頭が固く、傍若無人な振る舞いで周りに迷惑をかける高齢者を表す言葉「老害」。ここ数年、よく耳にするようになったが「自分はまだまだ無関係」と思っている30、40代の人たちも多いのでは。そんな中、今話題となっているのが、放送作家・鈴木おさむ氏の投稿だ。
「40代になり、職場で上と下の間に入りバランスを取るポジションで、自分は上のプライドを傷つけず、下の意見をうまいことまとめたつもりでも、下の世代から見たら、その行動が老害に見えていたりするということに気づき、それをソフト老害と名付けた」(鈴木おさむ氏・Xから)
一般的に60代以降を指す老害に対し、ソフト老害は、40代も含めたもっと若い世代の人たちに使われる言葉のよう。実はネットでは少し前から“プチ老害”“若き老害”“若年老害”という言われ方もされていた。では、一体どんな人が認定されてしまうのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■「お前のためを思って」「厳しいこと言うけど」はNG?
かつて「若年老害」から被害を受け休職したというブロガーの後藤迅斗氏は当時について「会社から用意された研修に行く際、直属の先輩から“出張多すぎ”と言われた。あとは、“やる気があるのか”“若いんだからガッツを見せてくれ”と言われた経験がある」と振り返った。
後藤氏は、きつい言葉を言われた時にスルーした方がいい言葉集を自身のXで投稿している。その内容は、「石の上にも三年」「お前のためを思って」「やる気あるんか?」「普通こうじゃない?」「厳しいこと言うけど」といったものだ。
パワハラ当事者を指導する「キズカスカンパニー」代表の加藤圭氏は、かつて自身が中間管理職の立場になった時、「お前のためを思って」などの前置きをつけていたことを振り返り、ある時から加害を自覚したという。「自分ではなく相手を変えようという気持ちで言うことが、若年老害に当たるのではないか」と語る。
また、象徴する言葉として、「“そもそも”という前置きがアクセントになって、悪い方へ向かっていくことはあると思う。それが一歩目だと感じる」との見方を示した。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「老害というのはステータス。誰彼構わず呼ぶべきではない」と主張する。
「老害は、ある程度成功した人がなっていく“地位”だと思う。良い人でも、どれだけ心地よいコミュニケーションをとる人でも、その地位が揺るがなければ該当するのではないか。どこかで時代のずれが出てくる部分は絶対にあるわけで、上にも下にもいけるという流動性を高める環境を作ることが大事だ。老害と呼ぶことで評価を高めてしまうので、何も成し遂げていない人に対しては“ぬくぬくと年功序列で来た人なんだな”“老害と呼ぶにも値しないぞ”くらいのマインドでいた方がましなのではないか」
その上で、「仕事上のアドバイスや是正するべき点、改善しなくてはいけないことは、上司が適切に言わなければいけない。そこをプライベートと一緒にして、なんでもかんでも言ってはいけない雰囲気になるのは違う」と投げかけた。
■若年老害にならないためには?
では、30、40代の人はどう接するべきなのか。後藤氏は「相手に押しつけるのではなく、思いやった行動をする。今の20代は、SNS全盛期でもあり、すごく変化の多い時代だ。その世代の価値観をうまく取り入れられる方法があればと思っている」と話す。
加藤氏は“脱・老害”のヒントとして、次の3つをあげる。「1つ目は、他者意識ではなくて、当事者意識という表現が良いと思う。自分がされたらどう思うか、相手はどう思うかを考えていくべき。2つ目は、気軽に相談できる環境を作ってあげること。3つ目は、部下の意見をまず肯定してから、アドバイスではなくヒントをあげる。押しつけではなく、自分で考えてもらうような形をとる」。
これに後藤氏は「肯定とヒントで考えさせましょうというのはいいと思う」と同意する一方で、「上司に“自分で考えろ”と言われ、自分でやって失敗したら、“何で聞かなかったのか”と言われた。じゃあどうすればよかったのか?と。これはXでも共感の声が多数あったので、上司は自分と部下でどんな価値観があるのかを洗い出す必要があると思う」と述べる。
大空氏は、部下と向き合う前に、自分自身を見つめる時間が必要だと指摘した。「いわゆる老害的な言動をしてしまうのは、成功体験を押しつけて、自分を肯定するために他者を利用するといった歪な関係だ。自信がなかったり、仕事一筋で頑張ってきたら家に居場所がなかったり。老害はある種、被害者的な側面もあるのではないか。だからこそ自覚がある人たちは、部下の接し方の前に、まずは自分と向き合って認めるといったことが大事だと思う」との考えを示した。(『ABEMA Prime』より)
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