1月28日(日)有明アリーナにて「ONE 165: Superlek vs. Takeru」が行われ、秋山成勲がニキー・ホルツケンと1R=ボクシング、2R=ムエタイ、3R=MMAの特別ルールで対戦。キックボクシングが本職のホルツケンに果敢に挑んだものの、ホルツケンの強打の前にKO負けを喫した。

 今月11日の記者会見で今大会への緊急参戦が決まり、元GLORY世界ウェルター級王者のホルツケンとONE特別ルール=ミックスルールで対戦した秋山。通常ミックスルールは打撃のみのルールとMMAルールを交互に行うものだが、この一戦はオープンフィンガーグローブ着用で、1Rはボクシング、2Rはムエタイ、3RはMMAという過去に類を見ないもの。秋山にとっては自分の土俵であるMMAルールに持ち込むまで、立ち技ルールを3分×2R戦い抜かなければいけないという過酷な戦いだ。
 
 試合前に秋山は「スパーリングは1年以上やっていなくて、練習らしい練習が出来たのは2週間ちょっと~20日くらい。準備期間は短かったですが、20日間しっかりやってきたつもりだし、それがどこまで通用するか。チャンスがあれば(1・2Rでも)本能に任せていきたい」とホルツケンに挑む想いを語っていたが、現実は厳しかった。

 試合のゴングが鳴るとホルツケンがじわじわとプレッシャーをかけて左フックで先制のダウンを奪う。なんとか立ち上がる秋山だったが、ホルツケンが左ボディからの右ストレートでダウン追加し、レフェリーが試合をストップ。試合時間は1分40秒、ボクシングルールで秋山がKO負けするという形で決着がついた。

 試合後にインタビュースペースに現れた秋山は「年には勝てねえのか。悔しいね。ルールが不利だ、どうだと言われましたが決めたのは俺だし、言い訳するつもりはないし、これがベストな試合だった」と心境を語った。

 やはり約3週間の準備期間、1年以上もスパーリングから離れているなかでの調整では「正直に言うとコンディションは40くらい」だったことは事実。ルール的にも「打撃のスペシャリストを甘く見たらだめだと痛感した。次はMMAからやらないか?って言いたいかな。これミックスルールじゃないよ、と。心のどこかにそう思っている悪い人間がいます(苦笑)。(最後のパンチは見えていた?)見えなかったです。さすがです。でもMMAだったら反対になってたんだけどね」というのが本音だろう。

 そのうえで秋山は「準備期間がないというのは、自分がやると決めた以上は言い訳。弱かった俺が悪いし、仕事にかこつけて練習不足だった俺が悪い。すべて俺が悪い」と敗因は自分にあるという姿勢を貫いた。

 秋山は現在48歳。試合が決まるたびに幕引きを考える年齢・キャリアでもある。会見の冒頭では「年には勝てねえのか」という言葉も出たが、まだ闘争心が衰えたわけではない。

「自分で(幕引きする)線を決めてしまえば、そこで終わってしまいますから。ただ何よりもうすぐ50歳なんで。いいおっさんじゃん。そこに対しては私自身も、マラソンの有森(裕子)さんじゃないけど、自分をリスペクトしたいと思います。まだまだ出来ることを世界のみんなが見てくれているので、オッサンパワーみたいなものを自分で信じてやってきましたが(自分の)弱いところが最初の一言に出たのかなと。『年には勝てねえのか』ってポロっと言っちゃいましたが……まだまだ自分を信じたいかな」

 今、秋山にとっての格闘家として目標はONE初の韓国大会開催、そしてMMAで勝つ姿を見せることだ。結果にはつながらなかったが、この準備期間でホルツケンとミックスルールで戦うことが“挑戦”だったことは変わらない。「この試合を受けるべきではなかったという想いはないか?」という質問に対して、秋山は「やると決めた以上、言い訳はすることなく、負けは負け。打撃のスペシャリストと打撃のルールで戦えた経験は、私にとって必ず大きな糧になると信じている」と答えた。48歳・秋山成勲の挑戦はこれからも続いていく。

文/中村拓己

写真/ONE Championship

「青木さんは“持っている”。やった方がいい」青木真也の背中を押したケンドー・カシンの一言、試合数時間前の相手変更の裏側
「青木さんは“持っている”。やった方がいい」青木真也の背中を押したケンドー・カシンの一言、試合数時間前の相手変更の裏側
魔裟斗、敗戦直後の武尊を激励した感動の瞬間 「超燃えたよ」「もっと強くなるぞ」カメラが捉えた2人だけのやりとり
魔裟斗、敗戦直後の武尊を激励した感動の瞬間 「超燃えたよ」「もっと強くなるぞ」カメラが捉えた2人だけのやりとり