投資家なり銀行なりからお金を投資してもらってそれで開発をする。残念ながら倒産してしまうような会社は出てきてもしょうがない」と語った。
今後の具体的な可能性については「いま想定されているのが貨物輸送。荷物を載せて物を運ぶ物流の面でも非常に期待されている。やはり渋滞につかまることはありませんから、空から救急車がやってくるというような使われ方もできるのではないか」と期待を寄せた。
ジャーナリストの青山和弘氏は「まだ、空をボンボン飛ぶみたいな時代にはなってない」と指摘すると「万博も空飛ぶクルマの規模を縮小するという話は出てきている」と、大阪・関西万博での運用について語った。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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