アメリカの一部地域で学校の教師によるストライキが発生し、休校が続いている。小児精神科医でハーバード大学医学部准教授であり、今まさに自身の子ども達が影響を受けている内田舞氏に話を聞いた。
プラカードを掲げ抗議をしているのは、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン郊外の学校で働く教師たち。地元メディアによると、賃金や待遇を巡る交渉がまとまらず、ストライキが続いているという。
━━内田さん自身、このストライキをどのように受け止めている?
「長きにわたったパンデミックによってアメリカの子どもたちの学習・メンタルヘルスには大きな影響が出ており、向き合っている先生方の負担が高まっていると感じている。彼ら、彼女らの待遇を改善してもらいたい」
━━日本の場合、どれほど劣悪な環境でも『違法であるストライキを行って状況を打開しよう』と一丸となるのは難しい。アメリカの教師たちは価値観を共有できているのか?
「教師協会の98%がスト決行に投票したことからも一致団結が伺える。日本の場合、『意見や不満を伝えればそれがいい変化に繋がるはずだ』という信頼できる土壌がないため、行動に移せないのでは。空気を読んだり、ガマンしてやり遂げるという美徳は悪いことではないが、同時にそんな土壌も育ってほしいと感じている」
━━教師がストライキを行う、という事態を子どもたちはどのように受け止めている?
「実はストライキの1週間ぐらい前に子どもたちに『こういったことが起きる可能性がある』と学校でも話されており、校長先生からも親たちに伝えられた。さらにストライキで何を訴えるかというようなガイドラインも送られた。『不満があった時にはガマンor辞めるの2択じゃない』といったメッセージを子どもたちは受け取ったのでは」
「もちろん教師にも葛藤があり、誰もストライキを望んで実行したわけではないと思う。やはり、学校の予算を決める交渉の場面などでどうしても教師たちの要求とマッチしない状況になってしまったようだ。教師たちは葛藤を抱えながら、長期的な視点で動いたように感じる」
━━ストライキが違法な中、教師たちが立ち上がったというが親たちの反応は?
「マジョリティーは教師を応援するスタンスであり、一緒にデモに参加したり、温かい飲み物や食べ物を届けるなどのサポートをしている方も多い。とはいえ、サポートをしながらも『大変だ』という思いを抱えている方、また数は少ないが声を大にしてストライキに反対している親もいる。状況として、シングルマザー・シングルファザーや小さい子どもがいながら仕事に行かなければならないという家庭、特別な支援が必要な子どもを育てている家庭もあるのだ。ストライキが長引けば長引くほど、不安の声も大きくなると思われる」
「ただし、総合的な見方としては『教師たちがギリギリの状況で教育を続けるのではなく、教育の優先順位を高く設定した学校区で予算と人員を増やした状況で教育を受けた方が子どもたちのためにもいい、という視点が共有されているのではないか」
━━ストライキの着地点は?
「難しいところだ。マサチューセッツ州では教員がストライキを起こした学校区は昨年度から数えて6区目だが、1日で終わった学校区もあれば1週間以上続いた箇所もある。さらにアメリカ全土で見ると1カ月ほど続いたところもある。今のところ全く歩み寄りが見られないので、もう少し時間がかかりそうだ。時間が経てば経つほどサポートする親からの不満の声も大きくなる。良い着地点に行き着いてほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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