日本時間の1月28日に開催されたWWE「ロイヤルランブル」。男女それぞれ30名ずつが参加する時間差バトルロイヤルを行い、優勝者は祭典「レッスルマニア」でWWE最高峰のベルトに挑戦できるこの大会は、コーディ・ローデスとベイリーが優勝し、それぞれ王座挑戦権を獲得した。この「ロイヤルランブル」生放送終了後、今回からWWE実況チームに加わった塩野潤二アナウンサーと解説を務めたプロレス格闘技ライター堀江ガンツが、興奮そのままに感想を語り合ったら、いちファンの居酒屋トークのようになってしまうまさかの事態に…。そんな事後対談で、二人が仕事を忘れ? 熱く語り合ったこととは、一体…。
【映像】実況アナと格闘ライターが大興奮! 男子ロイヤルランブルの模様
ガンツ WWE初実況となった「ロイヤルランブル」はいかがでしたか?
塩野 いや~、面白かったですね。いきなりですけど、ガンツさんは今回解説をやるにあたって、どれくらい調べましたか?
ガンツ ぼくは解説の仕事が決まってから、ちょこちょこ資料作りを始めたんですけど。「ロイヤルランブル」前の1週間くらいは、空いてる時間はほとんどWWEの映像を観てましたね(笑)。
塩野 やっぱりそうなんですね。僕も学生時代の受験勉強みたいにやりましたから(笑)。
ガンツ でも、学校のテストだと「この問題集の中から出るから勉強しとけよ」みたいなのがありますけど、ロイヤルランブルって誰が出てくるかわからないから、余計大変だったんじゃないですか?
塩野 そうなんですよ。サプライズが必ずありますからね。だから「実況1発目が、生放送のロイヤルランブルか!」って、正直思いました(笑)。
ガンツ でも、“勉強”している間、楽しくなかったですか?
塩野 そう、楽しかったんです! 表面的な情報だけじゃなくてさらに深掘りしたくなったので、余計に時間がかかったんですけど。今回、WWEについてしっかり調べたことで、もっともっと知りたくなりましたね。それが一回の放送で全部出せないのがこの仕事の難しさですけど、今後に活きていくんだろうなと思います。
ガンツ 近年のWWEは大河となる大きな物語だけじゃなく、細かい物語が各スーパースターにありますからね。
塩野 トップ中のトップだけじゃなく、テレビに出る人はみんなそれぞれ闘う理由や物語がありますよね。だからロイヤルランブルって総勢30人が参加するから、一見どこを見ていいかわからなくなりそうじゃないですか。でも、ちゃんと各々のストーリーが反映されていて、それぞれ意味があって闘ってるんですよね。だから観る側も散漫にならない。
ガンツ 一回のロイヤルランブルで、いろんな“因縁の続き”が見られますよね。
塩野 ぼくが実況しながら笑いそうになったのは、ダミアン・プリーストが入ってきたとき、R-トゥルースに一直線で殴りに行ったことですね(笑)。
ガンツ あれはまさに1週間前のRAWの“続き”ですよね(笑)。
塩野 RAWで行われたダミアン・プリーストとドリュー・マッキンタイア因縁のシングルマッチのまさに佳境でR-トゥルースがリングサイドに現れて、ダミアンに対してTシャツ売上のロイヤリティわたしに来たじゃないですか(笑)。
ガンツ 「なんで試合中に!」っていう(笑)。
塩野 「いま、そんなことしてる場合じゃないだろ!」って揉めてね(笑)。その隙を突かれてダミアンは敗れたわけじゃないですか。そしたら6日後の『ロイヤルランブル』でダミアンが登場したら、一直線にR-トゥルースをボコりに行くっていう。あれは実況でホントに笑いそうになりました(笑)。
ガンツ R-トゥルースは最高ですよね。その前には、間違えて女子のロイヤルランブルに登場してすぐ排除されたりとか(笑)。
塩野 ああいう愛すべきキャラクターがいるのがいいですよね。その女子のランブル戦は、ぼくはもともとベイリーが優勝すると予想してたんですよ。彼女は今、最も魅力的なWWEスーパースターのひとりだなと思って。
ガンツ ストーリーの先読みをしたわけじゃなく、ロイヤルランブルに優勝して『レッスルマニア』でタイトル戦をやるべきスーパースターだ、と。
塩野 最近のベイリーはダメージCTLR内で微妙な立場だったりするじゃないですか。
ガンツ イヨ・スカイ、ASUKA、カイリ・セインと日本人女子スーパースターが同じユニットに揃う中、ベイリーはリーダーであるはずなのに、ちょっと浮いてる感じがありますよね。もう一人のダコタ・カイはイヨたちと仲良くやってるのに。
塩野 でもダメージCTRLって、常に危うい関係で成り立っていて、ちょっとグループ内で仲が悪くなったかと思いきや、なんとなくまたくっついたりの連続なんですよね。
ガンツ 学生時代のクラスの女子グループを思い起こさせますよね。
塩野 そうなんです!(笑)。それが面白くて。しかも、ベイリーは表情だけでその微妙な関係をすべて表現している。彼女がみんなと一生懸命仲良くしようとしていたりね。そういう姿を見続けることで、WWEユニバース(WWEファン)がベイリーに感情移入していってるのがわかるんですよ。だから彼女がロイヤルランブルで優勝して、「レッスルマニア」で同じダメージCTRLの仲間であるイヨ・スカイの持つWWE女子王座に挑戦するとなったらすごいことになるなと思って、ベイリー優勝を予想したんです。
ガンツ なるほど。これから「レッスルマニア」に向けて、ベイリーとダメージCTRLがどうなっていくか、目が離せないですよね。

■「線引きが曖昧で、そこに興味を惹かれる」(ガンツ)「完成されたエンターテインメントのように見えて、“余白”を残してる」(塩野)
ガンツ ランブル戦以外では、王者ローマン・レインズと、LAナイト、AJスタイルズ、ランディ・オートンが4WAY対戦した、統一WWEユニバーサル王座戦はいかがでしたか?
