VHSを再生するビデオデッキの国内生産が終了して7年。デッキが壊れて見られなくなっている人も多いのではないだろうか。カセットテープ、レコードなどレトロブームが再燃しているなか、ニュース番組『ABEMA Morning』は、VHSテープを利用したサービスを提供する喫茶店を取材した。
都内にある会社「ダビングコピー革命」では、VHSテープの映像をDVDなどにデータ化して残すサービスを提供している。こちらでは子どもの運動会や結婚式など、大切な思い出が記録されているVHSテープのダビング依頼が年々増えているとのこと。
「8mmテープ、ミニDVなどを合わせると月に約2万本。VHSだけで7〜8000本。コロナ禍以降から需要が増え、2020年くらいから比べて2、3倍増えている」(ダビングコピー革命・四方田理さん)
こうした中、いま若い世代から注目されている“VHSスポット”がある。
東京・下北沢に2023年10月オープンしたVHSで映画が視聴できる喫茶店「TAN PEN TON」。白を基調とした店内にはアート作品のようにVHSがズラリ並べられ、テレビも薄型ではなく「ブラウン管テレビ」だ。ビデオデッキも中古品を集めたとのこと。
「YouTubeなどは関連動画で自分が好きなモノを勝手にAIで選ばれていく。(映画を)VHSにしてカジュアルに“自分で作品を選んでデッキにVHSを入れて見る”という体験が、むしろ若い子たちには新しく見えると思い、VHS喫茶店をつくった」(VHS喫茶店「TAN PEN TON」代表・鈴木健太さん、以下同)
こう話すのは、映画ディレクターの鈴木健太さん。映画プロデューサーの林健太郎さんと一緒にVHS喫茶店「TAN PEN TON」を立ち上げた。ここで見られるVHSは主にショートフィルムや若手クリエーターの作品だが、そこにも理由があると鈴木健太さんは話す。
「ショートフィルムとか若いクリエーターの作品をたくさんの人に知ってもらいたいと思ったときに『(自主映画など)映画を出す場所がないよね』という話になり、映画をつくることができても、どう届けるか分からない人が意外といる。こういう体験も映像の楽しみ方としてはあっていいのではと思い、いろいろ人の声を聞きながら(VHS喫茶を)つくった」
映画を「どう届けるか」という課題にVHSを選んだ2人。実はVHSにはあまりなじみがない世代とのこと。現在27歳の鈴木さんは、幼少期にアニメなどを見ていた記憶がある程度なのだとか。
「映像は持てるものであるところが個人的には大事。上の世代だとまた違う感覚で『なんでベータマックスしなかったのか』など意見もあったりと、世代によって感じ方が全然違う媒体」
一方で、VHS世代の来店するお客さんは次のように語る。
「VHSをデッキに入れた感触とか、今『巻き戻し』って言わないじゃないですか?でもVHSは巻き戻せる。そういう懐かしさもある」(30代男性)
「縦型動画をアナログテレビでVHSを見るのも変わった感覚でおもしろい」(40代男性)
感覚は違うがそれぞれの世代に刺さっている様子。喫茶店としてふらっと立ち寄ったついでにVHSで映画をみられるので、“新しい視聴体験”をすることができるのも魅力の一つだ。
また「TAN PEN TON」ではVHSの購入も可能で、価格は3300円(税込)。最初に買ったお客さんは海外の方だったとのこと。鈴木さんは「インテリアとして買っていた」と話している。
最後に「TAN PEN TON」の鈴木さんは「街にブラウン管テレビを置いて『VHSフェス』みたいなことができたらいいな」と期待を込め、今後の展望を話していた。(『ABEMA Morning』より)