塩野 ローマン・レインズは長期政権を築いているわけですけど、ぼくは今回レインズが負けるんじゃないかと思ったんですよ。生放送開始前にWWEファンのスタッフと予想し合ってたんですけど、まずローマン・レインズが敗れてベルトを失ってしまう。でもその後、ロイヤルランブルに再び登場して優勝して、挑戦者として『レッスルマニア』のメインに出るんじゃないかって。深読みしすぎでしたけど(笑)。
ガンツ でも、深読みするのも楽しいですよね。
塩野 ガンツさんはどう予想してましたか?
ガンツ ぼくはCMパンクが優勝して、『レッスルマニア』で世界ヘビー級王者セス・ロリンズvs CMパンク実現を予想してましたね。一番相入れない禁断の闘いをあえてやるんじゃないかと。
塩野 昨年11月の『サバイバーシリーズ』でCMパンクが突然、10年ぶりにWWEに復帰してきたとき、セス・ロリンズは怒ってましたもんね。
ガンツ そのセス・ロリンズの怒りは、どこまでが本当で、どこまでがエンターテインメントなのか。その線引きが曖昧で、そこに興味を惹かれるじゃないですか。
塩野 思わず裏読みしてしまう、プロレスファンの悪い病気ですね(笑)。ぼくも『サバイバーシリーズ』が終わったあと、一般の観客がスマホで撮影したと思われる動画をずっと見てました。「これ、ホントに怒ってるよね?」って。
ガンツ この虚実ないまぜの世界を半信半疑で見るっていうのが、スポーツエンターテインメントの醍醐味じゃないですか。
塩野 だからWWEって完成されたエンターテインメントのように見えて、“余白”を残してるんですよね。
ガンツ だから海外のマニアなんかは、ショーそのものだけじゃなく、その前後の噂話もネット上で楽しんでますよね。「次はどうなる」だったり、「誰が出てくる」だったり。
塩野 これは放送が終わったから言いますけど、ロイヤルランブルは誰がサプライズで出てくるかわからないじゃないですか。だから、ネット上で噂になってる人は全部ピックアップして調べておいたんですよ(笑)。
ガンツ ロイヤルランブルに誰が出てくるかっていうのは、ぼくら放送スタッフにも一切入ってきませんもんね。
塩野 その噂の中に「Xパックが出てくる」っていうのがあったんですよ。
ガンツ なつかしい(笑)。元nWoのメンバーですよね。
塩野 WWEではトリプルH率いるDXのメンバーで、今WWEはトリプルHが現場のトップじゃないですか。だから「これはXパック登場あるぞ」と思って用意してたんですけど、単なる噂でした(笑)。
ガンツ 今『レッスルマニア』に向けていろんな噂がありますけど、その最たるものがザ・ロックの登場ですよね。
塩野 そうですよね。実際、どうなるんですか?
ガンツ いや、知りません(笑)。でも、記念すべきレッスルマニア40回目の記念大会メインとなれば、ザ・ロックvsローマン・レインズしかないと思うんですけどね。真の「一族の長」を決める闘いであり、2002年のハルク・ホーガンvs ザ・ロック以来の「アイコンvsアイコン」という。
塩野 ザ・ロックvsローマン・レインズは去年の『レッスルマニア』でも噂になりましたよね。
ガンツ ありましたね。ぼくなんかは、去年その噂があったもんだから、「武藤敬司の引退試合の相手もザ・ロックに違いない」って深読みしすぎましたから(笑)。
塩野 その噂を元に妄想するのがまた楽しいですよね。ぼくもWWEのいろんな噂や先取り情報が載ってるサイトとか、仕事と関係なく毎日チェックしちゃってますもん。
ガンツ 学生時代に『週刊ファイト』の裏ネタ情報ページ「マット界舞台裏」を読んでた時と、やってることが変わらないという(笑)。『レッスルマニア』前のWWEユニバースによる噂話って、アップルの記者会見前に似てますよね。次のiPhoneはどんな機能が付くのかって、噂や予想が飛び交って、その噂自体もみんな楽しんでるという(笑)。
塩野 WWEがすごいのは、予想通りでも予想通りじゃなくても納得させてくれるクオリティの高さですよね。ロイヤルランブル優勝はCMパンクを期待する声が大きかったですけど、コーディ・ローデス優勝には納得させられたし、また『レッスルマニア』が楽しみになりましたからね。
ガンツ だから『レッスルマニア』に向けて、まだWWEを観ていない方にはぜひ観てもらいたいですよね。
塩野 とにかく一回観てほしいです。一回観ればわかりますから。そして『レッスルマニア』を見たら、本当に衝撃を受けると思うし、いろんな価値観が変わるんじゃないかと思います。
ガンツ 次回のPLE(プレミアム・ライブ・イベント)は2月24日(土)の『イリミネーション・チェンバー』。これも見逃せませんよね。
塩野 巨大な金網を使用したWWEならではの試合形式で、『レッスルマニア』前の最後のPLEだから、ここでも絶対に何かが起こるわけですよ。また時差がほとんどないオーストラリアで開催ということで、夜7時のゴールデンタイムに生放送ですから。
ガンツ 『レッスルマニア』に向けて必見ですね。
塩野 そして『レッスルマニア』ですべての伏線が回収され、翌日のRAWで新たなストーリーが始まる。この終わりなき大河ドラマをぜひ堪能してもらいたいと思います!
文・構成/堀江ガンツ
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